jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

路傍の石のようだが ・・・・・ 1ST BASSMAN / PAUL CHAMBERS

2021-11-14 | ジャズ ・b

 

VEE JAY LP 3012

TOMMY TURRENTINE (tp) YUSEF LATEEF (ts、fl) CURTIS FULLER (tb)
WYNTON KELLY (p) PAUL CHAMBERS (b) LEX HUMPHRIS (ds)

 

1969年1月4日、チェンバースは僅か33歳の若さでひっそりとこの世を去った。
死因は肺結核という。治療をきちんと受けていたならば恐らく治ったはずだが、彼はそうしなかったのだろう。憶測でものを言ってはいけないが、最早、自分の生きる場所を見い出せなかったのではないか。それほど、ジャズを取り巻く環境は大きく変わっていたのだ。つまり、彼は「ハードパップ」のためだけにこの世に生まれてきたと言っても過言ではありません。
タイトルが示すように録音当時(1960年)、人気、実力共にNo.1のベーシストで、無数のセッションに顔を出している。
本作は、彼の絶頂期に吹き込まれたVEE JAY二作目でリーダー作としては最後となる。一作目の‘GO’はメンバーの知名度もあり、人気を博しているが、本作はやや渋めのフロント陣容のせいか、あまり話題に登ることはない。

内容は平均的なハード・バップ作品で、全曲、ラテーフが提供している。これといったキャッチーな曲もないけれど、個性的な「音」が聴きもので、チェンバースの魅力の秘密を解く鍵の一つとなっている。本レコードは70年台初めに再発された黒ラベル輸入盤で、カッティングの際にややハイ上がりの音質になったものと考えられますが、思わぬ副産物を生み出している。チェンバースのベース・ワークをより鮮明に浮かび上がらせ、ピーンと張った弦から弾き出される天才的な「ハード・バップ」のノリをダイレクトに感じ取れるんです。
「音」の良さや大きさ、或いは革新性は他のベーシストに譲るとしてもこのノリだけは誰も真似の出来ぬ天性のもの。其れが故に60年代後半になるとめっきり出番が少なくなってしまった。

この作品は、荒っぽく言えば「路傍の石」のような存在で、今となっては誰も振り向こうとはしないだろう。けれど、ふと拾い上げ、そっと埃を取ってやればハード・バップの確かな鼓動が聴こえ、稀代の名ベーシストの在りし日を偲ぶのもまんざら無意味ではない、と思う。

(2006.11.19)


哀悼を ・・・・・・・ GARY PEACOCK

2020-09-21 | ジャズ ・b

 

もうかなり前、G・ピーコックとC・ロイドのデュオ・コンサートを聴いた。

異様なステージだった。数十人も入れば今風に言うと「3密」状態の小さなホールで、避難誘導を示す灯りの他、最低限のライトのみ、少し離れた人の顔の識別は難しく、二人のシルエットが辛うじて分かるほど暗い中、知らぬ間に始まり、いつの間にか終わった。一言もなく「瞑想」の世界だった。

今月の初め(4日)、天に召されたそうだ。享年85。

自分にとってピーコックと言えば、当時、ずっと見限っていた(笑)キースを呼び戻してくれたこの”TALES OF ANOTHER”。リーダーでもないのに呻ったり、奇声を発する「傍若無人」なキースをすっぽり包み込むピーコックの奥の深い音楽観が聴きもの。問答無用のピアノ・トリオの傑作ですね。

 

A・アイラーのアルバムに参加した作品を拾い出した。

 

 

演奏が始まると、録音エンジニアが部屋から逃げ出した(いゃ~解りますよね、笑)、と言うエピソードを残した”SPIRITUAL UNITY”、アヴァンギャルド・ジャズの代表的傑作。

 

BLUE NOTE参加作品を。

T・ウイリアムスの”LIFE TIME”と”SPRING”。

両作とも、ジャズ・ドラマーとしての神童ぶりを披露するというより、トニーの現代音楽に近い音楽観、世界観を打ち出し、アカデミックな雰囲気のなか、ピーコックもちゃんと役割を果たしている。好きなアルバム。

 

前回の最後に述べた「夢」は、本当になってしまった。まさか、前日に亡くなっていたとは ・・・・・・・ 間接的だが「虫の知らせ」とでも言うのだろうか。

Rest In Peace、PEACOCK


追悼 その二 ・・・・・・・ HENRY GRIMES & WALLACE RONEY

2020-06-20 | ジャズ ・b

先日、日経新聞に「ジャズ界・・・・・ 黄金期プレーヤーの訃報相次ぐ」の記事が掲載された。

コニッツ、タイナー、コブの他にH・グライムスの名が上り、C・テイラー、D・チェリー等々の作品に多く参加しているためフリー・ジャズの名ベーシストと紹介されていたけれど、コニッツ、タイナー達の作品にも名を連ねている。リーダー作は所有していなく、久々にA・アイラーとの共演作を取り出した。

