博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『ふたつの故宮博物院』/『シリーズ中国近現代史2 近代国家への模索』

2011年07月08日 | 中国学書籍
野嶋剛『ふたつの故宮博物院』(新潮選書、2011年6月)

2000年代の台北故宮リニューアルと故宮南院建設計画、北京と台北ふたつの故宮成立史、近年の大陸での文物回収運動(このあたりはメインテーマとはあんまり関係ない話題ですね)、そしてふたつの故宮の交流・統一と、割と内容が盛りだくさんの本です。

特に台北故宮のリニューアルについては関係者のインタビューが豊富に盛り込まれていてなかなか読ませますが、これって当時の民進党政権と結びついた極めて政治的な動きだったんですね。そして国民党の政権奪回とともに揺り戻しがおこり、台湾南部の嘉義県にオープン予定という故宮南院の建設計画については風前の灯火となっているようですが……

大陸での文物回収運動については、フランスでオークションにかけられたりして物議を醸した円明園の十二支像についても触れられていますが、本書ではこの十二支像について中野美代子氏の衝撃的な論考を紹介しています。その論考によると、十二支像は1930年頃までは現地に残ってたようであるということですが……アロー戦争で英仏連合軍に略奪されたんじゃなかったのかよ!(^^;)

川島真『シリーズ中国近現代史2 近代国家への模索1894-1925』(岩波新書、2010年12月)

このシリーズの第1弾を読んだのが随分前のこととなってしまいましたが…… 

今回面白かったのが「中国」という国号についてです。本書ではこれに関して梁啓超の文章を引用していますが、梁啓超曰く、我が国には国号が無い。漢・唐といった王朝名で呼ぶのは論外だし、支那という号は外国人がつけた名であって我々がつけたものではなく、「名は主人に従う」という公理に反することになる。中国・中華という呼び名も自尊自大の気味があってイマイチなんだが、消去法で選ぶと中国しかない。

……ということですが、支那という呼び方は自分でつけた名前じゃないからダメなんですね(^^;) そして中華・中国という呼び方に問題があると認識しているのも面白いところ。そして日本は辛亥革命後にこの中国という尊大な呼び方を嫌ったのか、支那という呼称を採用することになるわけですが……
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする