jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

W・SHAWのアシストぶりが聴き物 ・・・・・ INTRODUCING / KENNY GARRETT

2024-03-02 | Portrait of Woody Shaw

 

「初リーダー作に勝るものなし」という諺がある。これは、その言葉通りの意味ではなく、その作者の基本的スタイルの根源が一番明確に表現されている、という意味と、解釈している。
この作品は、正にその典型で85年、ブルーノートから「OTB」として、ジャズシーンに踊り出たギャレットを、クリス・クロス(オランダ)は彼の才能をいち早く認め、既に初リーダー作を録音していたのである。
86年の第一回‘Mt' Fuji Jazz Festival’に姿を見せたギャレットは、あるジャム・セッションで情熱的ソロを聴かせ、観衆を総立ちにさせた(僕もその場にいました)。そのギャレットがこのレコードに等身大で収められている。

ギャレットはサックス奏者よりもトランペット奏者から大きく影響を受けたそうで、中でもHubbardを敬愛している。ハバードはデビュー当時、サックス奏者から影響を受けたフレッシュなプレイが評判になったが、ギャレットはその逆ですね。本作はハバードの代役とも言える弟分、Shawのtpが素晴らしい。Garrettをアシストしながらベスト・プレイを聴かせてくれる。全トラック、ゆるみが微塵もないハイレベルに驚かされる。もっとも、当時のショーのグループにギャレットが参加した形なので、バックアップも完璧です。8曲中、ギャレットのオリジナルが5曲を占め、彼のリーダー作を明確に打ち出している。ギャレットのオリジナル、B-2の”Until Tomorrow”でのショーのソロは目立たないが実に味わい深い。

なお、録音は1984年12月28日、イングルウッドのヴァン・ゲルダー・スタジオで行われている。戻ってきたC41(プリ・アンプ)で聴くと元々、あのゲルダー・サウンドとは異なっているけれど、伸びやかな音になっている。

カヴァはちょっとダサイけれど、中身は、超一級品です。


見事なコラボレーション ・・・・・ THE ETERNAL TRIANGLE / HUBBARD & SHAW

2023-09-16 | Portrait of Woody Shaw

 

二年前(1985年)にもう一枚、二人がコラボした作品”DOUBLE TAKE”がありますが、何処かに紛れてしまい、本作一枚をUp。競演話は、二人のCBSコロンビア時代(1970年代後期)にあったそうですが、実現されなかったようです。曲目は二人のオリジナルが二曲ずつ、スティット、モーガンの曲がそれぞれ1曲と、中途半端にスタンダード等を入れずジャズメンのオリジナルだけで固め、ジャズの本流まっしぐらのスタンスです。TOPのハバードのオリジナル”Down Under”はシャッフル調で、まず肩を力を抜きリラックスするのに効果的で、ショーの代表曲”The Moontrane"に期待が膨らみますね。B-1のモーガンの”Calling Miss Khadija”はカスクーナのリクエストだそうです。

 

 

録音はV・ゲルダーによるデジタル録音でちょっと硬い感じがしますが、高域が実に伸びやかに録られ、二人のペットが気持ち良く鳴っている。

 

 

敬愛するハバードと自分の初リーダー作”INTRODUCING”(Criss Cross)で好アシストを受けたショーに囲まれたギャレット(as)も臆することなく己の能力を十二分に発揮し本作の価値を高め、リズム・セクションもフロント三管をがっちりフォローしている。

それにしても、兄貴分のハバードのtpって半端じゃないです。6曲共、アプローチ、筋書き、展開がまるで異なり、ショーも最上級のプレイを聴かせているけれど、まだまだ実力の差は隠せない(笑)。ショーはこのセッションで何かしら得たものを一年後、絶作となった”IMAGINATION”(Muse)の中で生かし、見事な作品を創り上げている。ハバードは数多くのトランペッターに大きなきな影響を与えたと言われる事例の一つです。

モダン・トランペットを楽しむなら最適、最高の一枚ですね。ホントです。

 


