北海道の山野でとことん遊ぶ!!
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2018.10.13 『ピンネシリ山』(1,100m)~『待根山』(1,002m)~『隈根尻山』(971m) 惜しい、廃道だ!
この週末は都合により土曜日だけの山行だった。
従って遠出はせず近場へ。
私が四季を通じて遊ばせてもらっている樺戸山地で、
いつも気になっていることがあった。
それは頭から離れることがなく、
常に検証に出かけなければ、
という義務感みたいなものを感じていた。
そしてそんなふうに抱え続けてきた懸念が、
とうとう現実のものとなった。
土曜の朝「道民の森一番川地区」のキャンプ場を過ぎて林道に入ると、
登山口の約2km手前で林道が決壊していた。
大雨の影響で数年前にも決壊した箇所が、
また水に流されていた。
ただ、重機による修復工事が進められているようではあったが、
中途でやめた可能性がある。
と言うのも、その朝キャンプ場の管理棟裏に止められていたパワーショベルが、
この日の下山後そこを通った時にはなかったからだ。
林道の修復工事を中断して引き上げたと思われる。
登山口の手前約2kmの林道決壊箇所近くに車を止め、
7時30分、徒歩でスタート。
期待していた紅葉はまだ進んでいない。
朝の空気は冷たく、手袋が欲しいくらいだ。
しかし空は青く、太陽光が燦燦と降り注ぐ。
そしてしだいに気温が上がってきた。
8時05分、登山口。
通常はここまで車を乗り入れられる。
いや、かつてはその先の『待根山』基部まで車で入ることができた。
ただ、今はそんな林道も荒れ果てて、登山道として残っているだけだ。
それはそれで良い。
タケノコ採りの連中がゴミをまき散らかしていかなくなった。
登山口からすぐに最初の渡渉がある。
以前は滑べらなかった沢床の石が、
数年前からひどく滑るようになったので要注意だ。
それを過ぎると間もなく『ピンネシリ山』と『隈根尻山』への分岐が現れる。
そこに大変な案内板が設置されていた。
『隈根尻山』への登山道が廃道になったと言うのだ。
そんなことをにわかには信じ難く、
Hiromiに「奥の5箇所ある渡渉点の橋が流されたから廃道と言っているんだろう」
と、ある意味妙な期待感を込めての想像を口にした。
私がそれまで懸念していたのは、
『待根山』~『隈根尻山』間の登山道が、
笹やブッシュに覆われて廃道になってしまうのではないかということ。
それが登山口から『隈根尻山』までの、
王道とも言える登山道が廃道などとは、
私の中ではありえないことだった。
しかし・・・
分岐を『ピンネシリ山』に向かって進む。
第二渡渉点を過ぎると下草がはびこりだした。
しかしかつて立派だったその林道は、
快適に歩を進めさせてくれる。
そして第三渡渉点を過ぎると傾斜が増し、高度を稼ぎ出す。
体が熱を帯び薄着になる。
そこでHiromiには「噴出する汗を抑えられるようなペースで歩け」と指示するも、
そんなことなぞできない猪突猛進。
数歩ゆっくりペースかな、と思った途端ハイギアへ。
どんどん先を行き、『待根山』分岐から『ピンネシリ山』へ。
分岐からは160mの急登だ。
それをクリアして、
9時55分、『ピンネシリ山』。
Hiromiはいつもどおり、川にザブンと浸かって上がったように汗をかき、
そのままではいられないので着替えるために頂上に残し、
私は一足先に登ってきたルートを『待根山』目指して下り始めた。
その後ゆっくり下っていると、
しばらくして追いついてきた。
そして10時40分、『待根山』。
さて、問題はここからだ。
この『待根山』と遥か南に見えている『隈根尻山』間の登山道を、
私は廃道になるのではないかと懸念し、度々検証もしてきた。
『待根山』にはロープでの通行止めと、
その先廃道の案内板が設置されていた。
