田中芳樹『蘭陵王』(文芸春秋、2009年9月)
美貌の貴公子でありながら知勇兼備の武将として敵から恐れられたという北斉の蘭陵王・高長恭を描いた小説。正直田中芳樹の中国史小説は南朝梁の陳慶之を描いた『奔流』以外大して面白いとは思えなかったのですが、これはまあまあ面白かった。ということは適当に話や設定を作ってる部分がかなり多いんじゃないかという疑惑を呼び起こすわけなんですが(^^;)
このあたりのツッコミは既にnagaichiさんや宣和堂さんが散々しており、また自分がさしてこの時代に詳しいわけではないので割愛しますが、私が特に気になったのは以下の三点。
○北朝を舞台にしている割には鮮卑色が薄い、というか無い。
管見の限り本作では「鮮卑」という言葉は1回も出て来なかったように思います。どうしても出さなきゃならない場面では「胡人」という言葉で誤魔化してますね。北斉の始祖高歓についても出自が胡人か漢人か不明なんて書いてますが、手元にあった川勝義雄『魏晋南北朝』(講談社学術文庫、2003年)を紐解くと、高歓が懐朔鎮民の出で「鮮卑風の賀六渾という呼び名をもつほどに鮮卑化していた」なんて書いてますね。とにかく鮮卑の何がそんなにイヤなのかという気がするのですが……
○やたらと『三国志』にこだわる
本作では「斉・周・陳の新三国時代」とか『三国志』を過剰に意識した表現が見られますが、『三国志』ファンは別に三国鼎立という状態に萌えているわけではありませんから…… 『三国志』ファンが朝鮮の三国時代にも興味を持っているかと言うと、そんなことはないわけでしょう。
○蘭陵王が完璧超人すぎる。
作中でも触れてますが、高氏の血を引く以上どこかおかしな所が無いとウソだと思うのですよ。せめてネルソンみたいに実は人妻に惚れているとか、自分にしか見えない白熊くんと戦場で会話して将兵にドン引きされるというような描写があれば良かったなと。
美貌の貴公子でありながら知勇兼備の武将として敵から恐れられたという北斉の蘭陵王・高長恭を描いた小説。正直田中芳樹の中国史小説は南朝梁の陳慶之を描いた『奔流』以外大して面白いとは思えなかったのですが、これはまあまあ面白かった。ということは適当に話や設定を作ってる部分がかなり多いんじゃないかという疑惑を呼び起こすわけなんですが(^^;)
このあたりのツッコミは既にnagaichiさんや宣和堂さんが散々しており、また自分がさしてこの時代に詳しいわけではないので割愛しますが、私が特に気になったのは以下の三点。
○北朝を舞台にしている割には鮮卑色が薄い、というか無い。
管見の限り本作では「鮮卑」という言葉は1回も出て来なかったように思います。どうしても出さなきゃならない場面では「胡人」という言葉で誤魔化してますね。北斉の始祖高歓についても出自が胡人か漢人か不明なんて書いてますが、手元にあった川勝義雄『魏晋南北朝』(講談社学術文庫、2003年)を紐解くと、高歓が懐朔鎮民の出で「鮮卑風の賀六渾という呼び名をもつほどに鮮卑化していた」なんて書いてますね。とにかく鮮卑の何がそんなにイヤなのかという気がするのですが……
○やたらと『三国志』にこだわる
本作では「斉・周・陳の新三国時代」とか『三国志』を過剰に意識した表現が見られますが、『三国志』ファンは別に三国鼎立という状態に萌えているわけではありませんから…… 『三国志』ファンが朝鮮の三国時代にも興味を持っているかと言うと、そんなことはないわけでしょう。
○蘭陵王が完璧超人すぎる。
作中でも触れてますが、高氏の血を引く以上どこかおかしな所が無いとウソだと思うのですよ。せめてネルソンみたいに実は人妻に惚れているとか、自分にしか見えない白熊くんと戦場で会話して将兵にドン引きされるというような描写があれば良かったなと。