侮れぬ渋いtp・ワンホーン カルテット ・・・・・SETTING SATNDARDS / WOODY SHAW

2023-09-09 | Portrait of Woody Shaw

 

CBSコロンビア時代(1977~1981年)の後、古巣のMUSEに復帰した一作目(1983.12.1)。メジャー・レーベルとの違いが即座に判る何とも地味なカヴァ。

問題はプロデューサーが同じM・カスクーナ、どういう作りをするか、興味深い。カスクーナが出した答えは、マイナー・レーベルらしく?人件費削減(笑)ではないけれど、tp・ワンホーンもの、素材はスタンダード(6曲中4曲)と絞り込んでいる。なお、ショーは4曲、フリューゲルホーンを吹いている。

 

 

 

どうしてもCBSの豊富な資金力による多彩な作品(5作)と比較し勝ちですが、まるでNYの摩天楼から落ち着いた郊外へ移り変わりの趣がオーソドックスさと相俟って耳に心地よく響く。

曲目に目を遣るとA-2の”All The Way”がまず気になります。モーガンのプレイが良く知られていますが、本作でのショーの円熟した演奏はモーガンを遥かに上回っている。B・ウイリアムスの重厚なウォーキング・ベースも聴き物。また、B-2の”What’s New”のアップ・テンポで軽快に飛ばすショーのペットにCBSで研鑽した跡がハッキリ浮かび上がり、ホント、力を付けている。

元々、地味だけれどウォルトンのpがもう少しショーをアシストしていれば、本作の存在はもっと世に知られただろう。tp・ワンホーンの難しさはpが果たす役割が大きいです。

控え目だが侮れない作品。


秘められた底力 ・・・・・IMAGINATION / WOODY SHAW

2022-12-04 | Portrait of Woody Shaw

 

今から33年前の1989年5月10日に44歳の若さで亡くなったショーのリーダー・ラスト・アルバム。死後、ライブ音源がかなり発掘されていますが、少なくともスタジオではこれがファイナルに違いなさそうです。

一部のディープなファン(自分も含め)が「過小評価、不当評価」と訴えるショーですが、リーダー作は20枚を超え、内、5枚はメジャーのコロンビアとなれば、それほどでもないのでないか、と思う(ようになった)。ひょっとしたら、こうした現象はわが国特有のものなのか。そもそも、ファンの間で本作はちゃんと聴かれているのか、甚だ疑わしい。

この作品は、スタンダードを中心に心地良いフォー・ビート・ジャズに徹し、新機軸、チャレンジ等々、全体のイメージをポジティブに語れる要素は何一つなく、カヴァ同様、地味に映る。マイルスで知られる”If I Were A Bell”からキック・オフし、折り返しのB-1にはハバードで知られる”You And The Night And The Music”と、二人の大先輩を意識した曲構成が示唆しているように本作はショーのtpプレイにフォーカスを当てて聴くべきアルバムです。

以前のような力みが消え、スケール感を失わずメロディアスに歌うスタイルに進化している。中でもペッパーの名演でも知られる”Imagination”ではソロに入ると緩やかなボサ・リズムに乗り、まるでエイジもののウイスキーのようなマチュアなソロを展開している。2週間前に、ハバードとダブル・ネームで”THE ETERNAL TRIANGLE”を録音したばかりで、2年前にも”DOUBLE TAKE”を録音しており、単なるステージ上の共演より密度の濃い体験から何かしらツボでも会得したのかもしれない。いつの間にか表現力が多彩に、しかも無理なく打ち出されてくる。因みに、以前、N・ヘントフが書いたライナー・ノーツの中でショーは影響を受けたトランペッターとして、モーガンから‘so witty and tricky’、バードから‘warm and lyrical’、ブラウンから‘so much warmth’を挙げ、リトルを「真に個性的」と、そしてハバードを「トランペッターが求める全てを正に有している」と最大級の賛辞を送っている。

