jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

無名盤 、されど個人的傑作・・・・・CANYON LADY / JOE HENDERSON

2024-02-16 | ジャズ・ts

 

もう一枚、ジョー・ヘンにお付き合いを。以前、拙HP”BLUE SPIRITS”で本作をUpした際、「TOPの‘Tres Palabras’を聴くと、こりゃ、演歌ですよ」と、頓珍漢なコメントをしている。つい最近、この曲がキューバの作曲家、オスヴァルド ・ファレスが書いた名曲と知りました。正に浅学の極みです。

本作の録音は73年ですが、リリースされたのは75年、この頃はもう「ジョー・ヘンは何処へ行ったの?」とジャズ・ファンの記憶から遠ざかっていた上に、軽目のカヴァが災いしたのか、関心度が薄い一枚だった。ただ、多重録音とかマルチ・リードで演奏するのではなく、本来のts、一本に絞っている所に好感が持て、ダメもとで拾った記憶があります。

 

 

当然のことながらパーカッションを利かせた有り触れたラテン・ジャズではなく、ファンクのスパイスを濃い目に絡ませ、時代性を確りと取り込んでている。ただ、そこにルイス・ガスカがアレンジする‘Tres Palabras’の演歌ブルース(テーマ部分)が入り込むと、多国籍・ごった煮を連想しますが、一本筋が通ったジョー・ヘンのtsが見事に吹き消している。
泣き節の後、テンポを速めたジョー・ヘンのtsが実に心地良く飛び出す。所々、ハッタリを効かせながら流動感を持たせ、「起・承・転・結」が見事に整ったソロは出色の出来です。それに音がイイ! CA、バークレーのファンタジー・スタジオで、Jim Sternというエンジニアの手で録音されていますが、ジョー・ヘンの「音色」が抜群。BNの重量感ある黒さと異なりタイトで澄み切り、それでいて密度が濃い黒さです。

B面の二曲も、J・Heardの鼓膜を強く刺激する図太いファンク・ベース、小気味よく煽るパーカッションとリズムに乗って、時折り、ダーティさを醸すジョー・ヘン節が炸裂する。それにしてもtsの鳴り具合は全キャリアの中でも指折りです。また、タイトル曲でのG・DUKEのエレピも、メリハリがあって聴かせます。
ただ、A-2のオリジナル‘Las Palmas’はやや考え過ぎ、消化不良で、B-2のラストのパーカッション・ソロは付け足し気味で長過ぎます。この辺りが上手く調整されていたならば、と思います。

このアルバムは当時の米国のジャズ・アルバムで27位にチャートインしたそうです。因みにショーターの”NATIVE DANCER”は16位とのこと。両作品の狙い所は異なるけれど、我が国の世評は月とスッポン以上の差がある。その点、本国は違和感がありませんね。個人的にも”CANYON LADY”が断然、月です。いい歳して、また、メデイァ、世間に楯を突いちゃいました(笑)。

田中禮助氏の言葉を借りれば「粗にして野だが卑ではない」ジョー・ヘンのtsが壮大に鳴り響く。

”Bluespirits20100608”


堅忍不抜・・・THE STANDARD JOE / JOE HENDERSON

2024-02-09 | ジャズ・ts

 

VILLAGE VANGUARDでのライブ録音Ⅰ、Ⅱは、少なからず「御祝儀」の香りがするものの、概ね絶賛を得た。問題はその後の二作目。ところが、何故かBLUE NOTEが二作目の録音を計画した形跡がない。正確には、しなかった、出来なかったのだろう。A・ライオンは亡くなる前、このⅠ、Ⅱをすごく気に入り「BLUE NOTE史上最高のセッション」とまで断言したそうです。ま、よくある話で仕事、人生の区切りを付ける称賛の一種で額面通りに受け取るか、どうかはともかく、言葉だけが独り歩きし、関係者には天の声に聞こえただろう。事実だけを言えば、ライオンは1987年2月2日に他界している。

ジェノバのライブ盤”AN EVENING WITH・・・”(1987年7月)から4年近くが経ち、本家本元のBLUE NOTEの動きを窺っていたREDは痺れを切らし(笑)、1991年3月26日、NYに出向きスタジオ録音した作品。

