jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

THE PARIS CONCERT edition two / BILL EVANS

2023-09-22 |  Artistry of Bill Evans

 

暑いからと言って自宅に籠城ばかりして居ると気が変になるので、気分転換にDU名古屋に出掛けた。半年ぶり位です。

アナログはコレと言ったブツがなくCDコーナーへ。在りましたよ、コレが。初版のElektra MusicianではなくBLUE NOTEからのリリースになっているので再発モノ?と、気になりましたが、CDでそこまで拘らなくていいかな。それに780円という価格も大いに魅力ですね。最近、とんと見掛なくなったLPはかなり値が張っているかもしれない。"edition one"と同様、最後期を暗示するようなカヴァ写真です。1979年11月26日、パリのエスパス・カルダン劇場でのライヴ。"two"はエヴァンスのオリジナルを中心に構成されている。TOPの”Re:Person I Knew  ”から”Gary's Theme”への流れが抜群に良く、pの音の透明感にも聴き耳が立ちます。裏カヴァに24Bit/96㎑でマスタリングと記載されているので、その効果が出ているのかもしれません。"one"はもう少し、いい意味で雑味があります。エヴァンスは劇場に備え付けのハンブルグ・スタンウェイの音に感激し、プレイに集中できた旨を記した手紙をわざわざ送ったそうです。

生前、エヴァンスはジョンソン、ラバーベラから成るこのトリオをあの「ファースト・トリオ」に匹敵すると公言していたそうですが、確かにファーストと違うエヴァンスを頂点とした新しいスタイルが完成しつつある。

 

 

"YOU MUST BELIEVE IN SPRING"以来、レパートリーの一つになっている”Gary's Theme”は一音一音がまるでリリシズムの雫のようで相変わらず素晴らしい。また、”WE WILL MEET AGAIN”に収録されている”Laurie”もクインテットではそれ程、魅力を感じなかったけれど、本作ではエヴァンスならではの叙情を弾き出している。もし、”WE WILL MEET AGAIN”がトリオで演奏されていたならば ・・・・・、ひょっとして、この「ラスト・トリオ」にまだ確信を持てず、目先を変える意味も兼ねて2管を入れたのかもしれません。なお、この曲は”CONSECRATION Ⅱ THE LAST”でもTOPに配され、こちらも胸にグッと来ます。

ただ、演奏後、聴衆が過剰反応(笑)しているラストの”Nardis”はどうなんだろう。延々と続くdsソロなんか・・・・・

それはそれとしてこの”THE PARIS CONCERT edition one & two"は所謂、死後の発掘ものの一つですが、音も良く内容も優れている。今更にして、いきなりですが、個人的にエヴァンスのBEST5の一枚に挙げたい。


ベッドよりステージを ・・・・・CONSECRATION & Ⅱ- the last / BILL EVANS

2023-08-10 |  Artistry of Bill Evans

1980年9月15日、大量の血を吐き病院に運ばれたエヴァンスは救急室のベッドから起き上がることなく、午後3:30、NYの空へ飛び立った。享年51。ジャズ評論家で友人の一人の言葉を借りると「音楽史上最も長くゆっくりとした自殺」と言われる。

目前の20日から日本公演が予定されていただけに、まさか!と。仕事(残業)の関係上、どうするか、見極め状態中のニュースであった。

 

 

死の直前、シスコの「キーストン・コーナー」でのライブ音源(8/31~9/7<一説には8?>)。1989年になって日の目を見た発掘盤もの。色々なヴァージョンがあり、ちょっとややこしいけれど、今回、UPしたカヴァ2種(上は2枚組)が、Alfaレコードの初版CDです。

 

 

この音源は曰く付きのもので、当初、M・ジョンソンは、録音されていないとか、録音されているとは知らなかった、とコメントしているけれど、この音のクオリティからしてマイクが立てられていないのは不自然だし、また、楽屋裏でテープが回っていることに気が付かないほど目が節穴ではないだろう。ラストものになると利害関係が複雑になる典型ですね。

 

 

 

大まかに言うと全部で133曲録音され、まず最初(1989年)に15曲(CONSECRATION)、半年後に8曲(CONSECRATION Ⅱ)が選曲、リリースされた後に68曲8枚組BOX・セット「CONSECRATIONーThe Last Complete Collection」、更に65曲8枚組BOX・セット「THE LAST WALTZ-THE FINAL RECORDINGS」がリリースされている。

