博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2016年3月に読んだ本

2016年04月01日 | 読書メーター
古文書返却の旅―戦後史学史の一齣 (中公新書)古文書返却の旅―戦後史学史の一齣 (中公新書)感想
本書に名前が出てくる白水智氏の『古文書はいかに歴史を描くのか』を読んだ際に、こちらも読みたくなった。白水書が古文書を用いた研究のバックヤードだとすれば、こちらはバックグラウンドということになるだろうか。本書では古文書の返却が、逆に寄贈や現地との交流のきっかけになるという、幸福な事例が比較的多く取り上げられているが、本書の記述で少しにおわされているように、不幸な事例もあったのではないかと思われるが…
読了日:3月3日 著者:網野善彦

大地の牙 満州国演義六 (新潮文庫)大地の牙 満州国演義六 (新潮文庫)感想
今回はノモンハン事件から第二次世界大戦勃発の前後の時期の話。さりげなく吉本興業が戦地慰問団「わらわし隊」を派遣していた話などが出て来て面白い。これまで実在の人物の絡みはおとなしめだったが、四郎が満映に入社したこともあり、甘粕正彦は扱いがやや大きい印象。
読了日:3月8日 著者:船戸与一

武帝―始皇帝をこえた皇帝 (世界史リブレット人)武帝―始皇帝をこえた皇帝 (世界史リブレット人)感想
並みの皇帝のみならず、非凡な皇帝にすら不可能になりつつあった、巨大規模の国家を、「皇帝官房」(側近官僚群)によって統御していくという仕組みを作り上げた皇帝として、漢の武帝を再評価する。その論旨には批判もあるだろうが、吉川幸次郎・永田英正といった先人による武帝の評伝とは充分に差別化できている。
読了日:3月9日 著者:冨田健之

テーマで読み解く中国の文化テーマで読み解く中国の文化感想
編者の専門柄出土文献に関係するテーマが多いが、それ以外にも宗教と民間信仰、中国医学などのテーマを取り上げ、読み物として面白い中国伝統文化の概説となっている。純粋に学術の面からの中国論かと思いきや、「国情・面子」のような俗流中国論も混ざっているところが不思議ではあるが…
読了日:3月10日 著者:湯浅邦弘

京都の神社と祭り - 千年都市における歴史と空間 (中公新書)京都の神社と祭り - 千年都市における歴史と空間 (中公新書)感想
八坂神社・北野天満宮といった京都の主要な神社と、葵祭・祇園祭などの主要な祭りの歴史的な変化や、氏子との関係などをまとめる。祭りの古い時代のあり方が、その影響を受けた地方の祭りにそのまま受け継がれているといった話が面白い。本題とは関係ないながら、祭りの奉納芸能として演じられた田楽の演目に、今でいうホッピングやジャグリングのようなものも含まれていたという点が気になるが…
読了日:3月13日 著者:本多健一

興亡の世界史 シルクロードと唐帝国 (講談社学術文庫)興亡の世界史 シルクロードと唐帝国 (講談社学術文庫)感想
タイトルには「唐帝国」とあるが、真の主役となるのはソグド人。文庫化を機に読み返してみたが、近年の「東部ユーラシア」研究の流行に強い影響を与えたと評価できそう。そして(こういう表現をすると失礼かもしれないが、)随所で著者の熱い「厨二」魂が感じられ、そこが本書の魅力につながっている。
読了日:3月21日 著者:森安孝夫

カストロとフランコ: 冷戦期外交の舞台裏 (ちくま新書)カストロとフランコ: 冷戦期外交の舞台裏 (ちくま新書)感想
『カストロとフランコ』とあるが、実際の内容はフィデル時代のキューバとフランコ時代のスペイン、アメリカ、バチカンをめぐる外交関係。現在の日本の対中国、対イスラム国との関係に置き換えてみると、相手を一方的に敵と見なし、対話のチャンネルを設けないことが、いかに国家の選択肢を狭めるかがよくわかる。また、キューバは独立以来アメリカの強い影響下にあり、国内にグァンタナモ基地を擁しながらも、キューバ革命を達成できたことを考えると、今の日本の選択肢が対米従属しか無いというのが単なる甘えでしかないのではないかと思う。
読了日:3月24日 著者:細田晴子

天の血脈(7) (アフタヌーンKC)天の血脈(7) (アフタヌーンKC)感想
応神天皇は神功皇后と百済王世子との間の子であることを証明させ、それを日韓併合の口実としようとして、「おかしなことするな!」と明石元二郎にシメられる内田良平…… 国策のためとか何とか理由をつけてるけど、要するに内田良平さんがトンデモ古代史を好きなだけではないかという気がしてきたw
読了日:3月25日 著者:安彦良和

日本古代史をいかに学ぶか (新潮選書)日本古代史をいかに学ぶか (新潮選書)感想
日本古代史学入門というよりは、著者による研究史の回顧という側面の方が強い。(期待した出口王仁三郎との関係についてはまったく言及されていないが……)著者が強い影響を受けたとして挙げる人物の一人に折口信夫がいるが、折口信夫の学問というのは、日本古代史の分野においても非常に扱いが難しいというか、扱いに困っているのだなと感じた。あとは、京大在学中に貝塚茂樹と三品彰英の講義も受けたというのが興味深いところ。
読了日:3月27日 著者:上田正昭

古代東アジアの女帝 (岩波新書)古代東アジアの女帝 (岩波新書)感想
概説書というよりは歴史小説にノリが近い。天武の父が高向王であるとか、天智同母妹の間人皇女が斉明から大王位を継承したとか、天智が大津皇子への大王位継承を図っていたといったようなことは、日本古代史学の分野でどの程度支持されているのだろうか?どうせ小説的に話を進めるのならば、また持統と武則天の両方を取り上げるならば、日本の天皇号が唐の高宗の天皇号に影響されたものと言い切っても良かったのではないだろうか。概説書としても小説的歴史本としても不満が募る書である。
読了日:3月28日 著者:入江曜子

世界の名前 (岩波新書)世界の名前 (岩波新書)感想
古今東西の名前や氏姓に関するエッセー集。各項の執筆者は当該地域の言語学・文学・歴史学等の研究者。当然体系立った著述ではないが、雑学的に見るには面白い本となっている。日本とかけ離れた命名をする地域が目に付く一方で、日本と同じようにもともと庶民に氏姓がなかったのが、近現代に入って氏姓を名乗ることが義務づけられ、適当に氏姓をつけてしまったり、無事の成長を祈って子供に縁起の悪い名前をつけたりといった、共通点が見出せる地域も多々ある。
読了日:3月31日 著者:

コメント (4)
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