阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

アメリカ、そして香港での人権を守る闘いに連帯を!

2020年06月08日 00時13分27秒 | 政治
 アメリカでの警察官による黒人男性への暴行死事件への抗議のデモが世界的規模で広がっている。多くは平和的なデモとされるが、アメリカでは一部が暴動化し、略奪や放火が行われたことから、トランプ大統領は連邦軍の投入も辞さない考えを表明した。

 デモは憲法が保障する表現や集会の自由に基づく権利。もちろん、略奪や放火は許されないが、このような事態に連邦軍が投入され、アメリカ人に対しても銃口を向けることになれば、1989年6月4日に起こった天安門事件と同じことになり、アメリカ建国の理念である自由や民主主義という価値観を政府が自ら踏みにじることになる。

 カナダのトルドー首相は抗議デモに参加。ひざまずいて「Black Lives Matter」に団結する意思を示した。カナダは日本以上にアメリカとのつながりが大きな国。トランプ大統領とは国のトップ同士交渉する立場のカナダの首相にとっては勇気ある行動だと思う。しかし、当たり前のように連帯を示した姿には感銘を受けた。私も同じ思いで、人種差別との闘い、人権を守る闘いへの連帯を表明したいと思う。

 私は当初からこのデモに関心はあったが、少し心の距離も感じていた。最初にニュースを見た時、アメリカではよくある事件に思えた。アメリカは様々な差別や分断の構造を世界で生み出してきた国でもあり、アメリカの国家権力によって殺された他国の人にも区議しないのであればフェアじゃないと思っていた。私は世界の片隅で忘れられている問題にこそ光を当てたいと思ってこれまで行動してきた。人種や民族、文化に起因する差別は多くの国で起こっているのにアメリカで起きているがゆえに注目され、多くの人が関与する今回のような問題には、自分の出番や役割はないと思っていた。むしろ、中国の香港への国家安全法導入への関心が分散することへのいらだちを感じていた。

 しかし、アメリカ人の友人と意見交換をするにつれ、これはより普遍的な問題だと私の中の受け止め方が変わった。アメリカが変われば世界が変わる。silence is violence。黙っていることそれ自体が暴力への加担だと今回も感じるようになった。

 殺されたフロイド氏は白人社会に地べたに押さえつけられ、呼吸を奪われる黒人社会そのものの象徴であり、人種差別を扇動し、格差や分断を助長するトランプ大統領によって自分自身がいつでもフロイド氏になり得ることへの恐怖が彼らを突き動かしているのだ。これは私たちにも他人事ではない問題だ。

 未だコロナが収束せず、大規模なデモでソーシャルディスタンスを保てない状況だと、再びコロナ感染者が増える恐れは大きい。しかし、さらに恐ろしいものとして人種差別問題を捉えていること、これまでも警察や社会に不条理に抑圧され、コロナ危機で、弱い立場の人々を中心に4300万人が職を失った一方、億万長者の資産はコロナ発生後なんと1割、62兆円も増えている。こんな不条理は受け入れられない。買い物に出掛けただけで射殺される現状をこの機に変えたい。そんな思いへの共感が、トランプ大統領の再選阻止の思いと一緒に人種を超えて広がっているのが今回のデモのようだ。

 安倍首相は、自分の考えに反対する人を「こんな人たち」と呼び、石破茂自民党幹事長は特定秘密保護法案に反対する市民のデモについて「テロ行為とその本質においてあまり変わらない」と批判した。表現の自由に基づく街頭での市民の主張をテロと同一視した発想はまさにトランプ大統領と同じだ。

 アメリカが変わることは世界が変わることに直結する。日本ではTwitterでのデモによって、安倍政権が強引に進めようとしていた検察庁法の改正にストップをかけることができた。市民社会の本場アメリカでも、民衆の声が人種差別を、そして政治を、未来を変えることを見せてもらいたい。その影響は、香港に、日本、そして世界にも伝わっていく。