タイトルは、”THE STANDARD JOE”。このシンプルにしてストレートなタイトルはREDがジョー・ヘンの好調さをずっと把握していたことの証に他ならない。

 

定番スタンダードの”Body & Soul”の他はジャズ・スタンダードとジョー・ヘンのオリジナルの構成だが、REDは彼の特性を見抜いてる。もともと、スタンダードを始めバラード、ボサノバ、ラテン系等々、上手く料理する優れた才能を持っており、60年代のBLUE NOTE時代のゴリ押し新主流派のイメージが強いけれど、タイプとしては隠れGETZ派と勝手に思っている。

TOPに人気ナンバー”Blue Bossa”を、オリジナルを挟み真ん中に美味しい3曲を、最後に決め曲”Body & Soul”の別テイク、と配列も吟味している。中でも”Take The A Train”ではハーレムへ向う逸る気持ちを巧みにフェイクするスキルが聴き物。全7曲、69分53秒、期待を決して裏切らないモダン・テナーの最上級のパフォーマンス、髄が詰っている。また、録音(CD)も良く、ジョー・ヘンとREDは相性がいいですね。個人的な欲を言えば、”I Remember Cliffrod”、そして、彼はC・ポーターの曲が良く合うので、例えば”I Concentrate On You”あたりでも加わっていれば、もう、言う事なしです。

この作品をジョー・ヘンのキャリアと重ね合わせると、柄にもなく四字熟語で表せば「堅忍不抜」が浮かんでくる。本作も我が国のジャズ・メディア(ジャズ本も含め)はよそ者REDに冷たく、あまり知られていない。

噂を聞き付けたVERVEは透かさず、彼を迎い入れ、一作目はグラミー賞(1992年)に輝いたが、VERVEの資金力に物を言わせた出来レースに近く、あの”Naked”な ジョー・ヘンの姿は影も形も消えていた。不遇時代が一番、充実していたとは・・・・・・、よくあるケースですね。それにしても、本当の不遇時代のジョー・ヘンを裏で支えたREDの功績は大きい。


正真正銘の名演 ・・・・・ AN EVENING WITH JOE HENDERSON , HADEN , FOSTER

2024-02-02 | ジャズ・ts

 

 

ジョー・ヘンの後半のキャリアは1985年、新生BLUE NOTEにVillage Vanguardでのライヴものを録音し、それまでの不遇と言う長いトンネルを抜け、ジャズ・シーンの表舞台に舞い戻った、というが通説となっている。

「完全ブルーノート・ブック」にこのVillage Vanguardでのライヴもののレビューが載っている。「ロリンズの1581を約30年後に全く同じ趣向でそれを凌がんとする傑作を残したことに、言葉も出ないほど感動を憶えたファンも多いはず。彼にとってのマイルストーンであるばかりではなく、80年代ジャズをも代表する1枚」と、最上級の賛辞が送られている。新生BLUE NOTEの再スタートとジョー・ヘン復活への花束贈呈にいちゃもんを付けるつもりはさらさら無いけれど、腑に落ちなかった。名演、名盤を義務付けられたジョー・ヘンのtsは悲しいかな委縮していた。

本当の不遇時代は、むしろ、皮肉にもこの後、1992年にVERVEから新作”LUSH LIFE”をリリースまでの7年間ではないか。その不遇時代に手を差し伸べたのが、イタリアのRED。REDはBLUE NOTE盤を確りと分析し、ジャズ・クラブとは逆に開放的なジェノバ・ジャズ・フェスティバル(1987年7月)のステージを用意した。

”AN EVENING WITH JOE HENDERSON, CHARLE HADEN, AL FOSTER”、ジェノバの夏の夜空の下、ジョー・ヘン、会心のプレイを聴くことができる。それにしても、この夜のジョー・ヘン、余程、調子がよかったのでしょう、肩の力が抜け、自由自在にtsを鳴らし切っています。

収録曲はお馴染みの4曲。モンクの‘Ask Me Now’、オリジナルの‘Serenity’、S・リバースの‘Beatrice’、そしてジョー・ヘン、18番の‘Invitation’。
中でも‘Serenity’における一気に畳み掛けるようで、見事にコントロールされたソロ・ワークは圧巻! お得意の‘Invitation’では余裕あるアドリブを披露してくれます。

