日本私法学会第82回(2018年度)大会のお知らせ
http://japl.jp/activity/2018/index.html
今年の日本私法学会では,ワークショップで,「商業登記の現代的意義」が取り上げられるようだ。
(引用はじめ)
商業登記の現代的意義~会社手続の適正性担保機能の視点から
司会者 学習院大学教授小出篤
報告者 同志社大学教授舩津浩司
会社法の実務を行う上で無視できないものとして、商業登記手続がある。会社法のいかなる学説も、商業登記が関係する限り登記所によって受容されなければ実務的には受け入れられないことから、登記所による会社法の解釈は、会社法実務の内容そのものを規定するものであると言っても過言ではない。また、登記所(登記官)による登記の受理・却下決定を通じて、事前に形式上適法な手続のみが商業登記に反映されることから、機能的には、登記官は商業登記の受理・却下決定を通じて会社法の適正な運用を確保するゲートキーパーとしての役割を担っていると考えることができる。
他方で、会社法の適正な運用を確保する制度としては、商業登記の受理・却下判断という事前的規制のみならず、事後的な方策、具体的には裁判所による会社の行為の効力の否定や利害関係者の個別的な利益保護の主張(株式買取請求や損害賠償請求)等を通じて一定程度確保しうるとも考えられる。それにもかかわらず、近時会社法の制定等によって充実したとされる事後的救済手段と、事前規制としてなお残る商業登記の規律との関係は、これまであまり整理されていないように思われる。また、最近では、特に会社設立時における定款認証を通じた公証人のゲートキーパーの役割が強調されるなど、事前規制への揺り戻しの動きも見られる。
そこで、本ワークショップでは、とりわけ設立、新株発行および合併等の会社の組織行為に関する手続の適正性の確保に関して商業登記手続が果たす役割について、手続の適正性を確保する他の代替的メカニズムを踏まえつつ、機能的な分析を試みるとともに、将来に向けた制度改革の展望を提示する。その際には、近時急速に進展している会社手続・商業登記(手続)の電子化の影響にも配慮することで、商業登記の存在意義を再定義しその運用の改善点を提示するほか、それを踏まえた会社法の解釈論あるいは立法論の新たな可能性にも言及したいと考えている。
参考文献
・舩津浩司「情報技術の発展と商業登記の効力」落合誠一先生古稀記念『商事法の新しい礎石』三八三〜四一一頁(有斐閣、二〇一四年)
・法人設立オンライン・ワンストップ化検討会「法人設立手続のオンライン・ワンストップ化に向けて」(平成三〇年五月)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/hojinsetsuritsu/pdf/report.pdf
(引用おわり)
cf. 平成29年12月8日付け「企業情報開示の電子化とデータベース運営者としての国家の役割の再検討」
http://japl.jp/activity/2018/index.html
今年の日本私法学会では,ワークショップで,「商業登記の現代的意義」が取り上げられるようだ。
(引用はじめ)
商業登記の現代的意義~会社手続の適正性担保機能の視点から
司会者 学習院大学教授小出篤
報告者 同志社大学教授舩津浩司
会社法の実務を行う上で無視できないものとして、商業登記手続がある。会社法のいかなる学説も、商業登記が関係する限り登記所によって受容されなければ実務的には受け入れられないことから、登記所による会社法の解釈は、会社法実務の内容そのものを規定するものであると言っても過言ではない。また、登記所(登記官)による登記の受理・却下決定を通じて、事前に形式上適法な手続のみが商業登記に反映されることから、機能的には、登記官は商業登記の受理・却下決定を通じて会社法の適正な運用を確保するゲートキーパーとしての役割を担っていると考えることができる。
他方で、会社法の適正な運用を確保する制度としては、商業登記の受理・却下判断という事前的規制のみならず、事後的な方策、具体的には裁判所による会社の行為の効力の否定や利害関係者の個別的な利益保護の主張(株式買取請求や損害賠償請求)等を通じて一定程度確保しうるとも考えられる。それにもかかわらず、近時会社法の制定等によって充実したとされる事後的救済手段と、事前規制としてなお残る商業登記の規律との関係は、これまであまり整理されていないように思われる。また、最近では、特に会社設立時における定款認証を通じた公証人のゲートキーパーの役割が強調されるなど、事前規制への揺り戻しの動きも見られる。
そこで、本ワークショップでは、とりわけ設立、新株発行および合併等の会社の組織行為に関する手続の適正性の確保に関して商業登記手続が果たす役割について、手続の適正性を確保する他の代替的メカニズムを踏まえつつ、機能的な分析を試みるとともに、将来に向けた制度改革の展望を提示する。その際には、近時急速に進展している会社手続・商業登記(手続)の電子化の影響にも配慮することで、商業登記の存在意義を再定義しその運用の改善点を提示するほか、それを踏まえた会社法の解釈論あるいは立法論の新たな可能性にも言及したいと考えている。
参考文献
・舩津浩司「情報技術の発展と商業登記の効力」落合誠一先生古稀記念『商事法の新しい礎石』三八三〜四一一頁(有斐閣、二〇一四年)
・法人設立オンライン・ワンストップ化検討会「法人設立手続のオンライン・ワンストップ化に向けて」(平成三〇年五月)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/hojinsetsuritsu/pdf/report.pdf
(引用おわり)
cf. 平成29年12月8日付け「企業情報開示の電子化とデータベース運営者としての国家の役割の再検討」