博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

謎の豪族 蘇我氏

2006年04月25日 | 日本史書籍
水谷千秋『謎の豪族 蘇我氏』(文春新書)

書店でタイトルを見て「蘇我氏って謎の豪族やったんか?」と不審に思い、ついつい購入してしまいました(^^;) ちなみにこの本の著者は同じく文春新書から『謎の大王 継体天皇』なんて本も出してます。

蘇我氏の興りから滅亡まで、蘇我氏に関するトピックはあらかた網羅されていますが、個人的に興味深かったのは、蘇我氏の出自についてです。今まで何となく蘇我氏は渡来系の氏族だと思ってましたが、この本によると渡来系氏族説はかなり根拠があやふやであるとのことです。もともとこの説は『日本書紀』応神紀二十五年の条に、百済の重臣で倭国への亡命者として登場する木満致、『三国史記』百済本紀に百済の重臣として登場する木満致、そして蘇我氏の祖先の一人とされる蘇我満智が同一人物であるというのが根拠となっており、木満致(木満致)が百済から倭国に亡命して以後、蘇我満智と名乗りを改めたということですが、この本では、この三人の在世年代に関する伝承が曖昧で、彼らを同一人物であると見るには無理があるとしています。

また彼らが仮に同一人物であったとしても、渡来系の氏族、特に本国で名門とされていた氏族は倭国に来てからも本国での姓をそのまま名乗るのが一般的で、木(あるいは木)から蘇我などという姓に変え、かつその出自を隠すのは不自然であると指摘しています。この本では結局、蘇我氏は大和国高市郡曽我を発祥の地とし、一時期葛城氏の傘下にあったことのある氏族と結論づけています。

蘇我蝦夷・入鹿の名が大化の改新以後につけられた蔑称であるという説についても、古代において「蝦夷」や「入鹿」といった名を名乗った人物は複数存在しており、当時こういった名前は一般的なものであり、恥ずべき名前ではなかったと反論しています。

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2 コメント

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なぞ (川魚)
2006-04-25 23:09:01
わたしの友人は、ウィキペディアで「花園天皇」をひいたら、

花園天皇(はなぞのてんのう)と書いてた、いうてました。

花園天皇は謎の天皇。

おそまつ。



イルカとかエミシいうのは、「ゲルマニクス」のようなもんでしょうかね~?(笑
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Unknown (さとうしん)
2006-04-26 23:43:41
この本では、異民族や動物に由来する名前は、その旺盛な体力や生命力にあやかろうとしたのではないかとしていますね。蝦夷の討伐に関わったからこういう名前がついたというわけではなさそうです。
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