ただ、イタリア盤なのか、一部のファンを除き、広く知られなかった事が真に残念です。我が国のジャズ・メディアはもっとファンに伝えればよかったのに。

録音も良く、ライブというハンディをまったく感じさせず、ステレオ録音とクレジットされているが、ほぼモノラルに聴こえ三者が一丸となっている点がイイ。少しパワーを入れると、臨場感がすごく、ステージの真ん前でかぶりつき状態です。

 

”Bluespirits 20130310”


異様なカヴァだが ・・・・・ SPEAK NO EVIL / WAYNE SHORTER

2024-01-13 | ジャズ・ts

 

偶々、ジャズ・カフェ「青猫」の近くを通ったので、寄ってみた。一番、静かな時間帯(3.30~)なのだろう、リスニング・コーナーの定位置が空いていた。一年ぶり?かな。早いものですね。ピアノ・トリオが掛っていたけれど、誰か分からない、メルドー? でもちょっと甘いかな? 次はK・ホイーラー、K・ジャレットの”GNU HIGH”、好みのアルバムではないけれど、自宅と違ってECMぽい空間で聴くとそうでもない。だけど、ホイーラーの取り澄ましたflhは好きになれないなぁ。ま、反アメリカ・ジャズを標榜するアイヒャーの好みなんでしょう。次もECMか、と思ったらBLUE NOTEだった(笑)。

本作は64年の12月24日に録音されているが、実は前の月の2日、イングルウッドのゲルダーのスタジオには、エルビンではなくビリー・ヒギンスがdsに入った同じメンバーが集まっていた。しかし、ライオンは3曲(本作収録曲)を録音しただけで中止し、その3曲をRejected(廃棄)している。
これは、あくまでも個人的推測だが、ハバード、ショーター、ハンコック、そしてカーターからなるこの強力な布陣を支えるのに、ヒギンスのdsではやや物足りなかったのか、それとも、もっと上を狙ったのではないか? とは言うものの、トニー・ウイリアムスを持ってくるわけにはいかず、そうなればエルビンしかいない。そしてライオンのこの予定変更はものの見事に的中している。

怪しげな写真と意味ありげなタイトルに、この印象的な「キス・マーク」のアルバム・カヴァーだけでもただ物ではない雰囲気が漂っている。全曲、ショーター作ですが、改めて聴き直すとさほどオカルト・ムードを感じない。最良のメンバーに囲まれ、いつになく自然体で吹き鳴らすショーターが居る。

本作は上述の如く、わざわざイブの日に仕切り直ししただけあって、用意周到なソロ構成と30テイク(オルタネイト・テイク、1曲含む)に及ぶ慎重な録音作業から成り立っており、一曲一曲の完成度が高く、隙のない傑出した出来映えとなっている。ショーターの他のリーダー作とは、今ひとつ波長が合わないけれど、発掘盤”ETCETERA”と本作は例外で聴く頻度が高い作品です。

ライオンが“SPEAK NO EVIL”(4194)、“MAIDEN VOYAGE”(4195)、BLUE SPIRITS”(4196)を連番としたのは、 単なる偶然だったのだろうか? いやぁ~、ライオンの性格から推測すると、偶然ではなく、意図的であることに相違ない。  キー・マンは当時、マイルスに続くポジションに躍り出たハバードだろう。

”bluespiritis” 20050330


59年のロリンズは? ・・・・・もう最高!

2023-06-14 | ジャズ・ts

 

通説では”CONTEMPORARY LEADERS”(1958年)を最後に”THE BRIDGE”(1962年)まで所謂「雲隠れ」とされていたけれど、1984年にドラゴン・レコード(スエーデン)から1959年の音源”St Thomas / SONNY ROLLINS TRIO In Stockholm 1959”がリリースされ、世間をアッと驚かせた。しかも内容が、これまた、極上でお馴染みのナンバーが続く中、ロリンズのアドリブの神髄が凝縮されている。この後の所謂「音楽的行詰り?」なんて無責任な推測を微塵も感じさせない自信に満ちたプレイの連続です。

