野間文史『春秋左氏伝 その構成と基軸』(研文出版、2010年3月)
同氏の前著『春秋学 公羊伝と穀梁伝』がかなり良い本だったので、こちらも期待して読んでみることに。しかしまとまった概説書だった前著に比べて、こちらはかなり内容が雑多になってますね(^^;) あるいは本書の雑多な構成が『左伝』自体の性質を示しているのだと言わんとしているのかもしれませんが……
本書で面白かった主張は以下の通り。
○『左伝』は魯以外にも列国の史記を原資料としていると見られ、中には演劇を元ネタにしたと思しき部分もある。
○『春秋』をこれだけで首尾一貫したものと見なす『公羊伝』・『穀梁伝』とは異なり、『春秋』の記事には不備があり、これを補うために編纂されたというのが『左伝』の立場。
○『尚書』が帝王の言葉の記録であるのに対し、『左伝』は鄭の子産・晋の叔向・斉の晏嬰といった賢大夫の言葉の記録。その中でも特に子産をリスペクト。
○『左伝』の中には時間・登場人物などを入れ替えただけで、ストーリーラインや記述の仕方がほぼ一緒という「同事異聞」の説話がたくさん紛れ込んでる……らしい。
あと、著者が過去の論文で論じた、斉桓公の遺体が長期間放置され、しまいにはウジ虫がわいたという説話がなぜ出来たのかという話も本書に盛り込まれていますね。
最終章では日本での『左伝』研究史をまとめており、近年の平勢隆郎氏や吉本道雅氏らの研究についても詳しく紹介されています。しかし平勢氏については物の見事に褒めて落としてますなあ(^^;)
同氏の前著『春秋学 公羊伝と穀梁伝』がかなり良い本だったので、こちらも期待して読んでみることに。しかしまとまった概説書だった前著に比べて、こちらはかなり内容が雑多になってますね(^^;) あるいは本書の雑多な構成が『左伝』自体の性質を示しているのだと言わんとしているのかもしれませんが……
本書で面白かった主張は以下の通り。
○『左伝』は魯以外にも列国の史記を原資料としていると見られ、中には演劇を元ネタにしたと思しき部分もある。
○『春秋』をこれだけで首尾一貫したものと見なす『公羊伝』・『穀梁伝』とは異なり、『春秋』の記事には不備があり、これを補うために編纂されたというのが『左伝』の立場。
○『尚書』が帝王の言葉の記録であるのに対し、『左伝』は鄭の子産・晋の叔向・斉の晏嬰といった賢大夫の言葉の記録。その中でも特に子産をリスペクト。
○『左伝』の中には時間・登場人物などを入れ替えただけで、ストーリーラインや記述の仕方がほぼ一緒という「同事異聞」の説話がたくさん紛れ込んでる……らしい。
あと、著者が過去の論文で論じた、斉桓公の遺体が長期間放置され、しまいにはウジ虫がわいたという説話がなぜ出来たのかという話も本書に盛り込まれていますね。
最終章では日本での『左伝』研究史をまとめており、近年の平勢隆郎氏や吉本道雅氏らの研究についても詳しく紹介されています。しかし平勢氏については物の見事に褒めて落としてますなあ(^^;)
カールグレンの研究については基本的に肯定の立場ですね。ただし、馬王堆帛書などの出土文献をも資料に含めたうえで、その学説をもう一度検証してみる必要があるのではないかとしています。
ブログで挙げられていませんでしたが、文公の部分は、お気に召しませんでしたか?
重耳関係は小野寺氏の研究の引用も多かったし、もういいかなと思いました(^^;)