自然を尋ねる人

自然の素晴らしさ、豊かさ、人と自然の係わり合いを求めて!自然から私たちにくれる贈り物を見つけるために今日も歩く。

昔話 トンビ教

2014-02-11 12:11:23 | Weblog
むかし、昔、婀娜(あな)の湖(うみ)の波が御領山の山裾を洗らっいていた頃
笠岡の港から出雲鰐淵寺(がくえんじ)で修業し、出雲大社で荘園の長(おさ)の目
の治癒成就を祈祷する若い修業者の一行が御領の屯倉(みやけ)前を通り、長老塚池の
方に向っていた。府中の出口から山道に入るより近道と聞いていた一人が先導した。
山に入ったが西も東もわからなくなり、空を舞うトンビに聞いた。


鰐淵寺に行くのはどっち


トンビが云うには
『まだ50里も先じやけー聞かれてもよう教えん』『へえじゃが、問われりゃー返事をせんと
いけんけー、わしの輪を描く方向めざしていきんさい』
その頃、お日様は西に傾き、赤い夕焼けが空一面を不気味に覆い始めた。



修業者3人は怖くなった。通り道の石さえ子狐に見え




本物の狐が近くで「コン」と鳴き、フクロウが「ホウホウ」と鳴くと
もう、ほうほうのていでここを早く抜けなければと、そして泊るところを探さなくてはと、
尾根伝いに急ぐと池があつた。月の光りを映した水鏡の手前に小さな光りが見えた。
そこには人が住んでいない崩れかけた三宝神社があり、その少し先に火が揺れていた。


廃屋

タヌキ


「今晩は、夜になっているが無理を頼みたい。一晩泊めてもらえんだろうか」
出てきた婆様は
「ほうきゃーここ辺りや―、タヌキにキツネや猪がうようよしとるけー、
夜は出歩かん方がええ、何にもにゃーがそこらで寝りゃーええ」
「へーであんたらー、晩飯はもう食うたか、まだきやー」
「そうきゃー、ほんなら、ちいと待ちなゃー」
婆様は死んだ爺様が仕込んだどぶろくを出し、トンビが運んで来てくれた肉を
囲炉裏で焼きだした。
よったり(四人)で囲炉裏を囲んで話だした。
婆様は久しぶりに人間と話をするけー、ようしゃべる。
爺様が夏の暑さに負けて死んでから三カ月。
『毎晩遺骨の前に座り、爺様やと言うだけじゃ。
 なんかありがたいお経か祝詞はなゃもんじゃろうか』
と真面目に三人頼んだ。
三人は困った。これから修業をする身ゆえ何も教えてもらっていないが
断るわけにもいかないので
『そうですかそれでは明日の朝、御勤めをするからそれを聞いてください』
三人の額には囲炉裏の火の熱さ以外の違う汗が出ていた。
                             続く