TOPに選ばれた曲は知らぬ者はいない”You And The Night And  The Music”。縺れる指先、途切れるイマジネーション、ズレるテンポ、そしてそれを打ち消そうと鍵盤を強く弾くエヴァンスの気魄がこのキーストン・コーナーでのステージの全てを物語っている。そして全23曲、エヴァンスのハード・ボイルド魂で貫かれている。

DISC2ー3のマンシーニの「酒バラ」が目を引きますね。リズミカルにスキップするpはちょっと意外な感がしますが好きなプレイです。ひょっとして”The Shadow Of Your Smile”、”I Left My Heart In San Francisco”でも演奏されていないか、残念ながら133曲の中にはありませんでした。

選曲、曲順、共によく吟味されており、自分が一番好きなパートはⅡのラスト3曲の流れです。G・マクファーランド作”Gary's Theme”、晩年期の愛奏曲の一つでエヴァンスは<ゲーリーズ・ワルツ>とも呼んでいたそうです。”You Must Beliebe In Spring”でも演奏されているリリシズムの結晶、大好きな曲です。続く”Bill's Hit Tune”、”We Will Meet Again”で初めて録音された明るく希望に満ちたオリジナル・ナンバー。そして最後を締めるのはオリジナル曲の”Knit For Mary F”、この曲はDISC1にも入っているけれど、このヴァージョンはラストのラストに相応しく、荘厳ささえ湛えている。だから、敢えてダブらせたのだろう。素晴らしい選択、決断ですね。

この作品は特段、弁護士の耳で聴くまでもなく、その特性を積み重ねると「一家に一枚」のレベルを優にクリアしてくる。

体調が少しでもマシになり、もし、幻となった日本公演が開催されていたならば、記録にも記憶にも残るステージが生まれたかもしれない。

病院のベッドよりライブのステージを選んだエヴァンス、51歳の何倍かの人生を歩んだのだろう。


期待通りには? ・・・・・ BLUE IN GREEN / BILL EVANS

2023-07-12 |  Artistry of Bill Evans

 

理由は無いけれど、いつの間にか昨年末から年始にかけて随分通ったDU名古屋にバッタリ行かなくなった。新しく購入したレコード・CDは無く、これでは寂しいと思いつつ、この暑さに出掛ける気にならない。車で一番近くのBook-Offに。

1974年8月にカナダのキャンプ・フォーチュンでのコンサート録音で1991年にリリースされた音源。この手で一番、気になる「音」ですが、歴としたレーベル・Milestoneなので良好と、また”One for Helen”、”So What”、そしてタイトルとなった”Blue in Green”が聴き物で内容も良い、との街の噂を得ていた。

1974年と言えば、前年に初来日し東京でコンサート録音、年初めに”Village Vanguard”でのライブ録音”SINCE WE MET”、そしてMPS盤と好調を維持していた時期なので、本作も破綻なく安定したプレイを披露している。

ただ、このメンバーでの慣れ、マンネリ感がどこそこ否定できないのも事実。しかもゴメスのbがラフに録られ、中でも”Very Early”での長目のアルコ・ソロはちょっと勘弁して欲しいレベルですね。

聴き物と言われる”So What”、”Blue In Green”もオリジナルのイメージが強すぎるのか?、トリオではもっとアレンジを捻らないとインパクトが弱まります。

平均点はクリアしているけど、期待はもっと大きかった。

なお、カヴァのドローイングはあの歌手、トニー・ベネットが描いたものです。ベネットは画家としても一流でAntonio Benedettoの名で知られているそうです。

翌、1975年に共演作”The Tony Bennett-Bill Evans Album”をFantasyに録音している。

 

 


なんという巡りあわせでしょうか ・・・・・ THE PARIS CONCERT EDITION TWO / BILL EVANS

2023-01-21 |  Artistry of Bill Evans

 

久し振りにJAZZ茶房「青猫」に出かけた。もう5、6年以上?行っていない。直線距離では近いのですが車で行くとちょっと駐車が面倒で、バス、地下鉄を乗り継ぎ、そして徒歩では・・・・・ まぁ、そんな事を言っていては耄碌しますね。念のためNetで確認すると、健在でした(笑)。

地下鉄藤が丘駅から、北へ緩やかな坂を7~8分下るとビルの1Fにさり気なくこの看板が立ててありますが、見過ごし易いですね。でも、それが良いんです。店舗はB1にあり、ざくっと画像で紹介します。

 

