青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

引きこもり開放区

2009年03月20日 11時27分35秒 | 日常

さて、本来でしたら本日より三連休ですんで、あわよくば昨日の夜辺りからどっかに出掛けていてもおかしくない私。
ま、所帯も持ちましたんで、今日は朝から掃除と洗濯を済ませ静かにWBCなんぞを見ている訳でありますが…
そう思うと、本当に一人の頃はそれこそ神出鬼没の思い付きで色々なところに行きました。

基本的にその内容に関してはここで紹介しているのですが、漏れたものもあったなあと思って昔の画像フォルダを見たりしながらネタを探してみる。大学の頃は地方競馬、社会人になってからは競艇場と旅打ちばっかやってましたけど、20代も後半を迎えた頃からだんだんとドライブ&温泉と言うスタイルに変化して行ったんだよね。今日はそんな私の旅のスタイルに関して、ある意味転機となった思い出のお宿を紹介してみる事にします。

そのお宿とは、福島県は福島市にある「微温湯温泉」。
微温湯と書いて「ぬるゆ」と読むのですが、福島市の郊外、県営あづま球場から吾妻小富士の山へ延々と寂しい山の一本道を登った先にある一軒宿。麓の集落から12kmも登って行かないと着かないってのも、福島市内と言えども相当な山の中にあります。

特に理由もなく適当に目星を付け、私がこの宿を訪れたのは確か5年前の秋だったかと思う。吾妻連峰は見事に紅葉していて、静かな山道を登って行くたびに何となく心が穏やかになって行くような風景だったのを覚えている。目指す微温湯は標高900m。人里離れた…と言う表現がぴったりの場所である。

麓から登りに登って30分、とうとう道はついえて茅葺き屋根の建物群が現れる。ここが微温湯温泉。ここに至るまでの長い山道はタイムトンネルだったんだろうか、と思わせる前時代的な光景が。300年の歴史を誇るこの宿、古い棟は明治時代から建ち続けている建物だそうな。

微温湯、と言うだけあって温泉は32℃程度のぬるめの温泉。訪問したのが晩秋だったせいか、他に泊まり客はおらずほぼ貸し切りの状態であった。さすがに入った瞬間はぬるいのであるが、しばらくすると水と体が馴染んできて一体化する。
とにかく湯量が多く、湯船に落ちるドバドバと言う湯音を聞いていると催眠効果かあるのか、心も頭も完全にからっぽになってやがて無の境地に至るようなような不思議な温泉であった。2時間でも3時間でもうつらうつらしながら入り続けていたのを思い出す。

茅葺き屋根ではお世辞にもきれいとは言えない白熱球のみの部屋。テレビはあったが山の中過ぎて機能せずwただただ障子の隙間風をコタツでしのぎながらぼけーっと一日を物憂げに過ごし、気が付いたら日が暮れて、大して美味くもないメシを食ってはまた寝るまで風呂に入り続けていた。ぬるいのでのぼせないのと入ると寒くて上がりづらいのもあるが、独特の催眠効果に優しさと癒しがあった。

誰とも口を聞く事もなくただダラダラとする事は家でも出来るのだが、こう心まで空っぽになってしまうような一人の環境と言うのはなかなかない。人生において上手な気分転換と言うのは必要なものだと思うが、こうやって息を抜きながら生きて行く事が必要なのかもしれないなあと感じたりして…11月から4月までは雪によって閉ざされてしまう宿なのだが、こっそり一人で籠もるにはいいところだ。引き篭もっていながら心は解放される場所でもあります。

福島県微温湯温泉、雪が溶けたらまた行ってみようと思う。

コメント
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