森谷公俊『興亡の世界史01 アレクサンドロスの征服と神話』(講談社、2007年1月)
今巻はまさに『興亡の世界史』と称するにふさわしい内容になっております。アレクサンドロス大王の生涯を中心に記述が進められていますが、以下のようにちょこちょこと面白い指摘がありました。
○ペルシア打倒とアジア征服、王の神格化などはアレクサンドロス大王に先駆けて父のフィリッポス2世が既に構想していた。
○アレクサンドロスは祖先とされるヘラクレスとアキレウスを崇拝しており、自分も彼らのような「英雄」になろうとした。
○ガンダーラ美術の出現はアレクサンドロス大王の東征と関連づけて説明されることが多いが、仏像の出現は1世紀後半で、これはギリシア人がガンダーラ地方を支配していた時期より後になる。またガンダーラ仏教美術にはギリシア美術に加え、イランとローマ美術の様式と技法が見られる。
○ヘレニズム文化の担い手はギリシア文化を継承したローマ人だった。
○各地に建設されたアレクサンドリアには大王の政治に不満を持つギリシア兵が多く入植させられ、不穏分子を隔離するための都市という側面が強い。アレクサンドリアの建設が東西融合制作の象徴という見方は的外れである。
○マケドニア人とペルシア人との集団結婚は、マケドニア人の男性とペルシア人の女性の組み合わせしかなく、民族融合政策と呼べるようなものではなかった。大王の側近たちの結婚については、戦利品として花嫁を分配したものにすぎず、しかもそのカップルの大半は後に離婚した。兵士たちの結婚についても、そのほとんどはいわゆる現地妻を後から承認したものにすぎない。
このように本書はアレクサンドロス大王の事績に対してかなり厳しい評価を下しています。
個人的には著者がオリバー・ストーン監督の映画『アレクサンダー』を高く評価しているのが意外でした。アレクサンドロスの東征の負の側面をちゃんと描いているというのがポイントのようですが、私はアレクサンドロスと親友ヘファイスティオンの熱い友情、というか愛情しか印象に残っていません(^^;)
もっとも本書によるとアレクサンドロスとヘファイスティオンが同性愛の関係を持っていたのは事実で、更には当時は男性同士が友情を通り越して同性愛の関係に至るのは普通のことだったということなので、その方面でも割とよく描けていた映画と評価すべきなのかもしれません……
今巻はまさに『興亡の世界史』と称するにふさわしい内容になっております。アレクサンドロス大王の生涯を中心に記述が進められていますが、以下のようにちょこちょこと面白い指摘がありました。
○ペルシア打倒とアジア征服、王の神格化などはアレクサンドロス大王に先駆けて父のフィリッポス2世が既に構想していた。
○アレクサンドロスは祖先とされるヘラクレスとアキレウスを崇拝しており、自分も彼らのような「英雄」になろうとした。
○ガンダーラ美術の出現はアレクサンドロス大王の東征と関連づけて説明されることが多いが、仏像の出現は1世紀後半で、これはギリシア人がガンダーラ地方を支配していた時期より後になる。またガンダーラ仏教美術にはギリシア美術に加え、イランとローマ美術の様式と技法が見られる。
○ヘレニズム文化の担い手はギリシア文化を継承したローマ人だった。
○各地に建設されたアレクサンドリアには大王の政治に不満を持つギリシア兵が多く入植させられ、不穏分子を隔離するための都市という側面が強い。アレクサンドリアの建設が東西融合制作の象徴という見方は的外れである。
○マケドニア人とペルシア人との集団結婚は、マケドニア人の男性とペルシア人の女性の組み合わせしかなく、民族融合政策と呼べるようなものではなかった。大王の側近たちの結婚については、戦利品として花嫁を分配したものにすぎず、しかもそのカップルの大半は後に離婚した。兵士たちの結婚についても、そのほとんどはいわゆる現地妻を後から承認したものにすぎない。
このように本書はアレクサンドロス大王の事績に対してかなり厳しい評価を下しています。
個人的には著者がオリバー・ストーン監督の映画『アレクサンダー』を高く評価しているのが意外でした。アレクサンドロスの東征の負の側面をちゃんと描いているというのがポイントのようですが、私はアレクサンドロスと親友ヘファイスティオンの熱い友情、というか愛情しか印象に残っていません(^^;)
もっとも本書によるとアレクサンドロスとヘファイスティオンが同性愛の関係を持っていたのは事実で、更には当時は男性同士が友情を通り越して同性愛の関係に至るのは普通のことだったということなので、その方面でも割とよく描けていた映画と評価すべきなのかもしれません……