阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

終戦から76年。戦争と和解についてアジア的価値観による解決手法を考察

2021年08月15日 22時50分01秒 | 政治
今日は終戦記念日。激しい雨が上がったので午後5時間の街頭活動をして戻ってきたところです。今日は戦争と和解について考えてみたいと思います。

私は戦争と和解をテーマに列国議員同盟(IPU)の一員として演説をしたことがあります。(2012年10月。カナダ・ケベック)

私は紛争国の民主的な選挙支援や、除隊兵士の自立支援などに長く従事していました。スピーチでは、戦争中に行われた様々な行為について真実を明らかにすること、そして正当な裁きを行うこと、つまり『正義の回復』が非常に重要であることは当然であるとともに、アジア的な『赦し』の思想が新たな局面を生み出すためには重要ではないかとの問題提起です。これはもちろん、加害者の側の責任をあいまいにすることではありません。

スリランカ(当時はセイロン)のジャヤワルダネ元大統領(当時は大蔵大臣)は、1951年のサンフランシスコ講和会議において、「憎悪は憎悪によって消え去るものではなく、ただ慈愛によって消え去るものである(hatred ceases not by hatred, but by love)」という仏陀の言葉を引用し、対日賠償請求権を放棄しました。

「戦争は戦争として、終わった。もう過去のことである。我々は仏教徒である。やられたらやり返す、憎しみを憎しみで返すだけでは、いつまでたっても戦争は終わらない。憎しみで返せば、憎しみが日本側に生まれ、新たな憎しみの戦いになって戦争が起きる」

「戦争に対して憎しみとして返すのではなく、優しさ、慈愛で返せば平和になり、戦争が止んで、元の平和になる。戦争は過去の歴史である。もう憎しみは忘れて、慈愛で返していこう。」

 対日賠償請求権の放棄を明らかにするとともに、わが国を国際社会の一員として受け入れるよう訴える演説を行いました。

「日本に今、この段階で平和を与えるべきではない」「日本は南北に分割して統治すべき」など、さまざまな対日強硬論が中心であった中、この演説は多くのリーダーの心を動かしました。ドイツが東西に分割されたことなどを考えるとジャヤワルダナ大統領は私たち日本人にとっての恩人と言えるでしょう。
こんな歴史的事実も踏まえて紛争と和解についてスピーチをしたところ、スリランカからの議員団は立ち上がって大きな拍手をしてくれました。残念ながら多くの日本人が知らないこの事実を、私は教育の場でも教えるべきだと思っています。
 2013年、スリランカ仏教において大きな役割を果たしたダルマパーラ師の生誕150周年記念式典に招かれ、アントニオ猪木参議院議員とともに参加しました。猪木議員のツテでスリランカ最大のテレビ局(マハラジャ・グループ)の会長にスタジオに招いて頂いたので、このことをお話しし、スリランカの方々に日本人として改めてお礼を申し上げたいとお願いしたところ、会長の鶴の一声で私のメッセージが放送されることになりました。その日はちょうど中国の周近平主席がスリランカを訪問し首脳会談をした当日。現地のニュースはその話題でいっぱいでしたが、ゴールデンタイムのニュースの中で放送して頂き、冒頭のジャヤワルダナ大統領の言葉を引用して、アジア的価値観、仏教的価値観に基づいた紛争解決の新しい手法について提案することができました。不断に真実の解明を行う責任、赦しによってさらに重くなる責任をどのように果たしていくか、そこに国家としての責任や誇りも問われると思います。

こんなことを思いながらスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管の施設で体調を崩し、今年3月、死亡した事件について思いを巡らせています。ウィシュマさんの収容中の様子を撮影した監視カメラの映像は遺族に対して開示したとのことですが、国会にも公開し、再発の防止、非人道的な行為を繰り返す入管の在り方について徹底した対策を行うきっかけにすべきです。事実を解明するより隠すことを優先する政府の姿勢には到底納得できません。ジャヤワルダネ元大統領の崇高な姿勢、そしてスピーチを思うとなおさらです。

写真1 アントニオ猪木議員とマハラジャのTVスタジオで
写真2 日本を代表してスピーチした中林美恵子議員と私
写真3 今日の『走るさかぐち』
写真4 ダルマパーラ師の記念式典で