 

 

 

こちらはリスニング・コーナー、いい感じでしょ、落ち着きます。以前より照明が明るく?なっているかも。SPはJBLですが、モデルは変わったのかな?ちょっと自信がありません。

 

 

定位置のシートに座り、コーヒーが運ばれると、流れていたCDが変わった。え、エヴァンスかな?と振り返ると、何となんと!”EDITION TWO”ではありませんか!前回、触れませんでしたが、当然、”EDITION TWO”は視野に入っている。それがこんな形で直ぐ目の前に、とてもサプライズ如きではありませんよ。マスターは何もかもお見通しなのか? まっ、それはないでしょうけど(笑)。しかし、あまりにもタイミングが良すぎますよね。全てバレているのかな、まさか ・・・・・

それはともかく、二曲目に”Gary’s Theme”が流れた。この曲はあの”YOU MUST BELIEVE・・・・・”にも入っており、目立たないけれど一番好きな曲です。エヴァンスはこの一曲以外は”YOU MUST BELIEVE・・・・・”に収録された曲をパリ・コンサート Ⅰ 、Ⅱで取り入れていない。流石ですね。

”WE WILL MEET AGAIN”で予兆があったけれど、確かに変わった。一音、一音の間の取り方が良い時に戻っている。ただ、残された時間は、一年を切っていた。

 


これは事件ですよ ・・・・・ THE PARIS CONCERT EDITION ONE / BILL EVANS

2023-01-12 |  Artistry of Bill Evans

 

10点以上なら査定10%UPに釣られDUへ。運動不足解消を兼ねて外出するモチベーション・アップにしている。今回はレコード7点、CD3点、計10点で5千を越えた。10%UPってバカにできない。稼ぎ頭はJ・スミスのBLUE NOTE 4011・NY盤 MONO で3千をクリアした。でも、他は、厳しいね。ただ、データーから確りと査定しているのでしょう、ほぼ納得出来ますよ。何らかの付加価値?の有無で随分、左右されますね。D・ザイトリンのライブ国内盤が意外に高査定され、反対にCDが二桁とは、驚きです。ケースにすり傷が多いと減点大ですが、アナログ・ブームの影響でしょうか。

帰りに購入したエヴァンスのCD。死後の1983年にまずレコードで発表され、CDは後のようです。

エヴァンスは一般的にあの起死回生の逆転満塁サヨナラホームラン”YOU MUST BELIEVE IN SPRING”の一発でハッピー・エンドと思っていたら、いやいや、真打が控えていましたね。年代層が入れ替わり「起死回生」ってなに?、と訝る方も少なくなさそうですが ・・・・・・ 話が長くなるので割愛します。

通常、ライブ演奏となると、プレイヤーとオーディエンスの間でコミュニケートする空気感のようなものが漂うものだが、本作はそうしたものが希薄でエヴァンスはプレイに没頭し、聴衆は邪魔せず見守るという構図が会場を覆っている。勿論、曲毎に盛大な拍手が送られているけれど、不自然でいっそのこと、ない方がいいんじゃない、とさえ思う。予備知識が全くナシで聴き、違和感を覚えたので調べると、本作は1979年11月26日、パリのエスパス・ピエール・カルダンという劇場で録音されている。やはり、クラブとの違い(距離感)がはっきりと出ています。録音はフランスのラジオ放送局がしていますが、何とリ・ミックス・エンジニアがコロンビアの名録音で知られるF・ライコ、マスタリングがS・ロメインとクレジットされ、このコンビ、他にもあった記憶がしますが、失念しました。

後期のエヴァンスのpの音は、本人が意図したのか、どうなのか、分かりませんが、高域が多用され、キラキラした音のイメージが残っているけれど、本作では落ち着いた深みの有る音に変わっている。出だしのワン・フレーズで直ぐ分かります。エヴァンスの本質でもあるハード・ボイルド魂も蘇っている。pは劇場ホールに備え付けのハンブルグ・スタンウェイでエヴァンスがとても感激したそうです。だから、プレイに専念出来たのかもしれない。

一度、8曲全部聴き通し、再度、聴き直した。そんな経験、最近、記憶にありません。命と引き換えても追い求めた「エヴァンス流美学」の到達点は全キャリアの内で極めて高い。中でも、7曲目”All Mine(Minha)”は3分48秒と短いけれど、まるでリリシズムの結晶。もっと聴きたいなぁ~

