博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2024年1月に読んだ本

2024年02月01日 | 読書メーター
アフリカ史 (講談社学術文庫)アフリカ史 (講談社学術文庫)感想
著者の専門柄ということか『新書アフリカ史』と比べて各地の神話が占める比重が多い。そして人物などについて日本史に例える箇所が目立つが、ボルヌーのイドリス2世、ズールーのシャカ王、エチオピアのメネリック2世ら英雄たちの物語は確かに魅力的である。特にエチオピアは独立を保ち続けたということもあり、アフリカ人民の解放の象徴となったということである。近代になって西欧からキリスト教が伝来すると、コンゴのシモン・キンバングーのように救世主を称して宗主国への反抗を説く者が現れたのは、中国の太平天国を連想させる。
読了日:01月08日 著者:山口 昌男

中国学の近代的展開と日中交渉 (アジア遊学)中国学の近代的展開と日中交渉 (アジア遊学)感想
複数の論文で指摘されている近代日本の漢学の先進性の指摘のほか、古勝論文で議論されている余嘉錫の章学誠評価の矛盾の真意、周論文で言及されている、明治以後の日本の漢学家たちによる現地体験や中国の学者との学術交流は過去には考えられなかったことであるという指摘や、山田論文で議論されている竹内好の「支那」呼称と「中国」呼称をめぐる葛藤などを面白く読んだ。私の専門に関係する甲骨文の研究や『古史弁』運動(この二つについても本書でカバーされているが)についても、近代の日中学術交流全般の中に位置づける必要があるのだろう。
読了日:01月11日 著者:

繁花 上繁花 上感想
90年代の話と文革の前後の話が交互に語られる群像劇というか風俗小説と言った方がいいのだろうか?筋はあるようでなく、ないようであるという感じで、ひたすら原著の上海語を関西弁に置き換えて下世話な話が続く。かと思えば古典詩詞なども適宜会話に織り交ぜてくるので、ちょっと不思議な感覚がする。取り敢えずウォン・カーワイのドラマは登場人物の名前を借りただけの別物だと思う。
読了日:01月15日 著者:金宇澄

国民国家と帝国 19世紀 (岩波講座 世界歴史 第16巻)国民国家と帝国 19世紀 (岩波講座 世界歴史 第16巻)感想
北村氏の展望ではフランス革命の起点に諸説があること、西欧諸国の植民地獲得の動機について「文明化の使命」が注目されていることなどが示唆されている。「文明化の使命」は、並河論文によると英仏による奴隷制廃止の拡散にも影響したとのこと。「文明化の使命」はまた、中澤論文で触れられる西欧のスロヴァキアなどに対する「歴史なき民」という視線とも関係するであろう。貴堂論文では、「移民国家」の印象が強いアメリカではあるが、南北戦争の頃までは「奴隷国家」「奴隷主国家」と位置づけるべきであるという議論を紹介する。
読了日:01月18日 著者:

繁花 下繁花 下感想
文革期の話と90年代の話がまったく交わらないまま展開していき、終盤まで2種類の違う話を読んでる気にすらなった(登場人物も半数以上は重ならないのではないか)。それが最後に……ということでこのままオチが付かないまま終わるのでないかと思われた話に一応の決着がついて完結する。しかし本書を読んでもドラマ版の参考にはまったくなりませんw
読了日:01月22日 著者:金宇澄

感染症の歴史学 (岩波新書 新赤版 2004)感染症の歴史学 (岩波新書 新赤版 2004)感想
新型コロナとの対比から天然痘、ペスト、マラリアの流行や対策を読み解こうという試み。第一章はコロナ禍の簡潔にしてよいまとめとなっている。しかし新型コロナに関する記憶や記録は急速に失われつつあるとして、「デマ」とされた動画なども含めて保存の必要を訴える。新型コロナが中国政府によって人為的に開発されたという言説から731部隊の話などウイルスや細菌の兵器利用の試みを話題に出したり、日本による橋本イニシアティブの発想が中国に継承されているといった点を面白く読んだ。
読了日:01月24日 著者:飯島 渉

清朝滅亡:戦争・動乱・革命の中国近代史一八九四―一九一二清朝滅亡:戦争・動乱・革命の中国近代史一八九四―一九一二感想
日清戦争から溥儀の退位までの流れをドキュメンタリーチックに描く。「海軍の予算を頤和園の修築費として流用」したという話の真相、康有為の公車上書の史実性、義和団事件の際の東南互保が清朝の中央集権体制の瓦解を決定づけたとする視点、袁世凱や孫文の人物評価などが読みどころか。
読了日:01月27日 著者:杉山 祐之

平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像 (NHK出版新書 707)平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像 (NHK出版新書 707)感想
一条には長らく天皇としての呼び名が定まっていなかった(意外なことに息子の後一条の方が先に定められたとのよし)というような豆知識も面白いが、『御堂関白記』の墨で消された部分の判読、『御堂関白記』『権記』などの間の一条の辞世の句の食い違い、藤原実資だけが著者とは言い切れない『小右記』の形成過程の問題など、それぞれの日記のテキスト的な問題の方がなお面白い。
読了日:01月30日 著者:倉本 一宏

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