しかし私は検証しなければならない。
自己責任で先に進む。
Hiromiもまた自らの意志で先に進みたいという。
『待根山』の南斜面は遠くから見てもわかるように、
大変傾斜がきつく、慎重に下る。
かつては両端をロープにくくりつけられた木段が設置されていたが、
そんなものは設置されて間もなく雨に土砂ごと流されてぐちゃぐちゃだ。
そんな木段の残骸が、今は煩わしい。
ただでも下りを苦手とするHiromiは時間がかかる。
そしてようやく急斜面を下りきると、今度は笹の海だ。
登山道を背の高い笹がはびこっている。
まだ埋め尽くすとまでは言えないが、かなりうるさい。
それが密生している部分もあり、
「引き返すなら今かも・・・」という場面もあった。
しかし、気に入っていたこのルートの成れの果ては最後まで見届けたい。
笹をかき分け、ブッシュを手でよけながらゆっくり進む。
『待根山』~『隈根尻山』間の最低標高点まで下って登り返すが、
それまでは南向きで太陽光を常に浴び続ける斜面とは違って、
今度は年中日陰になっている斜面を登る。
すると登山道にはびこる笹の勢いが小さくなった。
やはり太陽の力は偉大だ。
日陰の急斜面から尾根の頭に刻まれた登山道を登って行く。
そして12時25分、『隈根尻山』分岐。
この分岐から『隈根尻山』までは600mを残すだけだが、
この日はここでやめて下山することにした。
笹漕ぎはもういい。
それよりも「廃道」だというここから登山口までを早く検証したかった。
分岐でラーメンタイムをとり、さあ下山。
確かに下草が勢いを増し、
登山靴に絡みつく場面もあるが、さして問題はない。
急な下降を終えてここも荒れ果てた林道を下るが、
そこから登山口まで5箇所の渡渉がある。
以前その5箇所の全てに橋が架けられていた時期もあった。
何シーズンそれが保たれていたのかは記憶にないが、
ある年の災害でその橋の全てが流されてしまった。
そんな渡渉のいくつかで、
Hiromiにかつての情景を説明しながら下り、
14時ちょうど登山口。
最後の渡渉点でスパッツを洗い、林道を淡々と歩いて、
14時35分、駐車地。
結果、『隈根尻山』~『待根山』間は廃道。
我々もこの日歩いたのが最後となるだろう。
また、登山口から『隈根尻山』間はまだまだ歩ける。
『隈根尻山』に登るにはかつて、
『浦臼山』~『樺戸山』を越えなければならなかった。
しかし一番川登山口からの楽な登山道が開削されると、
皆楽なそちらに集中し、結果『樺戸山』経由は廃道となってしまった。
そしてもてはやされた一番川登山口からの『隈根尻山』も、
皆一度登ればそれでいいとのごとく登山者が激減し、
この成れの果てを生み出した。
この先はもう夏道が廃道となり、
『隈根尻山』に登るには積雪期しかなくなる。
それはそれで神秘的でよいのかも・・・
今から20年と少し前、『樺戸山』経由で『隈根尻山』頂上に立ったとき、
『待根山』方向に向かう、笹刈り道を目にした。
それは間違いなく『待根山』へ続くものだと確信し、
翌週笹を根こそぎ刈り取ったドロドロの登山道予定ルートを、
ピッケルで確保しながら歩いたことをはっきりと覚えている。
心からワクワクする思いで歩いたものだ。
それがとうとう廃道になる。
淋しい限りだ。
Hiromiが送ってくれた昨年このルートを歩いた時のGPSデータによると、
登山口を出て周回して登山口までが、
歩行距離17.7km、累積獲得標高1,381m
惜しい、実に惜しい・・・
道民の森は北海道の公園だ。
その中にあって、登山道の維持管理をする予算が確保できないのであれば、
登山者の安全のために廃道にせざるを得ない。
それは現在も微力ながらも納税者の一人として理解しなければならないことだ。
もう登行可能時間が限られた『隈根尻山』。
登る意欲のある方は今のうちである。
但し、あくまでも自己責任であることは言うまでもない。