100円のお年玉クーポンを使い、何と580円。コーヒー一杯並みって、もう、事件以外何物でもない。こんなことは許されないぞ(笑)。


数より熱量 ・・・・・ UNKNOWN SESSION / BILL EVANS

2022-08-13 |  Artistry of Bill Evans

 

聴く前からグッと引き込まれるミステリアスなタイトルとカヴァ。

録音テープの存在が一部を除き明確でなかったのか、日本のビクターがこの単体レコードの形でリリースしたのは録音から21年後の1983年。

もう少し遅く、吉祥寺のご領主様がジャズ文壇に登場した時期後にリリースされたならば、このタイトルではなく、”MEETS ZOOT”、或いは”WITH ZOOT”になっていたかもしれません(笑)。

ちょっとしたZOOTブームが沸き上がった中、便乗的に本作の評価、人気が上がったか、と言えば、不思議なことにそうならなかった。勿論、レギュラー作品でなかった経緯かもしれませんが、エヴァンス・ファンは思いの外、冷静だった。

中には、「ズートはゲッツではなかった」とする見方もありますが、ゲッツとのセッション(VERVE)もお蔵入りになっているので一発回答ほどの説得力を持たないけれど、当たらずとも遠からず、のラインは越えているのではないか。詰まる所、相性の問題と思う。強いて技術、演奏面で探せば、ズートの特徴の一つである啜り上げるような下町ぽいフレージングとエヴァンスのpとの調和の度合いです。

もう一つ、不幸なワケは、エヴァンスの不純な動機(金目当てとされる)により録音された所でしょう。リリースすれば、ひょっとしてその動機が表沙汰になるリスクを恐れたエヴァンスが自ら闇に葬った(笑)、とする推理もまんざら荒唐無稽ではありません。逆説的に言えば、リスクを冒してまでリリースするほどの出来ではない、と自覚したのでしょう。

ただ、タイトル、カヴァ、成り立ち等々、何一つ華がなく「陰」のイメージが強いものの、隠れた魅力を探り出し、支持するファンの熱量はその数ほど少なくない。


屈指の名盤に成り得たのに ・・・・・ THE TOKYO CONCERT / BILL EVANS

2022-08-05 |  Artistry of Bill Evans

 

エヴァンスの初来日のコンサート録音(1973.1.20 )の割に巷の評価、人気はそれほど高くない。出来が悪いわけではないのに。元凶は朱のカヴァ、将又、むさ苦しさを漂わすロング・ヘアか? 

米FANTASYの初版もの(1974年リリース)はSONYのオリジナル国内盤(”LIVE IN TOKYO”)とタイトルが微妙に異なります。少しでもエキゾチックな雰囲気を出そうとしたのでしょうが、笑える冠(デザイン)です。

で、指折りの名盤に成り損ねた理由は何かと言えば、100%独断ですが、選曲でしょう。

全9曲、59分の長丁場、最後の2曲”Gloria’s Step”(7:56)、”Green Dolphin Street”(6:47)は盛り過ぎと思います。ステージでは必要でも、レコードではそうでないものもあり、折角、来日記念にありがちなヒット曲オン・パレードを避け、”My Romance”を除いて日本で初演、それに近い曲で構成され、従来のライブものと違うエヴァンス像を築き上げているのに最後の最後に緩手が出ちゃいましたね。

”Yesterday I Heard The Rain”の「皆さん、雨音が聞こえるかい?」と、会場の一人一人に語り掛けるようなバラード、C・フィッシャーの”When Autumn Comes”のメランコリックなメロディにさりげなくリリシズムを織り込む表現力は他の誰も足元にも及ばない。マイルスのミュートと同じですね。他の”Mornin’ Glory”、“Up With The Lark”、”T.T.T.T”、全部良いではありませんか。”My Romance”もゴメスのアルコは如何なものか、と思いますが、ライブならでは演出とポジティブに捉えたい。

選曲はエヴァンスが決めたはずで、”AT TOWN HALL”では曲数を絞り過ぎるほど完璧主義に徹したのに・・・・・、ゴメス(b)とモレル(ds)の進言でピアノ・ソロに急遽、変更した7曲目”Hullo Bolinas”までで押さえておけば、我が国が世界に誇れる傑作”THE TOKYO CONCERT”(LIVE IN TOKYO)が誕生したでしょう。

なお、このFANTASY盤、元の録音が良いのでしょう、やや腰高ですがいい音してます。我が国の技術陣、さすがですね。一方、CD(SONY マスター・サウンド)はダイナミック・レンジが広く、前に音がせり出してきます。