トップの‘St Thomas’(NALENでの別ライヴ)を除き、スタジオ・ライブ(6曲・放送用)で、音質は、”St Thomas”を除き、放送局のスタジオで収録されただけに、充分以上に聴けます。曲毎にロリンズのナレーションが入りますが、好みは人それぞれでしょう。

 

 

もう一枚、6年後、1990年にMOONレコード(イタリア)からリリースされた”SONNYMOON FOR TWO”

タイトルになった”SONNYMOON FOR TWO”を除き、上記のレコードの翌日、3月5日に同じメンバーでチューリッヒで録音された未発表音源。”SONNYMOON FOR TWO”は1968年、コペンハーゲンのモンマルトルでのライブ音源で20分あまりのハッピーな熱演(カルテット)ですが音が今一。ま、こちらはオフィシャルものではないので大目に聴きましょう。他の5曲はドラゴン盤と同レベルの好内容でロリンズのtsの音がメタリックでシャープ感を出している。

 

 

ロリンズの動向を久しく聞いていない。それでいい。伝わってくれば、年齢からして必ずしも芳しいものではないだろう。

ラスト・レジェンドの空白だった「59年」は最高だった。


身銭を切るなら ・・・・・ ETCETERA / WAYNE SHORTER

2023-04-06 | ジャズ・ts

 

かって、SJ誌で”SUPER NOVA”の再発レビューを担当したある評論家は「ウェイン・ショーターがテナー奏者としてA級かと訊ねらると、僕は首を縦にふりかねる。ただし、一歩前進的音楽概念をもったミュージシャンとしては、A級と断言でき、楽器奏者としてソプラノ・プレイヤーとしてのほうが、はるかに秀でている。」と評している。口では何とでも言えるけれど、記録に残るレビューで「A級(ts)ではない」と断言するにはかなり勇気が要ります。それなりに確信を持っているからでしょう。

実力は一級品なのに、「A級」と認めない何かがあるとすれば、多分、「オカルティズム」、「ブラック・マジック」等々余分な要素が入り込み、スタンダード演奏も得意でなく、tsを半身で吹いているイメージが付き纏う。また、見習ってきた存在役のコルトレーンが亡くなると、"SCHZOPHRENIA"を最後にtsと縁を切り、早々にssに乗り換える動きは「立ち回りが上手過ぎる」イメージを排除できない。多くのファンはコルトレーンの遺志を継ぎ、tsで次の時代を切り開いで欲しいと願ったのに・・・・・。ひょっとしてアングラで「ショーター非愛好主義同盟」が結成されたかもしれない(笑)。

先日、2002年頃に発表された ”FOOTPRINTS LIVE!”(CD)を処分した際、評論家、通のジャズ・ファンにモテモテなのに査定の低さに驚いた。ブービー査定(二桁)です。ま、評価、人気と査定は必ずしも比例しませんけれど 。また、この作品のライナー・ノーツは女性の評論家?が書かれていますが、ショーターへの恋文を越え、読む内にだんだん気色が悪くなるほど・・・・・・(笑)。それから、以前、ある地方都市での来日公演で会場が満席で埋まり、半端でない声援で包まれた話を聞き、違和感を覚えた記憶がありましたが、後で裏事情を知りました。音楽の世界にまで影響があるとは・・・・・・、果たしてショーターの高評価、人気ぶりの実態はどうなんだろう?  かなり嵩上げされているのではないかなぁ。

 

 





本作はリアルタイムではリリースされず、1980年に発掘シリーズの一枚で米国では初めて日の目を見た音源。一方、日本盤は翌年(1966年)に録音した‘Adam's Apple’のセッションから未発表曲の”The Collecter”を編入し、その曲をタイトルにして「世界初登場」と銘打って一足先(1979年)にリリースしている。

オリジナル米国盤はカヴァが冴えないし、日本盤は異なるセッションを混入したため、寄せ集めのイメージが付きピントがボケてしまっている。ただ、後年になり、同一セッションの一曲”Toy Tune”のテープの所在が、その当時、不明で止むを得ず”The Collecter”を編入したとされる。
日本盤のライナー・ノーツではショーターの経歴と録音データーのみで内容については殆ど触れず、イージーに済ませている。また、ジャズ批評別冊「完全ブルーノート・ブック」でもたった3行で片付けている。所詮「お蔵入り作品」と見ているのだろう。

