博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『水滸伝』その14(完)

2011年04月17日 | 中国古典小説ドラマ
『水滸伝』第81~最終86話まで見ました。

方岩山にて梁山泊軍の行く手を阻む「瓊矢鏃」瓊英。このドラマでは後周の太祖郭威の後裔で、朝廷から郡主に封じられているという設定になっております。同じ暗器使いの誼で「没羽箭」張清と恋仲になりますが、張清さん、事態を打開するために瓊英と結婚して軍を離れるふりをして、方岩山の内側から梁山泊軍に内応することに。汚い!さすが(以下ry ついでにこの瓊英戦の途中で林冲が公孫勝の説得であっさり戦列に復帰します。

色々あって瓊英も味方に加わり、蘇州、ついで方臘の本拠地杭州へと軍を進めますが、ここから王英・扈三娘夫婦を皮切りに好漢たちが続々と戦死。新婚ほやほやの瓊英もあっという間に未亡人となり、自身も夫の後を追うことに…… 

で、ラスボスの方臘は大方の予想通りカンフーマスターでした\(^o^)/ 単身で追い詰められてもなお張青・孫二娘を騙し討ちで葬り去り、最後は武松と壮絶な一騎打ちを繰り広げます。しかし陳龍演じる武松はおいしい所を取っていきますねえ……

多くの仲間を失いつつも使命を果たし、朝廷より論功行賞を受ける宋江たち。しかし高俅・蔡京・童貫ら四大悪人らの陰謀によりまず盧俊義が毒殺され、ついで宋江に徽宗皇帝からの褒賞と偽って毒酒が与えられます。毒酒と知りつつ杯を飲み干す宋江。そこへたまたま遊びにやって来た李逵も宋江と黄泉路をともにすべく、自ら毒杯を仰ぎます。そして夢によって宋江の死を悟った呉用は、宋江の墓前でかつての誓い通り花栄とともに縊死して果てたのでありました。最後まで何だかBLチックな雰囲気だったなあと……

【総括】

『三国』の件もあったのでハズレ作品だったらどうしようと不安を抱きつつ見始めたのですが、全86話通してアクション・シナリオとも高いクオリティを維持した作品に仕上がってました。特にシナリオ面では高島俊男『水滸伝の世界』(ちくま文庫)を読み返していて気付いたことが……

同書によると、元代の水滸戯では宋江が閻婆惜を殺した後、燭台を蹴飛ばして火事となり、役所を焼いてしまったという設定になっているそうです。それで今回のドラマでも宋江が閻婆惜を殺害した後、不注意から燭台を落として妾宅及び附近の建物を焼失させてしまうという展開になっており、当初はドラマオリジナルの展開だと思ってましたが、どうやら水滸戯での設定を踏まえたものだったようです。

更にもうひとつ。同書では潘金蓮について、小説中の作者のコメントでは彼女を悪女と決めつけていますが、よくよく注意して実際の人物描写を見てみると、下町の勝ち気で活発なおかみさんという感じで、決して終始一貫して淫奔な悪女として描かれているわけではないとしています。で、ドラマの方でも潘金蓮についてはもっぱらそのような描写がなされております。

これらの点から、今回の作品が研究書などを参照しつつ丁寧に脚本を練り込んで制作されたことが窺われます。つまり、このドラマは考証面では神レベルであるということになるわけですね。本作品の日本語版DVDリリース及びテレビ放映を待望するとともに、『三国』の方もこのぐらい丁寧な考証がされていれば……と思った次第です(´・ω・`)
コメント (2)
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