 


曲順の妙 ・・・・・ AT TOWN HALL Vol.1 / BILL EVANS

2022-07-31 |  Artistry of Bill Evans

 

 

不思議な作品だ。評論家達もファンも挙って褒める。しかも一様に。

話し声やグラスのぶつかる音でブチ切れ、「黙れ!」とばかり鍵盤をガーンと叩いた前科があるエヴァンスにとって、雑音と無縁のコンサート録音は望むところ、カヴァが内容を物語っている。しかも、その象徴たる曲がコンサートの前に急死した父への鎮魂歌を含むソロ演奏となれば、誰だって最大級の賛辞を贈るだろう。

でも、BEST作、人気作のアンケートでは上位にくることはまずない。「エヴァンスはトリオ」に限る、と力説するファンでさえ。

オリジナルの曲構成は

A面、”I Should Care”、”Sprihg Is Here、”Who Can I Turn To”

B面、”Make Someone Happy、”SoloーIn Memory Of His Father ・・・・・、の5曲

最初に聴いた時、質の高さに「さすが!」と膝を打ったものの、心の隅で量的に欲求不満を覚えた。A面3曲でトータル15分強とやや短め、B面は17分とまずまずですがソロが13分を占める。つまり下種の耳は質より量を求めたのだ。暫くすると「ベスト・オブ・ビル・エヴァンス」というオムニバス盤がリリースされ、何と未発表の2曲が含まれていた。出し惜しみなんかしなくてもいいのに、Vol.2はどうなるのか?と思いつつそのままになった。

当時、LP片面の収録時間の制約と我慢していたが、80年頃? ポリドールからその2曲が入ったLP国内盤がリリースされたのだ。いやぁ~、待った甲斐がありましたよ。やればできるではないか!(笑)

さぁ、ここからが本題です。

その2曲”Beautiful Love”(6:47)と”My Foolish Heart”(4:43)がA面ラストとB面トップに差し込まれた。

 

 

この何気ない順が絶妙な働きを見せる。A面は3曲が4曲になったことで満腹感が得られたと同時に”Beautiful Love”はアンコールに演奏されたらしく、まるでコンサートの第一部が終わったような気分になる。そしてB面は静かに”My Foolish Heart”で始まり、最高の出来を聴かせる”Make Someone Happy”に続き、そしてソロへ、この流れが実に好ましい。もし、ポリドールの技術担当者がただ単に演奏時間だけでなく、聴き手の心理を読み取り、差し込み順を決めたならば表彰ものですね。とにかく、この2曲が加わり印象がガラッと変わりました。

なお、この2曲、違うマスター・テープを使用しているのか、音が若干くすんでいるけど、ほとんど気にならない程度です。元の5曲の音は上等です。

さらにもう一曲、未発表の曲、”One For Helen”が加えられたCDもリリースされていて、そちらは世間の声を忠実に守り、尻尾に3曲、纏めて挿入されている。

好みは人それぞれですが、LPの方は”Beautiful Love”で針を上げ、裏返しの休憩タイムを挟み、今度は”My Foolish Heart”で第二部の幕が上がるという儀式が半世紀以上前のNYのコンサート会場にいるような錯覚を呼び起こす。些か手応えの緩い”My Foolish Heart”ですが、このポジションで俄然、生きてきます。

独断ですが、この国内盤LP(23MJ 3039)ならエヴァンスのBEST作上位に挙げるファンが増えてもおかしくないでしょう。普段はオリジナル仕様を尊重していますが、今回は例外です。エヴァンスにしては本意でないでけれど。自分にはオリジナル曲だけでは少々高尚ですね。

ところで、巷では未発表なら「何でも出す、出る、買う」と言う風潮が強いけれど、リリースされていないVol.2の未発表分は果たして日の目を見るのでしょうか? 噂ではビッグ・バンドとの共演らしい。素性の分からぬ音源発掘より、出来の良し悪しを問わず、業界を挙げて高いハードルを越えて欲しい。

 

 


烙印を剥がす ・・・・・QUINTESSENCE / BILL EVANS

2022-07-17 |  Artistry of Bill Evans

 

