博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2020年6月に読んだ本

2020年07月01日 | 読書メーター
マックス・ヴェーバー――主体的人間の悲喜劇 (岩波新書)マックス・ヴェーバー――主体的人間の悲喜劇 (岩波新書)感想中公新書の『マックス・ウェーバー』とは異なり、こちらは完全な伝記となっている。彼の生きた時代とその軌跡から思想の生まれた背景をあぶり出すという趣向だが、反ユダヤ主義、社会ダーウィニズム、男女観、ポーランド人やアメリカ人に対する視線といった、彼の持った偏見と、それがどう変化したのか(あるいはしなかったのか)を中心に描いている。ヴェーバーの思想の現代的意義を説くという方向には否定的なのも中公新書の方とは対照的。読了日:06月01日 著者:今野 元

白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書)白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書)感想白人ナショナリズムに染まる動機、思想的政治的背景、その現在を描き出しているが、彼らから見た日本の評価や、白人ナショナリズムと訣別した人々の話も盛り込まれているのが面白い。遺伝学との関係は、ベネディクト『レイシズム』での議論も想起させる。中国に関しては警戒論とともに連携を結び得る相手という評価もあるようで、彼らの対中観をもっと掘り下げて欲しかったと思う。読了日:06月03日 著者:渡辺靖

東大連続講義 歴史学の思考法東大連続講義 歴史学の思考法感想東大の一般教養の歴史学のテキストということだが、歴史学の専門科目の史学概論のテキストとしても通用するものになっている。歴史の法則性、史料の種類と扱い、植民地主義、歴史用語のアナクロニズムの問題、近隣諸国との史実評価の不一致の問題等々、文字通り「歴史学の思考法」のエッセンスをまとめたものとなっている。読了日:06月05日 著者:

三国志 - 研究家の知られざる狂熱 - (ワニブックスPLUS新書)三国志 - 研究家の知られざる狂熱 - (ワニブックスPLUS新書)感想三国志関連の研究で知られる渡邉義浩氏の三国志との出会いから現在までの研究のあゆみ。名士論、儒教国家論といった学説がどういう文脈、問題意識のもとで生み出されてきたかがまとめられており、一研究者の自伝として面白く読める。また論文や研究のテーマをどうやって見つけ、どうやって次のテーマにつなげていくかという、研究手法のサンプルともなっている。読了日:06月07日 著者:渡邉 義浩

戦国期足利将軍研究の最前線戦国期足利将軍研究の最前線感想応仁の乱以後も急激に没落して名ばかりの存在になったわけではなく、15代義昭に至るまで相応の権威を保っていた足利将軍。それを軍事面、裁判、栄転の授与、和平調停など、多角的な視点から描き出す。旧洋泉社の最前線シリーズとは差別化を図ったということだが、確かに読みやすい文章、内容となっている。読了日:06月10日 著者:

香港と日本 --記憶・表象・アイデンティティ (ちくま新書)香港と日本 --記憶・表象・アイデンティティ (ちくま新書)感想香港人の目からは、香港の中、大陸中国、そして日本がどう見えているかという香港人の世界観のサンプル。ただしそれが香港人の世界観の最大公約数と見てよいのかどうかはわからない。著者の大陸人への目線は、多くが大陸から来たはずの香港人自身の父祖への視線として跳ね返ってくるのではないだろうか。それが本書で触れられている家族との「政治闘争」の背景になっているのではないか。読了日:06月14日 著者:銭 俊華

人事の古代史 ──律令官人制からみた古代日本 (ちくま新書)人事の古代史 ──律令官人制からみた古代日本 (ちくま新書)感想人事というか律令官制の古代史。扱われている時代は奈良から平安初期までが中心。正倉院文書で知られる写経生としての登用が余剰人員のための公共事業としての性質があったとする点など、官職に就けない散位をめぐる話が面白い。官制に関する議論は無味乾燥なものとなりがちだが、具体事例を多く盛り込んだ「人事」の話に落とし込むことで面白く読めるようになっている。読了日:06月18日 著者:十川陽一

三体Ⅱ 黒暗森林(上)三体Ⅱ 黒暗森林(上)感想第一部の読後感から予想した展開とはまるで異なった話が展開され、良い意味で期待を裏切ってくれた。イナゴの根性を持つ老百姓史強の続投が嬉しい。「智子」によって科学の発展を封じられた後の人類の戦いというかあがきは、科学と技術の関係、科学と技術の違いについてのわかりやすい説明となっている。また昨今の新型コロナにまつわる混乱や今後の見通しを暗示したかのような展開が出てくるのも驚かされる。読了日:06月21日 著者:劉 慈欣

「慵斎叢話」 15世紀朝鮮奇譚の世界 (集英社新書)「慵斎叢話」 15世紀朝鮮奇譚の世界 (集英社新書)感想朝鮮王朝前期の士大夫の随筆に描かれた小話を通じて当時の社会や世相を探っていく。我が国の『鸚鵡郎中記』『甲子夜話』に相当する書と言えるかもしれない。著者は韓流時代劇からは朝鮮時代を正確に理解できないというが、その実本書は韓流時代劇や映画の良きガイドという側面もある。林羅山と朝鮮通信使、朝鮮の文献との関わりに関する話が面白い。読了日:06月24日 著者:野崎 充彦

ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち (中公新書 (2595))ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち (中公新書 (2595))感想馴染みのない人名が続出するが、異端宣告をされてもその宗派がすぐに衰えたわけではないという機微、女帝エイレネの即位とカール戴冠との関係、テマ制という用語の出現とその実態との関係、ルネサンスだらけのビザンツ帝国、アレクシオス1世と十字軍など、個別の史実よりも高校世界史で語られる事項の詳細を面白く読んだ。ビザンツ史をユーラシア史の中でどう位置づけるかという視線が随所に感じられるのがよい。読了日:06月27日 著者:中谷 功治

司馬光とその時代 (中国歴史人物選)司馬光とその時代 (中国歴史人物選)感想『資治通鑑』の編纂や新法・旧法の対立といった必須事項を押さえつつ、党争が盛んではあっても対立する相手に敬意を表したという北宋の時代の気風や、欧陽修・文彦博・包拯といった人々との交友、そして新法を廃したのちに新しい改革の企図や手順を提示しえなかったという、司馬光の限界も描いている。読了日:06月30日 著者:木田 知生

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