自然を尋ねる人

自然の素晴らしさ、豊かさ、人と自然の係わり合いを求めて!自然から私たちにくれる贈り物を見つけるために今日も歩く。

民話 落ち武者の復習

2010-02-10 20:25:09 | Weblog
この物語は平家が滅亡した1185年から鎌倉幕府ができた1192年頃の福山市神辺町上御領の話です
今その近くに一里塚跡がある









むかしーむかし 宗重池の裏の山は深い谷だった
その谷の二山越えた奥に「鎌研ぎ」という処があった





ここには天狗みたいな長いひげを生やし、髪がバサバサの男が住んでいた
この男見るからに乱暴そうなので誰もこの谷には近づかなかった



それに朝になると「ゴーシ、ゴーシ」と気持ちの悪い音した
村人はこの男がいつ頃、どこからきてここへ住み着いたか知ってはいない
が、源氏の侍がこの御領の里へよく来て平家の侍はいないかと聞いて回りだした
しつこく「平家の侍を見なかったか」と聞き出した
源氏の侍もうっとうしいし、得体のしれない山奥の男も怖いし
村人はこの時ばかりと山の男のことを源氏の侍に話した
これを聞いた源氏の武士は喜び勇んで山へ入って行ったが誰も戻ってはこなんだ
「やはりあの男は天狗か、化けものだ」村人はヒソヒソと噂をした
源氏の侍も加勢をたくさん連れてきて相談をしていた
大男には仲の良い若者が一人だけおり、この若者が大男に食べ物を運んでいた
若者の家は貧乏だけど



この若者は心優しく誰にも好かれていたので村人はこの若者のことは源氏の武士には言わなかったし、
大男もこの若者には心を許していた
が村人がこのことを言わなくてもよいのについしゃべり
それを聞きつけた源氏の武士は
若者を呼び、笑顔で若者に訊ねた
「おまえは毎日あの大男に食事を持って行っているそうだが友達かい」
若者は震えながら
「そうだよ」と答えた
「あの谷におる大男は腕が立つようだがどんな武器を持っているか。
わしも武士の端くれだからいっぺんその武器を見せてもらいたい。
タダで持ってこいとはいわないよ。大男が好きなものを食べれるだけの銭と
おまえには家を直して生活できるだけの田圃をあたえるよ」
「それでも無理だと思うよ」
「お前なら大男に話ができるだろう。大男においしいものを食べさせてやれるだろう」
自分は貧乏だから大男に十分な食べ物を持っていけないことを悔やんでいたから
ついには武器を借りることを了承した
若者はその晩大男を説得するつもりで山へ入ったがぐっすり大いびきで寝込んでいたので
棚にかけてあった鎖鎌を背中に背負うと山を駆け下りた
武士はその鎖鎌をみると
「これは素晴らしい、みごとなものだ。今夜一晩わしが預かり、
明日朝、わしが返しに行くから」と銭とお菓子に酒に果物を持たせて若者を帰した。
源氏の武士はすぐにみんなを集め「武器がなければ赤子同然だ。男の息の根を止めろ」
と山へ向かわせた
さすがの大男も武器がなければどうすることもできずその場で殺されてしまった
翌朝このことを知った若者は泣き叫んで抗議したが後の祭りでどうすることもできなかった
「なんということをしてしまったのだろうか。銭と食べ物に目がくらんだわしがばかだった」
それから数日して宗重池に若者の遺体が浮き、
山からは前より気味の悪い鎌をとぐ音だろう、ゴーシ、ゴーシの音が聞こえた
それから時日がたち戦国時代の終わりにこの話を聞き不憫に思った殿様が
ここにお堂を建てて霊を葬ったということでゴーシ、ゴーシの音は村人の耳には聞こえなくなったそうだ