永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(254)

2008年12月17日 | Weblog
12/17   254回

【胡蝶(こてふ)】の巻】  その(2)

「御方々の若き人どもの、われおとらじ、とつくしたる装束容貌、花をこきまぜたる錦に劣らず見えわたる。世に目慣れずめづらかなる楽ども仕うまつる。舞人など、心ことに選ばせ給ひて、人の御心ゆくべき手の限りをつくさせ給ふ。」
――中宮と紫の上の両方の若い女房達が、誰にも負けをとるまいと贅を尽くした衣装も、容貌も、花々をとりまぜて織上げた錦に劣らず見渡されます。聞きなれない世にも珍しい音楽なども様々に奏でられます。舞人たちも源氏が特にお選びになって、見物の方々が満足されるようにと、秘術の限りをお尽くしになるのでした。――

「夜に入りぬれば、いと飽かぬ心地して、御前の庭に篝火ともして、(……)」
――夜になりましたが、なお飽き足りない心地で、庭に篝火を灯して(階の下の苔の上に樂人をお召しになり、親王、上達部もみなそれぞれに、琴や琵琶、笙、篳篥(ひちりき)などを演奏なさいます。催馬楽の「安名尊(あなとうと)」をお謡いになるころには、)――

「生けるかひありと、何のあやめも知らぬ賤の男も、御門のわたり隙なき馬車の立ち所に交じりて、笑みさかえ聞きけり。」
――この世に生をうけた甲斐があったと、何の弁えもない下人まで、御門のあたりにぎっしり立て並んだ馬や車の間に交って、満面笑い崩れて聞いております。――

 こうして一晩中楽器を弾きならし、兵部卿の宮は催馬楽の「青柳」を何度も繰り返してお謡いになり、源氏も声をお添えになりました。

 夜も明けました。
さて、西の対の姫君(玉鬘)は、これといって難のない美しさで、源氏もことのほか大切になさっていらっしゃるご様子などが、みな世間の噂になって、源氏の思い通り、胸を焦がしている公達も多いようです。その中には、玉鬘が異母妹であるという真相をご存知でない内大臣のご長男の柏木なども、深く想いこんでいらっしゃるらしい。

ではまた。