左の2枚は再発盤”SPIRITS”(1964年・DEBUT)、”SPIRITS REJOICE”(1965年・ESP)で後者のカヴァはオリジナルと左右が反転している。右の”IN GREENWICH VILLAGE”(1966、1967年・IMPULSE)はアヴァンギャルド+サイケデリック文字のハイブリッドで、当時の最先端モードですね。アイラーは半年後に亡くなるコルトレーンへ敬意を表した”For John Coltrane”ではtsではなくasを吹き、あの「ラスト・レコーディング」に通ずるナイーブさに満ちている。

 

 

グライムスはロリンズの公式盤、”AND THE BIG BRASS”(METRO JAZZ → VERVE・BRASS & TRIO)、”MEETS HAWK”(RCA)に参加し、”Summer Time / MEETS HAWK”での太いbソロ、良いですね。

また、この発掘盤2枚にも顔を出し、「イン ストックホルム 1959」のロリンズ節は素晴らしく、この後、帰国して間もなく第一線から身を隠したそうですが、そんな雰囲気は微塵も感じさせません。

なお、グライムス、享年84。

 

W・ルーニーの名はこの新聞記事には載っていなく、別の情報網から知りました。

「マイルスの後継者」等々、結構、話題になった記憶が有ります。本来ならば「マイルスのエピゴーネン」と一蹴されるハズなのに、マイルスの意外?な庇護により持ち堪えたようです。ルーニーのtpは1960年代半ばのマイルスをベースにしており、この作品も”MILES SMILES”、”SORCERER"そっくりのサウンドになっている。弟アントワーヌのtsもショーター瓜二つで、ここまで良くマネできたものだ、と感心するほどです。後半のオリジナルではない曲で個性が出ていますが、マイルス命を信条としているだけに自ずと限界が見えます。でも、本人はそれで良かったのでしょう。

 

 

本作がイングルウッドのゲルダー・スタジオで録音された1991年9月28日、サンタモニカでマイルスは息を引き取った。

ルーニー、享年59。マイルスより6歳若かった。


CHAMBERS’ MUSIC / PAUL CHAMBERS

2020-04-27 | ジャズ ・b

 

その昔、2ndプレス承知で手に入れたSCORE盤。オリジナルのJAZZ WEST盤とカヴァの配色が違い、価格は約1/10以下だっと記憶している。

その時、SCORE盤はかぜひき盤が多いとの情報をまだ知らず、試聴した際、盤質はパーフェクトに近くカヴァと伴にキレイな状態でした。必ずしもSCORE盤=かぜひきでは無い一例ですね。

大方の興味は、チェンバースの初リーダー作、大化けする前のコルトレーン、そして、コレクター好みの幻のレーベル「JAZZ WEST」と言う3点に絞られると思います。

本作はチェンバースが21才になるかならない時に、ロサンゼルスで吹き込まれたもの。マイルス・クインテット在団中で、まだ、後年のような存在感はないが、センスの良さは充分に出ています。注目はコルトレーンですが、この時点ではまだ、ロリンズの影響が見受けられ、有名な「テナー・マッドネス」は本作の二ヵ月後に録音されている。全体的に、典型的なハード・バップ作品で、水準止まりの出来と聴きました。

カヴァと盤質はOKでしたが、音質はどうなんだろう。

カッティング・レベルが高く、モノラルらしい骨太の音ですね。ただ、コルトレーンのtsが聴きなれている音と少し異なりやや詰まり気味です。そこが2ndプレスの悲しいところか。

録音は1956年3月、エンジニアはDON BLAKEとクレジットされ、マトリックスNo.はJWLP-7 SIDE A/B スタンパー・コード?はSLP-4033 A/Bと刻まれている。この辺り、浅学でよく分かりません。

 

 

 


TALES OF ANOTHER / GARY PEACOCK

2019-09-16 | ジャズ ・b

 

初めて名を覚えたジャズ・ピアニストは、パウエル、モンク、エヴァンスではなく、キース・ジャレット。勿論、ラジオなどから流れたピーターソンとワケありのフラナガンは知っていたけれど名だけだった。

ジャズ・ピアノが「こんなにカッコいい」とは・・・・・・、ちょっとしたカルチャー・ショックでした。でも、ロイドから離れたリーダー作3枚(VORTEX)には、あの「才気煥発」なプレイはなく、期待が大きかっただけに、自分の視界からキースの姿は消えた、否、消してしまった、という言い方が正確だろう。

暫くして、ECMから”FACING YOU”(1971年)を発表し、話題になったが自分が描くキース像とはかけ離れており、その後、ソロ・アルバム等で人気を博していたが、殆ど興味は湧かなった。

ある日、いつものレコード店で新譜コーナーの壁に飾ってあった現代アートのカヴァが目に留まり、ピーコックのリーダー作だったが直ぐ試聴させて貰い、一曲目の1/3も終わらない内に決めた。

