このアルバムは晩秋~冬、それも年の瀬につれその魅力を増していくものとばかり思っていましたが、整理中、目に留まり、ターンテーブルに乗せた所、いやぁ~、季節に関係なく良いですね。
A面、「欲望と言う名の電車」から始まる3曲の流れが抜群。本作をバレルの最高傑作に挙げるファンがいるほどで、”YOU MUST BELIEVE IN SPRING”をエヴァンスのBEST1に推すファンの心境に通ずるかもしれない。ただ、エヴァンスものほど作品自体が広く知れ渡っていない。それでいいんです。
「欲望と言う名の電車」の退廃的なメロディーを薄めのボッサ・リズムに乗せ豊潤な音色で弾き出すバレルのgに一発で殺られる。続くエヴァンスやJ.J.ジョンソンが演じている「メイク・サムワン・ハピー」、ラテン・フレーバーを軽く利かし、二人に勝るとも劣らぬパフォーマンスを聴かせます。曲名通り聴く内に段々心がウキウキしてきます。
さんざん手垢が付いている「ラウンド・ミッドナイト」、策を弄さず正攻法で攻め切るバレル、やはり「出来る、一流の男」ですね。これも指折りの名演の一つと言っても過言ではありません。
ふと立ち寄ったジャズ・バーで流れ、もし他に誰もいなかったら、貴方はマスターに「ワンス アゲイン」とリクエストし、ロックでダブルを・・・・・
1週間後、美女を連れて、そしてマスターに目配せで「ワンス アゲイン」と ・・・・・・、マスターは気を利かせ、最後にソロ・ギターの”Blues In The Night”をそっとプレゼントするでしょう。ま、「欲望と言う名のジャズ・バー」じゃなく、ただの妄想ですね(笑)。
「知られざる名盤」、「裏名盤」と盛る気はさらさらありませんが、バレルの弾力あるトーン、そしてアーバンなソロ・ワーク、間違いなく「虜」になります。