活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

想説/活版印刷人あれこれ25

2010-02-16 15:42:06 | 活版印刷のふるさと紀行
 寄り道してしまったので、このへんで、また、「活版印刷」の話に
戻ることにしましょう。

 前回、上海博物館の紙幣印刷に触れましたが、なんといっても紙に
版を使って印刷するテクニックを最初に発明したのは6世紀末の中国
で、明の時代の中ごろから活字版が盛んに用いられたといいます。
ちなみに木版に関していえば中国に現存する一番古い印刷物『金剛経』
が印刷されたのは868年とされております。

 明の時代は日本の室町時代にあたりますが、その頃から日本と中国の
間には勘合貿易がされておりましたし、その前の時代には、遣隋使や遣
唐使の行き来がありました。しかし、これらを利用して印刷術が日本に
もたらされた記録を私は見たことはありません。
 私たちの先祖は印刷した経本を競って手に入れたがったのに、それを
生み出した「印刷術」というハードウェアはほしがらなかったのでしょ
うか

 同じ頃、中国に負けず劣らず朝鮮でも活字版は多用されていました。
室町幕府はわざわざ使節を派遣して『大蔵経』を無心したほどです。
けれども、実際に活字を使った印刷術は豊臣秀吉のときまで日本に
伝わってきていません。いささか不思議な話です。

コメント
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