博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2014年8月に読んだ本

2014年09月01日 | 読書メーター
中国地名カタカナ表記の研究―教科書・地図帳・そして国語審議会 (中京大学文化科学叢書)中国地名カタカナ表記の研究―教科書・地図帳・そして国語審議会 (中京大学文化科学叢書)感想
明木茂夫氏と言えば、これまで論文や小冊子の形で地理の授業で使う地図帳などに出てくる中国地名のカタカナ表記(天津→テンチン、珠江→チュー川の類)の問題点やそのルーツについて研究されてたが、本書はその集大成。カタカナ表記が戦前の日本語表記漢字廃止論(カタカナあるいはローマ字での日本語表記を推進する動き)の影響を受けていると見られることや、日本語での読み方しか知らないと欧米言語での会話に出てくる中国の人名・地名に対応できないことが外交官を中心に戦前から既に問題視されていたことなど、興味深いトピックが多い。
読了日:8月7日 著者:明木茂夫

近世1 (岩波講座 日本歴史 第10巻)近世1 (岩波講座 日本歴史 第10巻)感想
冒頭の「近世史への招待」によると、近現代巻の始まりをペリー来航に合わせなかったのは、18世紀末には既に為政者の間でウェスタンインパクトが意識されていたからという。「織田政権論」では、織田信長が後に秀吉が行ったような大陸征服構想を抱いており、「中華皇帝」的な存在を目指していたとする。「キリシタンと統一政権」では、17世紀初頭に至っても為政者がキリスト教を南蛮渡来の仏教の一派と見なされており、一向宗のようにキリシタン勢力が団結によって政権を脅かす可能性があったことが禁教の背景にあるとする。
読了日:8月13日 著者:藤井讓治,堀新,中野等,李啓煌,牧原成征,岡美穂子,福田千鶴,伊藤毅,横田冬彦

竹簡学―中国古代思想の探求―竹簡学―中国古代思想の探求―感想
大仰なタイトルが付いていますが、要するに新出の戦国秦漢簡に関する同氏の論文集。『銀雀山漢墓竹簡[貳]』はスルーしていたんですが、[壹]で『孫臏兵法』の一篇と見なされていたものが[貳]で別の書(「論政論兵之類」)の篇として分類し直されたりしているんですね。しかし失礼ながら、最後の『楚地出土戦国簡冊[十四種]』の書評は、書評と言うより単なる紹介ではないかと思いますが…
読了日:8月18日 著者:湯浅邦弘

山県有朋―愚直な権力者の生涯 (文春新書)山県有朋―愚直な権力者の生涯 (文春新書)感想
桂太郎・寺内正毅については山県有朋の忠実な子分という程度の認識しか無かったが、本書によると山県とこの両人との間に確執があった模様。晩年には敵視していたはずの政党政治家である西園寺公望や原敬を高く評価するようになったとする。ただ、山県の失敗や「老害」ぶりを「愚直」の一言でフォローしようとするのには疑問も感じたが… また日清戦争までは限定的な形ではあるが陸・海軍に対するシビリアン・コントロールがはたらいていたと指摘している。
読了日:8月22日 著者:伊藤之雄

日本史を学ぶための〈古代の暦〉入門日本史を学ぶための〈古代の暦〉入門感想
「日本史を学ぶための」とあるが、太陽暦に関しては古代エジプトやローマの、太陰太陽暦に関しては中国の状況に触れるなど、広く暦や天文に関する入門書となっている。
読了日:8月25日 著者:細井浩志

「反日」中国の文明史 (ちくま新書)「反日」中国の文明史 (ちくま新書)感想
要するに平野氏視点での中国近現代通史。岡本隆司氏の『中国「反日」の源流』など一連の著作と比べると、より時事に即した記述が目立つが、その分底は浅くなっているなという印象。
読了日:8月30日 著者:平野聡

江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書)江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書)感想
「こぶし腰浮かせ」や「傘かしげ」、はたまた江戸時代版野菜スープの「江戸ソップ」といった個々の江戸しぐさに対するツッコミだけでなく、創始者芝三光やその弟子で江戸しぐさの広報につとめる越川禮子氏の経歴にまで遡って江戸しぐさが作られ、広められた背景について考察している。生前の芝三光や和城伊勢氏が江戸しぐさのマニュアル化を警戒していたということだが、そもそも「江戸しぐさ」というネーミング自体が作法やマニュアルを連想させるものなので、今更一体何を言っているのだという気がするのだが…
読了日:8月31日 著者:原田実
コメント
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