ところが、発掘したM・カスクーナは「最高傑作の一枚で、大いなる謎」とリップ・サービスではなく最大級の賛辞を送っている。また、フランシス・ディビスも「ショーターで一枚身銭を切るなら”ETCETERA”」と断言している。

イントロが長くなりました。本題へ。
ショーターが妙な色付けをせず、tsと正対してA級テナーとしての「凄み」を感じさせる作品。とにかく、B面の2曲、G・エヴァンス作‘Barracudas’とショーター作‘Indian Song’が素晴らしい。‘Barracudas’では、まるでシロッコのようなショーターの熱風と吹き荒ぶ砂嵐が如きハンコックのp、背後からこれでもか、とばかりカウンター・パンチを繰り出し、ここ一番で、ビシッ、バシッとキメを入れるチェンバースのドラミングに鳥肌が立ちます。

コルトレーンの‘オレオ’に似た曲想を持つ‘Indian Song’、マクビーが弾き出す粘りあるベース・ラインに乗ってショーターが内に蓄積したエネルギーをエモーショナルに炸裂させ、思索的なプレイに徹するハンコックも素晴らしい。更に、二人をプッシュするチェンバースの出色のプレイ、恐るべし。他の作品にないテンションの高さにただただ驚かされる。

また、A-3の‘TOY TUNE’、ショーターが4ビートに乗ってスムーズにts
を鳴らし、ハンコックのちょっぴりファンキーさを湛えたソロ等、その心地よさに知らず知らず手足がスイングし、好みの一曲です。ただ、やはりマスター・テープが他と違うのでしょう、音圧がやや下がります。

リーダーとしての資質に難有りのショーターが他の諸作に比べ、自分のキャラを押さえ込み、tsを正攻法で攻めた結果、グループ・エクスプレッションが格段にUPしている。

くどいようですが、「ショーターで一枚、身銭を切るなら"ETCETERA"」です。

先月、3月2日、永眠、享年89。

R.I.P. WAYNE SHORTER


「ジャズ喫茶の名盤」 の一枚・・・・・ IN THE WORLD / CLIFFORD JORDAN

2023-01-27 | ジャズ・ts

年初め、DU(名古屋)の買取査定10%UPキャンペーンを利用してレコード、CD、合わせ60枚を処分した。STRATA-EAST盤の思いもよらぬ高査定で弾みが付き、諭吉の枚数が増えました。こちらの腹積りと丸ッと逆転するケースがあり、帰りにコーヒーを飲みながら明細書を見るのが、ホント、面白く、楽しいです。それにしてもBN盤は急激に人気が上がったのか、音符ラベルでも状態が良く、RVG印有、シュリンク付きなら、いい値が付きます。オリジナル盤はもう庶民に手が届かない領域に突入している。バブルですね。その点、CDは弱くなるなぁ~、二束三文を実感します。一時はCD、CDと騒がれたのに・・・・・、でも、逆に、今、狙い目ですよ。現にゲッツとエヴァンスで美味しい思いをしました。CDを侮るべからず。一時、CDはデジタルだから音が良い、今度はアナログの方が良い、ってマスゴミに踊らされずに(笑)。

 

かって、「ジャズ喫茶の名盤」と崇められた一枚を。悲しいかな、もう、こうした呼び方は二度と来ないでしょう。

 

 

STRATAーEASTという特殊なレーベル(独立系・自主製作)のため、なかなか手に入り難い状況が続き、噂が噂を呼び、持っていた店は連日、「満員御礼」の垂れ幕が下げられたとか、自慢げに煽る店主とか・・・・・(笑)。1969年録音ですが、リリースは1972年になってからで、ジャズ喫茶のピークを飾る最後の一枚かもしれない。この1、2年の間にジャズ・ファンの嗜好がガラッと変わり、ソロ・ピアノ、リターン・ツー・フォーエヴァー等々が持て囃されるようになり、本作のようなアングラぽさを醸すレコードは少なく、余計にファンを惹きつけたのだろう。60年代のジャズ喫茶黄金期の匂いだ。

 