なお、本作はV・ゲルダーによりデジタル録音されている(1987.6.24)。リアルタイムで聴いた時、薄くて硬い音と敬遠した記憶が残っていますが、改めて聴くと、全盛時代のエグさは無く、キレイ系の音に変わっている。ショーのペットは高音が澄み、撓うように伸び、ターレのtbも結構、エネルギッシュに、”Dat Dere”ではロリンズのアルフィーのワン・フレーズをさりげなく織り込み、豪快に吹き切り、普通に聴く分には上等でALTECも機嫌よく鳴っている。

ショーのライブで一番の思い出は1986年に山中湖で開催された”Mt.Fuji JAZZ FESTIVAL ’86 with BLUE NOTE ”です。フロント・ラインがハバード、ショー、そしてK・ギャレット(as)の3管で”Desert Moonlight”(月の沙漠)が始まると聴衆、総立ちになった。

ショーの「底力」が秘められた絶作。これからだったのに ・・・・・


LOTUS FLOWER / WOODY SHAW

2020-04-12 | Portrait of Woody Shaw

 

過小評価の代表格と言えば、かってはK・ドーハムでしたが、そのあとを継いだのが同じトランペッターのW・ショー。

デビュー以来、トレンドに流される事なく頑なにメインストリーマーとして自分のスタイルを磨き、貫き、フュージョンを演らずスノッブな人達からのバッシング対象にもならなかった。だから、過小と言うよりも不当評価といっていいだろう。その反動からディープなファンも少なくない。

こつこつと地力を蓄え、苦労の末、やっとメジャーのコロンビアに認められ(1977年)秀作、好作を連発し、晩年はプライベートな問題に悩まされ、悲惨な最期を迎える経緯は、本来ならば日本のもっと多くのジャズ・ファンに評価、好まれるタイプなのに、全く不可解です。マイルスという絶対的存在、評価の歪みの一つかもしれない。

本作はコロンビアとの契約が終了した後の最初の作品(Enja 1982年)で、成功のポイントはメンバーが当時のクィンテットそのまま、選曲もなまじっかスタンダードを入れず全てメンバーのオリジナルで固めた所です。A面にターレ(tb)、ミラー(p)、ジェームス(b)が其々1曲ずつ、ショーの2曲を敢えてB面に配したことで曲を取り上げられた3人の働きが見事に全体をボトム・アップし、バンドのエクスプレッションが格段に上がっている。そして強直もしていない。

録音エンジニア、D・ベイカーもソリッド感を持たせながらバンドから放たれるエネルギーを的確にキャッチしている。

余談を、

1981 or 1982年、来日したショー(多分、本作と同じメンバーで)を地元のライブ・ハウスで初めて観ました。残業が入り駆けつけた時は1stステージの終盤でショーのtpはほんの僅かしか聴けなかった。アルコールを飲み過ぎ、べろんべろんになりカウンターにもたれたまま動こうとしない(笑)。他のメンバーが一生懸命ボスの穴を埋めていました。恐らく2ndステージもショー抜きに近い形で行われたのだろう。後でギャラ?の問題で店側ともめたそうです。そりゃ、まずいですよね、自分は終盤だったので半額にしてもらったので・・・・・・・

J・ヘンダーソン(ts)も東京のライブハウスで、ポスターに自分の名がTOPでないとクレームを付け、ドタキャンした話等々もあります。

それはともかく、W・ショーは1989年5月10日死去、享年44。早過ぎます、好きなトランペッターでした。


TIME IS RIGHT / WOODY SHAW LIVE IN EUROPE

2017-08-14 | Portrait of Woody Shaw

 

 TIME IS RIGHT / WOODY SHAW QUINTET LIVE IN EUROPE (RED VPA 168)

WOODY SHAW (tp) STEEVE TURRE (tb) MULGREW MILLER (p) STAFFORD JAMES (bs) TONY REEDUS (ds)
 
 
SIDE 1
 
FROM MOMENT TO MOMENT
TIME IS RIGHT
 
SIDE 2
 
YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
WE'LL BE TOGETHER AGAIN
 
 

1983年6月1日にイタリアのボローニアでライブ録音された一枚、レーベルが伊・REDのためか、あまり聴かれていないけれどなかなかの好盤。

 

