阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

橋下徹氏の『政界引退』に思うー世間の印象とは違う政治姿勢に接して

2015年12月19日 16時51分06秒 | 政治

 橋下徹氏が大阪市長を退任。政界から引退した。まずは心から、ご苦労様でしたと申し上げたいと思う。

 時に相手を徹底的にコキおろす橋下氏の政治手法については様々な批判があった。特にNGOなどの市民社会の方々は、良識的な人ほど橋下氏の突破力を評価はしても手法については眉を顰める人が多かった。私自身も橋下氏に直接接する以前は同様の印象を持っていたので、その感情は理解できる。しかし、鉄板の様な様々な既得権を打ち破るためには鋭い刃を持っていなければ不可能だ。鋭い舌鋒を他人に向けることは、当然、自分自身の言葉と行動の一致が求められる。『身を切る改革』をまずは自分に、そして仲間に課し、様々な結果を出してきたこと、この点について稀有の存在であったことは間違いない。

 私は日本維新の会、維新の党を通して政策調査会(政調)に属していたため、政策議論の場で橋下氏と接する機会が多かった。2013年の参議院選挙のマニフェストを作成するため、約11時間、少人数で議論したことがあったが、実に人の話を丁寧に聞く人との印象だった。頭の回転が速い人は、時に話をさえぎったり、イライラした様子を見せるものだが、全くそんなことはなかった。世間の印象とは180度違う姿に驚いた。

 その会合の前に、当時の政調のメンバーで温泉に一泊して政策の合宿をした際、当時の政調会長代理だった中田宏氏と温泉に浸かりながら橋下氏についての話を聞いたことがある。橋下氏が「この仕事は長くやるもんじゃないですよ。やることやってサッサと辞めましょ」と口癖のように言っていること、また、以前中田氏が橋下氏と一緒に温泉に行った際に、湯船の中で偶然話しかけてきた人と一時間近く話していたことなどを聞いた。「たまたま湯船で会ったおじさんですよ。普通は、あ、ちょっとこの後予定がありますのでとか何とか言って切り上げますよね。橋下さんは徹底的に話を聞く人なんですよ」

 その時は意外に思ったが、「相手をリスペクトして話を聞く人」との印象は、私自身が政調の一員として接した2年間の中でも変わることがなかった。そして、まずはミッションがあり、権力や地位に固執しないことが橋下氏の力の源泉であることを実感した。

 一方で残念なこともあった。脱原発の旗手であったはずが、かなり後退してしまったこと、少なくとも世間ではそのようには思われていること、挨拶や演説の中で必ずと言ってもいいほど安倍政権への評価を表明することだった。維新の党の基本方針は保守とリベラルを超えて改革勢力の結集を行うことだ。自民党には絶対にできない既得権益の打破を目指すのであれば、政権とは徹底的に対決姿勢で行くべきと私は思っている。またその象徴が原発政策だ。

 野党の代表でありながら自治体の長であることは、政権との距離感の持ち方が難しかったと思う。特にライフワークである大阪都構想の実現は政権の協力がなければ困難だ。しかし、原発政策を突破口にして政権に切り込むべきとの思いが維新に入った最大の理由だっただけに、この点については私はいつも不満だった。

 「安倍総理に『責任野党』言われても、それはナメられているだけ。何でも反対であるべきとは思いませんが、是々非々ではなく、非非非非非非非非是ぐらいでちょうどいいと思いますよ」「橋下さんは嫌いだけど、脱原発を実現するには橋下さんにすがるしかない!と言っていた人たちがガッカリしていますよ」

 私自身は様々な場で、このようなかなり挑発的な質問もした。徹底的なリアリストである橋下氏。決して後退したわけではなく、政局を睨みながら、大阪市民の命を預かる市長の役割も踏まえながら現実的な対応をすべく優先順位をつけていたのかもしれない。

 「政党のトップと行政のトップ、どちらの役割が難しいですか?」こんな質問もしたことがある。「それは政党の党首ですよ。行政はトップの意向がしっかり伝わるようなシステムになっていますけど、政党の党首というのは、まぁなかなか上手くいきませんよねぇ」 

 その言葉が予感させたように維新の党は分裂し、私は橋下氏とは異なる政党で活動することになった。私たち自身も橋下氏の期待に応えるには力不足だったのかもしれない。しかし、日本の政治を進化させるためには、そして橋下氏が闘い続けた『既得権の打破』を実現するには自民党に対峙できる政党の存在が不可欠である。それほど遠くない将来、さらにパワーアップした橋下氏と第二幕、第三幕をともに闘う日が来ること、私は密かに期待している。



 

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