西尾哲夫『アラビアンナイト』(岩波新書、2007年4月)
『アラビアンナイト』の成立・受容史をまとめた本です。
『アラビアンナイト』は『千一夜物語』というのが元の名前ですが、本当に千一話もの物語を集めているわけではありませんでした。しかしこの説話集の存在がヨーロッパ人に知られ、注目されるようになると、本来あったはずの千一話分の物語を「復元」しようとする試みがなされ、『アラビアンナイト』の異本や、異本だと見なされた他の説話集などから物語が付け加えられた結果、本来の姿(何を以て本来の姿とするかも難しい問題ですが)とは異なった『アラビアンナイト』が出来上がりました。この書ではその経過を詳しく解説しています。
その他、そもそも本場の中東では文体が卑俗だというので、『アラビアンナイト』は文学として重視されておらず、むしろヨーロッパからの逆輸入によって注目されるようになったとか、彼らがヨーロッパ人に売り込むために偽写本を捏造したとか、『アラビアンナイト』のエロチックな要素はヨーロッパ人翻訳者が潤筆したものだったとか、『アラビアンナイト』が西洋のファンタジーに与えた影響など色々と面白いトピックが盛り込まれてます。確かに『ナルニア国物語』にはカロールメンという『アラビアンナイト』から抜け出してきたような連中が出て来るわけですが。
『アラビアンナイト』の成立・受容史をまとめた本です。
『アラビアンナイト』は『千一夜物語』というのが元の名前ですが、本当に千一話もの物語を集めているわけではありませんでした。しかしこの説話集の存在がヨーロッパ人に知られ、注目されるようになると、本来あったはずの千一話分の物語を「復元」しようとする試みがなされ、『アラビアンナイト』の異本や、異本だと見なされた他の説話集などから物語が付け加えられた結果、本来の姿(何を以て本来の姿とするかも難しい問題ですが)とは異なった『アラビアンナイト』が出来上がりました。この書ではその経過を詳しく解説しています。
その他、そもそも本場の中東では文体が卑俗だというので、『アラビアンナイト』は文学として重視されておらず、むしろヨーロッパからの逆輸入によって注目されるようになったとか、彼らがヨーロッパ人に売り込むために偽写本を捏造したとか、『アラビアンナイト』のエロチックな要素はヨーロッパ人翻訳者が潤筆したものだったとか、『アラビアンナイト』が西洋のファンタジーに与えた影響など色々と面白いトピックが盛り込まれてます。確かに『ナルニア国物語』にはカロールメンという『アラビアンナイト』から抜け出してきたような連中が出て来るわけですが。
そうではない話もあるんですが、宗教ネタと男女間の話が多いあたり、中国の説話や、本邦の今昔物語なんぞと共通するもんがありますね。
リムスキー・コルサコフの交響組曲「シェーラザート」なんか、まさに「西洋から見た理想化されたアラビア世界」って感じです。
その「アラビアンナイト」の世界と、現在のイスラム世界とのギャップが、何とも‥‥。
だもんで、西洋から中東へと『アラビアンナイト』が逆輸入された時に「我々の祖先がこんな怪しからんものを作っていたのか!」と問題視されたようです(^^;)