取り立てて、新しい試みやキャッチーな演奏もなく、極、オーソドックスな演奏ですが、そごがイイんです。スタジオ録音のように製作コンセプトや演奏時間等の制約を受けず、伸び伸びと自分達のジャズを演り、このグループの良さが無垢の状態で記録されている。また、収録曲が以前の作品とダブらないように選曲されている所もイイ。

一部から、ショーは何を聴いても同じ、と揶揄されていますが、少なくとも本作にはそうした先入観は不必要です。

 

TOPの`FROM MOMENT TO MOMENT’はショーのオリジナルとクレジットされていますが、ハバードの`FIRST LIGHT’に入っている`MOMENT TO MOMENT’と同曲で、正しくはH・マンシーニ作です。

一番の聴きものはラストのC・フィッシャーのオリジナル`WE'LL BE TOGETHER AGAIN’、ラブリーのメロデの後、いつになくスケールが大きく、表現力豊かなソロにショーの本領が浮き上がってくる。

 

pはやや細身ですが、tp、tbは太目に録られた全体のサウンド・クオリティは良好です。 

 

話は変わりますが、

相手の「つき」と言う「魔物」と戦った松山の悔し涙。

一番ホール、J・トーマスの想定外のドタバタに気を取られず、短いバーディ・パットを入れていたならば、・・・・・・・・

また、トーマスの「ころり」というラッキーも・・・・・・・・

「たられば」を言ったらキリがないけれど、世界は知っている、四日間、最高のプレイをしたのは「誰」かを。 


忘れられない`Estate’のフォルティシモ ・・・・・・・・ IN MY OWN SWEET WAY / WOODY SHAW 

2017-08-04 | Portrait of Woody Shaw

 

WOODY SHAW / IN MY OWN SWEET WAY
IN + OUT RECORDS 70033-1

 Recorded live at Bazillus, Zurich, Switzerland on February 7, 1987 and live at Muhle Hunziken, Bern, Switzerland on February 8, 1987

 

パーソネルは、 
WOODY SHAW (tp) FRED HENKE (p) NEIL SWAINSON (bs) ALEX DEUTSCH (ds)
 
 
SIDE A
THE ORGAN GRINDER、IN YOUR OWN SWEET WAY、THE DRAGON
 
SIDE B
JUST A BALLAD FOR WOODY、SIPPIN' AT BELLS、ESTATE

 

生前、過小というより不当評価に近い扱いを受け続け、非業の死を遂げた際、一部のファンからはその死を惜しまれたものの、今ではそれも風化の一途を辿っているようだ。

そもそもショーのようなタイプは、わが国では一番、愛されても良いような気がするが、・・・・・、この国の偏ったジャズ・ジャーナリズム、ファン気質の犠牲者と言えるだろう。本国ではCBSコロンビアと契約できるほどなのに。あのモンクでさえ、小躍りして喜んだ位ですから。

このアルバムは亡くなった1989年、ドイツのレーベルからリリースされており、多分、追悼盤だったのだろう。

‛Live’となっているけれど、聴衆の僅かな反応から推測すると、フェスティバルのような大きな会場ではなく、スモールな場所での録音のようです。それともレコーディング・テクで極力抑えたのかも。

貴重な、所謂「TP・ワンホーン・カルテット」。

 

潤いに富んだ音色で、盟友、L・ヤングに捧げた‛The Organ Grinder’からスタートする深みのあるプレイは米国盤とは一味も二味も異なるショーの側面を浮かび上がらせている。

一曲だけ違う日、会場で収録されたラストの‵Estate’では、原曲の美しいメロディを損なうことなく、ffのワン・フレーズで一気に決めるショーに心を動かされない人はいないでしょう。この一曲を差し込むとは、製作者側は良く聴いていますね。

ショー、Best3の一枚。

自分では「TP・ワンホーン・カルテット」の東の正横綱が ‛THE RINGER / C・TOLLIVER’、本作が西の正横綱。