博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『梅蘭芳』

2009年01月04日 | 映画
こちらで正月映画として公開中の陳凱歌監督作。陳凱歌と言えば中国映画史上に残る珍作『無極』(『PROMISE』)が記憶に新しいところですが、今回はさすがに普通の文芸大作に仕上がっています(^^;)

黎明(レオン・ライ)が梅蘭芳を演じるということで話題になっていますが、それよりも私は孫紅雷演じる彼の支援者邱如白や、安藤政信演じる日本軍少佐の田中隆一の方が気になりました。ただし気になったのは役者さんの演技ではなく、その人生の軌跡であります。

まずは邱如白の人生の歩みから。(以下、思いっ切りネタバレしてます)

元々は西洋帰りの官吏だったが、少年時代の梅蘭芳の芸に惚れ込んで熱烈なファンとなる。

熱烈が高じて仕事を辞めてしまい、梅蘭芳と義兄弟の契りを交わしたうえに彼のマネージャーとなる。(でもこれって要するに「梅蘭芳に公演させたけりゃまず俺に話を通せ」っていうゴロですよね……)

彼と章子怡演じる孟小冬(この映画では新進の京劇の「男形」という役回り。彼女は実在の人物とのこと)との熱愛にやきもきしたり、欧米での公演に消極的な彼を説得して米国公演を按配したりと色々。

日本軍の侵攻に伴って梅蘭芳が芸を封印すると行き場を失い、仕方なく場末の茶館で他の女形の演技を見てはそのヘボさに心を苛つかせる毎日。

梅蘭芳は日本軍の公演要請を拒絶していたが、もう一度彼の舞台を見たいばかりに本人に無断で公演を承諾してしまい、彼を危地に陥れることに。(作品中では邱如白が「梅蘭芳が舞台から下りることは京劇の死を意味する」とか何とか理屈をこねてますが、要するに彼の舞台を見たいだけでは……)

ついで田中隆一少佐の半生。

軍人の父を亡くした直後に梅蘭芳の日本公演舞台を鑑賞。大ファンに。

軍人として中国に赴任。梅蘭芳とツーショットで写真を撮ってもらい、大喜び。

梅蘭芳の舞台を見たいばかりに「梅蘭芳は中国文化の精髄、梅蘭芳を征服すれば中国人の心をつかんだも同然!」と気乗り薄な上官に熱く訴えかけ、上海公演を計画するも、日本軍に利用されることを恐れた梅蘭芳はこれを拒絶。

上記の通り邱如白が無断で公演を承諾するも、梅蘭芳本人の意志と勘違いして公演をセッティング。

梅蘭芳は嫌がらせのように髭を生やして上海公演の記者会見に現れたり(これは実際にあったことらしい)、注射を打って公演当日に重病になったりしてサボタージュ。

上官が梅蘭芳を監禁・訊問。手荒なマネに及ばないかと冷や冷やして見守る。

あくまで梅蘭芳に公演をさせよという上官の命令と梅蘭芳の強い拒絶との間の板挟みとなり、ピストル自殺。

……我々はこの2人の人生の転落ぶりから、芸人に入れ込みすぎると一体どういうことになるかという教訓を読み取るべきなのでしょうか(^^;) ただ、邱如白についてはそんな人生に全く後悔していないようでありますが。
コメント (5)
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