TOPの”Vienna”(ヴィエナ)の退廃的なメロディが殊の外、人気ですが、ウィーンの街のイメージと異なるエセモノ風のD・チェリーとデリカシーに欠けるA・ヒースのプレイに馴染めなかった。だから、まさか「ジャズ喫茶の名盤」に大出世するとは夢にも思いませんでした。もっとも、ウィーンだけでなく、どんな街でも「表と裏、陽と陰」の顔を持っているので、自分勝手なイメージの押し付けと分かっているんですが・・・・・ でも、改めて聴くと、だんだん遠くに霞んでいく懐かしい「あの頃」が思い浮かび、当時より身近に聴こえますよ(笑)。

B面に最晩年期のドーハムのプレイが聴けます。どういう経緯からか、DB誌でディスク・レヴューを担当し始め、辛口のコメントを発したのが原因なのか、60年代後半からめっきり出番がなくなりました。自信作”TROMPETA TOCCATA”(BLUE NOTE 4181)の評価が三星半と低かった事を理由に他のミュージシャンの作品(特にトランペッターの)をシビアに評したのは拙かった。本音は違う所にあったけれど、曲解、悪用されたケースも見受けられます。口は禍の元でしょうか。そもそも、この手の二刀流はあり得ないでしょう(笑)。ただ、ひょっとしてこの時、体調を崩し演奏活動が出来なかったかもしれない。亡くなる3年前の貴重な録音ですね。そういえば、ケリーも2年後に亡くなっている。

この白ラベルが1st盤で白黒は2ndのようです。STRATA-EASTはトリヴァーとカウエルのMUSIC INC.から注目し、早くから他のレコードも含め入手していたので、ラッキーでした。

 

 

さぁ、 「どうする?」(笑)。狙っているブツが目の前に現れたら、その時、考えよう。


驚きの買取査定、そして、PEOPLE TIME / STAN GETZ & KENNY BARRON

2023-01-07 | ジャズ・ts

年始の買取査定10%UPキャンペーンを利用してレコードを二度、DU名古屋に持ち込みました。初めてなので査定の傾向が分からないけれど、それなりに6枚づつ選出した。一回目でいきなり10,039円と、万馬券!をヒットした気分。S・フォーチュンのSTRATA-EASTのオリジナル盤がメチャ効いてますね。同じフォーチュンのホライズンのオリジナル盤も四桁近くでビックリ。ただ、あとの4枚は二桁で、甘くないです(笑)。二回目も、STRATA-EASTで味を占め、今度はD・グリフィン(tb)を入れましたが、S・フォーチュンの6掛けで、BENNIE GREENのエンリカの再発FSR盤や国内盤帯付きが割と良い査定が出て、7,502円、計12枚で17,541円と上々でした。それにしても、STRATA-EAST盤の高額査定には、正直、驚きました。何年か前、地元の廃盤屋に他のレコードとどんぶり勘定で何枚か安く手放したことが悔やまれる。もっと早くDUが名古屋に出店していれば・・・・・・(笑)下衆の勘ぐりで販売上代はちょっとしたBNのオリジナル盤レベルになりそうですね。こうなると、手持ちのC・ジョーダンの"IN THE WORLD"の査定はいくらになるのだろう。興味が大いに湧きます。

帰りに何枚か購入した内の一枚がこちらです。今更ものですが、実はこのCD、リリースされた時(1992年?)、飲み会の帰りタクシー(個人)に置き忘れ、プロパーでは買う気が起きず、ずっとそのままでした。意外に手古摺り、やっと手に入りました。

野暮なコメントは無用。ただ、一言、C・ヘイデン作”First Song”を語る様は関西弁で言う「何やねん、この濃さ!」がピッタリ嵌りますね。バロンの手記では、ゲッツはかなり衰弱しており、ソロを終えるたび息を切らしていたそうです。でも、フレーズに些かの乱れはなく、tsの音も死ぬ三ヶ月前とは思えぬほど屹立している。稀代のインプロヴァイザーとしての矜恃だろう。オーディエンスの反応も「何やねん、この熱さ!」、もう、ミュージシャン冥利に尽きます。また”People Time”では聴衆の叫び声が聴こえ、スロー・バラードでこうした反応は他に例を知らない。ゲッツが極みに達していたエヴィデンスだろう、命が尽きる直前に。凄いなぁ~、ゲッツって。

 

 

 

