活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

第12代大村藩主大村純熈(すみひろ)のヘリオトロープ

2007-05-25 13:48:31 | 活版印刷のふるさと紀行
 昨日、東京大村会の方からうかがった話が、独占しては勿体ないので、紹介することにします。
 私は、活版印刷をもたらした天正少年使節の件で、かねてから、大村の方々にはいろいろと、昔の話は取材させていただきましたが、これは、ごく、最近の話。
 
 ちょうど、去年の今頃、大村家の末裔の方々が東京の青山霊園にあったお墓を、長崎県大村市の本経寺に移すことされたそうです。
 そこに埋葬されているいちばん古いご遺体が、大村純熈ご夫妻で、土葬で葬られたのは120年前とのことでした。
 作業員が5メートル近くも掘り進んで八層にも積まれた石板をやっとの思いで取り除いた瞬間、地底からえもいわれぬ芳香が立ちあがってきたといいます。
 「ヘリオトロープ!」年輩のご遺族の方々がいっせいに声をあげられたのです。

 なぜなら、第12代大村藩主の純熈が、この香水を洋行土産にたくさん買い求めてきて、奥方や娘さんたちが愛用したエピソードが伝わっていたからです。
 棺内からは、メガネや銀の煙管や硯や印鑑など、たくさんの副葬品は出たそうですが、お骨はみんな土に還っていたと聞きました。
 
 ヘリオトロープの小瓶は9個あったそうで、純熈さんを葬るときに、夫人やお嬢さんたちがめいめい、お別れに振りかけたにちがいないと、一族のみなさんで想像されたとのこと。なにはとあれ、地中で密封されていた香りが、120年の歳月を経てご子孫の前に馥郁と香りだし、顔を知らないご先祖を身近に感じたとは、いい話ではありませんか。私の記憶では、ヘリオトロープは夏目漱石の作品にしばしば登場していたと思いますが、いま、香水名としては、あまり耳にしません。

 純熈は、みずから蘭学を学び、近代化の先頭に立った人だったと聞きますから、
「お棺の中に印刷物はなかったのですか」と、つい、質問してしまいましたが、ノンでした。。 


コメント
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