”Vignette"、誰も足を踏み入れたことがない深い森、樹海を何かを求めるでもなく魅入られるように奥に進むキースとピーコック、そしてディジョネット、底知れぬ世界が広がる。若さに任せた才能ではなく、セルフ・コントロール出来るキースが鮮やかに自分の中に蘇った。あれから、もう10年が経っていた。

 

車で15分位の所に「青猫」というジャズ・カフェがある。インテリア等々、ECMの世界を表現した店造りになっていて、初めてか、二回目の時、このアルバムをリクエストし、CD中心なので「レコードのB・・・・・」と言い掛けた所で、マスターは「Trilogyですね」と、にっこり。

この作品の聴きものはやはりB面を占める”TrilogyⅠ、Ⅱ、Ⅲ”だろう。中でもⅡは、気恥ずかしいほどメロディアスなイントロから一転し、ff(フォルティッシモ)でドラマティックに打ち続けるキース、「お決まり」の展開と分かっていても殺られる。

所有盤は西独製(録音はNY)で、以前は良い録音と思っていたが、改めて聴くと、A面とB面のカッティング・レベルがちょっと違うことに気が付いた。B面が高くpの音がやや詰まり気味に聴こえる。カヴァには1977年2月録音とだけ記載されていますが、ひょっとして日が異なるのか、と調べると同じ2月2日でした。キースの呻き声の他、ハミング声?も盛大(笑)なので、マスタリングの際、減衰させるため何か手を加えたかもしれない。また、バランスがやや右に片寄っている。

なお、コメントするまでもなくピーコックのb、音色もパフォーマンスも素晴らしい。

本作はピーコック名義のためあまり知られていないが、ピアノ・トリオの最高峰と評するファンがかなり存在し、あながち荒唐無稽な話ではないと思う。6年後、このメンバーで「スタンダーズ・トリオ」を結成する礎になるとは、当時、誰も予測していなかった。

 

 


異色にして稀有な快作 ・・・・・・・ SOULNIK / DOUG WATKINS

2018-04-22 | ジャズ ・b

 

その昔、カヴァの変色が酷くクズ値同然で入手した一枚。ワトキンスがBassでなくCelloを弾くという?も手伝っていたのかもしれない。

所が、これがビッグ・サプライズ!

久しぶりにターン・テーブルに。

兎に角、Celloが見事にソロ楽器として成り立ち、しかも驚くほどスイングしている。「何となく堅物」という先入観、イメージは直ぐ消え去る。

NEW JAZZの音の良さは定評がありますが、RVGによる録音がイイ。いい意味でゲルダーらしくないゲルダーの音で、ナチュラルな音の魅力がギュッと詰め込まれている。

そして、演目の良さ。"Confessin’”、"I Remembar You”、"Imagination”が入っていますが、一番の聴きものはB-1、ワトキンスのオリジナル"Andre’s Bag”。哀愁たっぷりのジプシー・メロディ、Celloの音色が信じ難いほどピッタシ決まっている。更にラティーフのfl、H・ローソンの感傷的なソロも泣かせてくれる。どこかでこの曲が流れたら、その場で耳だけでなく体全体がフリーズするでしょう(笑)。

また、ペッパーの名演で知られる"Imagination”、情緒纏綿に弾き語るワトキンスのソロに驚きを隠せません。恐れ入りました。

 

本作は1960年録音でモノラル・カッティングされているはず?と考え、SHURE44G・N44-1(MONOスタイラス)を。音の粒立ち、輪郭はDL-102に比べやや後退するもののアコースティックな心地よい響き、否、香りが部屋いっぱいに広がります。 

時にはグルヴィーに、時にはブルージーに、そしてセンチメンタル、ロマンティックに、ホーン・ライクにどんどん攻めるワトキンスのCello、清らかでインパクトあるラティーフのfl、渋い味を聴かせるローソンのP、これは快作間違いなし。

 

 

 

幻のレーベル「トランジション」の中でも超レア盤の一枚と知られる"AT LARGE”。

 

 

1979年キングからリリースされた国内盤です。ライナー・ノーツでは1955年録音と記載されていますが、1956年12月8日が正しいようです。

イースト・コースト・ジャズの気運が高まった時期にレコーディングされ、今の耳で聴くとやや緩く聴こえるけれど、その後のハード・バップ・シーンを彩る面々が参加している所がポイントですね。ただ、ワトキンスのリーダー作としての存在感はそれほど濃くありません。

RVG・スペシャル・エディション版のCDも持っており、曲順がレコードのA、B面と逆になっていますが、何も言及されていない。

二つを聴き比べると、LPはややハイ落ちでシンバルが奥に引っ込んでいるのに対し、CDはまるで強壮剤を注入したようにエネルギー感が増し、シンバルもちゃんと出て良いのが、何だか50年代が遠ざかっているような気がしないでもない。

因みに、Goldmine誌ではオリジナル盤がNMで$1,200、一方、"SOULNIK”は$60、その差は20倍!ですが、内容は・・・・・・・

 

1962年、自動車事故で他界、享年27。真に惜しい逸材でした。