その昔、新しいレコード・ショップがオープンした際、手ぶらで店を出るのは、ちょっとしんどいなぁ、と思いながら壁面に目を遣ると「エアメール新入荷」と書かれてPOPが付けられた本アルバムが目に入った。これがレコード(オフィシャル)上、ゲッツとバロンの初共演です。それほど期待はしていませんでしたが、家に帰りターンテーブルに乗せると腰が抜けた。BLACK HAWKと言う新興レーベルだったせいか、玉があまり出回らず、早い段階で廃盤にもなり、意外に知られていない。

でも、この”VOYAGE”はゲッツのBEST3の内の1枚と思っている。今回、”PEOPLE TIME”に続き、久し振りに聴きました。もう、既に二人の相性、いいね!

 

 

人それぞれですが、ゲッツは80年代~が素晴らしいです。

話を戻すと、帰りに「コンパル」でコーヒーを飲みながら「査定明細書」を見て高額査定にニヤニヤし次の作戦を立て、そして、30年前に果たせなかったデートにわくわくし、結果は上記の通りでした。


鋼のリリシズム”SOULTRANE” ・・・・・ DAMERON With COLTRANE

2022-10-30 | ジャズ・ts

 

 

T・ダメロンがコルトレーンの為に書いた名バラード、”Soultrane”が収録されているレコードが本作。紛らわしいけれど、コルトレーンのリーダー作”SOULTRANE”には入っていない。

上がオリジナル・カヴァ(LP7070)、下が1962年になって、コルトレーンの人気にあやかり再発された米盤(LP7274)。ダメロンとコルトレーンの名の順が入れ替わっている。Goldmineによると、この2nd盤はオリジナルの1/5のプライスになっている。あまりにもショボいカヴァで触手が動かないのも無理ありません。

ところで、2nd盤のセンターラベルが面白い。No.は7247に変わっているが、ダメロンとコルトレーンの名の順はカヴァと逆のオリジナルのまま。そして、ラベルの周りの無録音スペースには、オリジナルNo.LP7070がサンド・ペーパー?か何かで無造作に掻き消され、横に再発No.が手書きで刻まれています。手違いが修正されないままリリースされたのだろう。いかにも米らしい。なお、RVGはちゃんと刻まれている。

 


普段、PRESTIGE時代のコルトレーンはあまり聴かないが、本作は、時々、引っ張り出し聴いている。その理由は、ダメロンが書いたチャーミングなオリジナル曲の中、コルトレーンの「鋼のリリシズム」が浮かび上がっている。

その典型的ナンバーが”Soultrane”で、「歌わないts」と揶揄されるコルトレーンが、例えば、”Gnid”では愛くるしく歌っている。”On A Misty Night”では後年の「シーツ・オブ・サウンド」を予感させる特異なドライヴ感が心地良い。まだ、海の物とも山の物ともつかない段階でコルトレーンに曲を書いたダメロン、そしてレコーディングをOKしたワィンストックはコルトレーンの才能を既に見抜いていますね。

完成度を求める作品ではありません。原石のままだが、期待を決して裏切りません。


究極の哀悼 ・・・ I REMEMBER CLIFFORD / STAN GETZ

2022-01-24 | ジャズ・ts

 

I Remember Clifford ・・・・・・・・・・

誰もが知っている曲、メロディだが、このGETZの演奏は殆ど知られていない。

1989年に発掘された一時住んでいたデンマークでのライブ音源。五つのコンサートから選出され、録音状態のバラツキが気になるけれど、この”I Remember Clifford”に今まで経験したことがない「胸が詰まるほどの切なさ」が湧き上がる。

 

 

自分も含めオーディエンスが息を潜めて聴き入る5:33、これほどまで深い哀惜の想いに満ちた演奏を他に知らない。幸いに音も水準レベルで録音されている。それにしてもGETZは凄い。

 

 

”I Remember Clifford”の名演盤と定評のある一枚、”THE MESSAGE / JR MONTEROSE”(JARO)を。

その昔、幻の中の幻の名盤と騒がれたアルバム(再発もの)です。GETZに比べ男気がカヴァに滲み出ています。”Violets For Your Furs”の名演も入っている人気盤ですね。

 

 

トーレンス + SMEのお蔭で、レコードを楽しむ時間が増えました。