今でこそ「神様、仏様、エヴァンス様」と崇められるほどの人気ですが、本作が録音(1976年)され、リリースされた1977年辺りでは、すっかり存在感が薄れ、One Of Them的に地盤沈下していた。少し前から「そろそろやばいな」と感じていたけれど、「もうあかんなぁ」と烙印を押した一枚。ランド?、バレル?、そしてブラウン?メンバーを見たとき、目先を変える意図は理解できますが、何か異質な人選に期待より不安が先に走った。

いきなり、一曲目の”Sweet Dulcinea”の高音を多用し、キラキラした茶らしいpに幻滅。これじゃ~、カクテル・ピアノと揶揄されるのも止むを得ない。おそらくエヴァンスは時流に合わせようとしたのだろうが、もし、そうなら、ベテランを配するよりバリバリの若手をサイドに呼ぶべきだったのではないか。朝靄のカヴァが全てを物語っている。それにしてもQUINTESSENCE(真髄)とは・・・・・ 

と、言うのがリアルタイムで聴いた時の印象で、それ以後、ずっと二軍暮らしが続いていた。

先日、臨時に一軍に昇格させ、久し振りにターン・テーブルに乗せた。

年齢と伴に寛容の度合いと嗜好の範囲が膨らんだのか、昔、あれほど茶らしく聴こえたpに拒絶反応が出ず、一枚通して聴くことが出来た。B-1の”Child Is Born”のエヴァンスのピアノ・タッチに聴き惚れる始末です。この曲は録音がよくFANTASY時代で一番いい音かな?  ランドは涸れ過ぎ(笑)ですが、居場所が定まらない気配のバレルが聴き込むにつれて良いパフォーマンスを展開してますね。

もういいでしょう、「烙印」を剥がしましょう。

ただ、ブラウン(b)にもう少し配慮されたならば、もっといい結果がでたのではないでしょうか。プィと横を向き、ご機嫌斜めの写真(裏カヴァ)がリアルです。

なお、エヴァンスのアレンジャーとしての意欲作とフォローする向きもありますが、ラストの”Bass Face”を聴けば、残念ながらアレンジャーの才は凡と分ります。

 

 

 

 


アーティストとしての戦い・・・・・SYMBIOSIS / BILL EVANS

2022-07-06 |  Artistry of Bill Evans

 

 

並大抵は勿論、自称「エヴァンス・ファン」の方でも、この作品を所有している確率は決して高くないだろう。

まるで「日本のマーケットなど相手にしていないよ」と頑ななエヴァンス・ファンを嘲笑うかのようなカヴァで、更にまたC・オガーマンのオケ付きとなれば、エサ箱で見つけても手を引っ込める可能性が高いのではないか?

ただ、MPSレーベルに気を留め、勇気を出しカヴァ(国内盤)を裏返し、データに目を通すと考えが変わってくる。1974年2月11、12日、NYのColumbiaレコードのスタジオで録音され、エンジニアがあのフランク・ライコと言うクレジットを見ると、がぜん、別の意味で好奇心が湧いてくる。これでは実質、Columbiaのレコードではないか(笑)、さて、音はどうだろう。

 

 

所有している盤は国内盤なので正確ではないけれど、少なくともColumbiaではなくMPSの音になっている。

で、内容はどうか、と言えば、100%個人的好みですが、SIDE1(1st movement)、SIDE2(2nd movement)、どちらもエヴァンスのp(アコーステイック)がたっぷり聴けるパートaで充分かな。1965年の共作”With Symphony Orchestra”ではC・テイラーがツボを心得たプロデュースに当たっている一方、本作は残りのパートがオガーマンの世界が濃く出過ぎているようで、しつこいリフ・フレーズが馴染めない。勿論、こちらの耳がタコなのかもしれないけれども。それはともかく、何も知らず、初めてこの両パートaのエヴァンスのpを聴かされたら、本作への偏見はきっと変わるでしょう。

本作に寄せたエヴェンスの言葉が、

「このやりがいのある作品を制作したMPSに心から謝意を表すと共に、記憶に値する重要作品を書き、初演ピアニストとして三顧の礼を以って私を選んでくれたクラウス・オガーマンに対し、深甚の感謝と敬意を表すものである。」

エヴァンス・ファンの中には、「余計なチャレンジなんかする必要はない。ピアノ・トリオだけで十分で、それもラファロとのヴィレッジ・ヴァンガードのラインなら最高」と思っている方が少なくない? もし、そうなら、エヴァンスは半生、そうした有言・無言の圧力と戦ってきた訳で、アーティストとして、やりきれなく、そりゃ、長生きできないでしょう。