12/23 260回
【胡蝶(こてふ)】の巻】 その(8)
右近は、
「さらに人の御消息などは聞こえ伝ふる事侍らず。さきざきもしろしめしご覧じたる、三つ、四つは、引き返し、はしたなめ聞こえむも如何とて、(……)」
――私は、人さまのお手紙などは、決して姫君にお取次ぎしたことはございません。先の三、四通は、付き返して失礼してもどうかと、(お手紙だけは受け取ったのですが、お返事は全く、殿のお指図のあった折だけしておられます。それさえも、姫君は迷惑にお思いです)――
さて、と源氏は、
「この若やかに結ぼほれたるは誰がぞ。いといたう書いたる気色かな」
――この若々しい様子に結んだままの文は誰からのか。ひどく一生懸命書いたらしいね――
と、微笑んでご覧にご覧になります。右近が、
「かれは、しうねうとどめて罷りにけるにこそ。内の大殿の中将の、この侍ふみるこをぞ、もとより見知り給へりける伝へにて侍りける。(……)」
――それは、お使いが、無理やり置いて行ったものでございます。内大臣のご子息の柏木中将が、姫君に仕えています童女の「みる子」を、以前からご存じであった、つてによるもので、他に承る人が居なかったのでございます――
と、事情をお話しになりますと、源氏は、
「いとらうたきことかな。下なりとも、かの主たちをば、如何いとさははしたなめむ。公卿といへど、この人のおぼえに、必ずしも並ぶまじきこそ多かれ。(……)」
――可愛いことをするものだな。官位がまだ低くても、あの人たちを恥ずかしがられて良いことはあるまい。公卿でさえ、柏木ほどの人望を持たぬ人も多いのだから。(内大臣の子息の中でも、あの人はまことに落ち着いた人です。姫との間柄は自然に分かる時がくるだろうから、今のところは、はっきりさせずに紛らわしておこう。――
ではまた。