博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『風立ちぬ』【ネタバレあり】

2013年08月16日 | 映画
宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』を見てきました。

色々物議を醸している本作ですが、実際に見てみたところ、イタリアが生んだ偉大な航空技術者カプローニと夢の中で交信する能力を得た堀越二郎青年が、三菱に入社して人類の「呪われた夢」飛行機設計に挑むファンタジー巨編でした(^^;) そしてバッド・エンドのはずなのに、ラストシーンでこみ上げてくる謎の感動……

ジブリ作品で謎の感動と言えば、『もののけ姫』でもヒロインのサンがアシタカらに別離を告げるラストシーンでなぜか未来への希望のようなものを感じましたが(個人的にジブリ作品で一番好きなラストシーンです)、今回のラストシーンはそれに匹敵すると思います。

零戦など戦闘機とか、堀辰雄・トーマス・マンの『魔の山』など文学関係の予備知識については、あれば作品への理解は深まるでしょうけど、必須のものではないでしょう。これは『もののけ姫』を見るのに網野史学の素養が必須というわけではないのと同じですね。作品の背景については、それこそ『もののけ姫』の時みたいに解説本が出るんじゃないかと。さしあたって堀越二郎の設計した戦闘機が戦争に使われ、特攻などで多くの犠牲者を出したことさえ知っていれば充分ではないかと思います。……それでも小学生以下の観客にはかなり厳しい条件ですが。

前作の『ポニョ』を見た時は「宮崎駿は大丈夫なのか?」と思ってしまいましたが、今作に関しては大丈夫です。

堀越二郎と妻菜穂子の結婚生活については、作品中でも夫妻の居候先の黒川課長が言っていたようにエゴイズムには違いないでしょうけど、あれはあれで良かったんじゃないかと。当時の医療状況から考えると、結核の療養とは言っても要するに空気のいい所で日光浴をしながら静養し、栄養の付くものを食べるというだけのものなので、サナトリウムに戻っても回復する確率がどれほどのものだったのか……

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