活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

世界最古の印刷物はどちら

2007-05-26 13:27:02 | 活版印刷のふるさと紀行
 昨年、神田川大曲塾の「印刷文化のふるさと探訪」で韓国を訪問しました。金浦空港から真っ先きに目指したのはソウルの国立中央博物館でした。オープン時から印刷ブースの充実ぶりがすばらしいと、耳にしておりましたから楽しみでした。

 学芸員の方がVIPのバッジを胸にした私たちをいの一番に案内して下さったのが、
『無垢浄光大陀羅尼経』の展示ケースの前でした。「これが、韓国が誇る世界最古の印刷物です」と。

 1966年に慶州仏国寺でこの「無垢‥」が発見されるまでは、日本の『百万塔陀羅尼』(770年)が世界最古とされておりました。
 「無垢‥」が新羅時代(8世紀初めから751年以前のもの)だというのでした。たしか、韓国の学者の中にはは、600年代の終りから705年まで使われていた則天文字が入っているから、770年の「百万塔‥」より古いと主張する人もいました。

 ところが、最近に至って、雲行きが怪しくなってきたのです。
 朝鮮日報の慎亨浚(シン・ヒョンジュン)記者が「無垢‥」が、新羅時代ではなく、高麗時代初期(11世紀)のものであることがわかった。世界最古は日本の「百万塔‥」の可能性が高まったという特ダネを書きました。

 なんでも、仏国寺で同時に見つかっていた『釈迦塔重修記』の判読が進んで、1024年ごろの塔修理のときに舎利や香や金製品とともに、『無垢浄光大陀羅尼経』を2点収めたとあるから、751年の塔創建のときから、収まっていたものではないというのです。ほかにも、史料が出たようです。

 いずれにしても『続日本紀』で年代が確定できる「百万塔‥」にくらべて、「無垢‥」の方は、年代が確認できないので断定は出来ません。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする