二週間前に宣告された「低音障害型急性感音性難聴」という病名は、取っつきづらいし難しいので、人から聞かれて正しく発音できたためしがない。実はなかなか自分の記憶にとどまらないのだ。
病名の件はともかくとして、なかなか低音のボウボウ障害は治まらない。ちょっとイライラして、お盆明けにすぐ病院へ行こうと思ったが、多少とも回復兆候が見受けられるし、私のせかせかした行動様式が体調の変動を引き起こす一因かもしれないし、あと一週間くらい様子を見てからでも遅くはない、と踏みとどまった。
思い返すと、私の系統の祖母と父もかなり耳が遠かった。今の私の歳を考えたら、私が生まれる前に亡くなった祖父の歳をとっくに追い越している。そろそろあちこち軋み始めても驚くようなことではない。なお、祖父の耳が、彼の死の間際、遠かったか近かったかは定かでない。
かかったお医者が評判の無口な人だったのは、私にとってありがたかった。加齢などとよけいな修飾語を使わず、きちんと病名を宣告し薬を処方してくれたのだから。辛気くさい患者をそれ以上がっかりさせないよう、気を遣ってくれたのかもしれない。(2016.8.16)