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2018.10.21 『芦別岳』(1,726m)  旧道を登って新道を下る

 

 10月はHiromiが忙しく、今回も次回の週末も土曜出勤となる。

それで今回の土曜日は私も女房と家の仕事に時間を当てた。

そして午後Hiromiを拾って富良野市山部の「太陽の里」に向かった。

到着時刻が18時近く。

すっかり日が短くなって落ち着かない。

「太陽の里」キャンプ場の駐車場で車中泊。

 

 私が『芦別岳』に初めて登ったのは大学1年のときだった。

東京から滝川市の実家に帰省して登ったものだ。

実家から登山靴を履き、ザックを背負って汽車に乗った。

そして山部駅で降り、田園地帯の一本道をまっすぐ歩いて登山口に向かった。

なんだか随分時間をかけて登下降したようで、

下山後また一本道を山辺駅に向かう頃は暗くなりかけていた。

そんな私を見て近くで野良仕事をしていたおじさんが、

そばにいた奥さんらしい人に、

「おい、あれスキー靴履いてんじゃないか?」と言った。

その時当時としては斬新な、

上野の登山専門店で購入したフランス製の登山靴を履いていた。

それがハイカットだったものだから、

そのおじさんにはスキー靴に見えたのだろう。

その登山靴は当時の価格で4万円だった。

今ならいったいいくらになるのだろう?

『芦別岳』に登ると、必ずそんなことが蘇ってくる。

しかしその記憶は鮮明で・・・

もう45年も前のことだというのに、

どうしてこうもはっきりと記憶しているのだろう・・・

その後『芦別岳』には新道の登下降で回を重ねた。

そして旧道を登るのは今回が6度目になる。

ただ、最後に登ってから7年が経過した。

またこの旧道は、Hiromiにとって今年の目標の中の一つであった。

まだこのルートから登ったことのないHiromiゆえ、

その願いは叶えさせなくてはならず、この時期までチャンスをうかがってきた。

と言うのも、このブログ中で何度か触れてきたが、

Hiromiは人が考えつかないほどの汗を体外に放出する。

従ってこの長くきついルートで、暑い時期には着替えや飲料水を持ちきれない。

それで気温が低い時期で、晴天となる日を待っていた。

 日曜の朝5時45分、

「太陽の里」キャンプ場の駐車場をスタート。

もう朝は冷え込む。

「太陽の里」の広い芝生を抜けると林道入口だ。

かつてはそこに入山届けポストが設置されていたが、

今は林道終点に移設されていた。

代わりにシカの侵入を防ぐ柵とゲートが出来ていた。

林道を歩き出すと紅葉が美しい。

これは新道の下山で紅葉を楽しめると確信!

  6時05分、登山口(林道終点)。

先行者の車が一台止められていた。

Hiromiが入山届けを記入していると、トレラン姿の男性が一名やってきた。

そしてそのまま登山道を走っていった。

ここから「ユーフレ小屋」分岐までは勇振川に沿った登山道を歩く。

それは高巻きの繰り返しで、かなりのアップダウンを強いられる。

沢筋を見ると水量はそれほどでもなく、川原も露出している。

沢筋を歩き通せないこともないように思える。

しかしこのルートで時間を浪費するわけにはいかないので、

素直に高巻きを繰り返して進む。

と、突然先ほどのトレラン男性が戻ってきた。

「この先でピンクテープがなくなっちゃったんで戻ってきました。」

何も問題ないから先に進むように諭すと、

「ありがとうございます、ど素人なもんですから」と言って走っていった。

  ルートは「ユーフレ小屋」分岐を過ぎると勇振川から離れ、

徐々に斜度が増してくる。

そして沢形の石がゴロゴロして歩きにくい急登に耐えていくと、

背後にV字谷の景色が広がり出す。

しかし当面の目標である北尾根の頭はまだ先だ。

この頃になると暑い暑いと言うHiromiが、ズボンの下を切り離して短パン姿になった。

この自称「短パンの女王」は、この時期になっても信念を貫く、

と言うか癖が抜けない。

 

右手前方に見えていた『槙柏山』の高度と位置により、

現在置かれている自らの位置が確認できる。

はっきり言ってしまえば、その『槙柏山』を超える標高に達しなきゃならないし、

『槙柏山』が背後に見えるようになるまで、

奥へ奥へ(西へ西へ)と進まなきゃならないわけだ。

そんなきつい登リに耐えて、

9時05分、CO.1,270で北尾根稜線上。

この尾根を南下すると『芦別岳』に至り、

北上すると『御茶々岳』を越え、「極楽平」を経て『松籟山』や『中天狗』、

『布部岳』などに足を運ぶことができる。

積雪期の話しではあるが。

  尾根の頭からは西側に『崕山』、『小天狗』、『中岳』などが、

すぐそばに望まれ、登行意欲を掻き立てられる。

そして南の進行方向には「1,444mP」がドーンと構えており、

その登行のきつさを否応なく見せつける。

またこの高度になると先日降った雪が残っている。

そんな残雪の中を我らが「短パンの女王」は、元気にスタスタと登って行く。

しかし辺りは雪と冷たく濃いガスに包まれだしたので、

Hiromiには着替えを命じ、私はゆっくり先に進んだ。

この着替えは結構時間を要するもので、こちらの体温が下がってしまう。

それでもこの日はアウターを着込むほどではなく・・・

しばらく待っていると、乾いた衣服に着替えたHiromiがすっきりした表情で、

これから後方へ後方へと遠ざかって行く「夫婦岩」を背に登ってきた。

さて、ここからがまだ遠い。

この後顕著な「1,457mP」、「1,579mP」を越えて行くのだが、

これらのアップダウンがきつい。

ただ、途中からガスが晴れ出し、見事な山岳風景を目にできる。 

そんな風景を目にしたHiromiが、

「ここは大雪や日高とはまた違った景色が楽しめるねえ」とつぶやいた。

ほぉ~、少しはわかってきたじゃねえか・・・

 

 この後は危険地帯もある。

「1,457mP」から一旦深く下降する。

そしてその登り返しが急で、登攀的な場面もあり、

そこに雪がかぶって滑りやすくなっているので、

Hiromiを見ていてヒヤヒヤする箇所あり!

一人でここを登っている時には危険もなにも感じていなかったのに、

人を連れて登るとその難しさがわかる。

また、正直私も初めて怖いと感じた箇所があった。

加齢とともにバランス感覚が低下している。

そのせいだと思うが、

前述の通り今まで何も感じなかったところで恐怖を感ずる。

今回は雪で滑りやすくなっていたので致し方あるまい。

 

 このルートの核心部を過ぎると、

あとは広い台地に出、『芦別岳』の基部を目指して歩く。

そして最後は初歩の登攀で頂上に至るが、

ここでもやはり少量の雪ではあるが緊張させられた。

慎重に登り詰め、

11時45分、『芦別岳』。

すっかりガスが晴れてくれた。

このルートを今年の目標の一つにしていたHiromiが、

達成感を得て私に握手を求めてきた。

「ありがとうございます!」

でも、そんな神妙な気持ちなんか、10分ともたないけどねえ~

  頂上は寒い。

すぐに新道を下山開始。

直下の『雲峰山』で昼食タイム。

その後淡々と下りながら、麓一帯の紅葉を楽しみにする。

そしてその期待は決して裏切られることがなかった。

もう登山口に近くなってからだが、色とりどりの紅葉に包まれて癒されるぅ~

写真を撮りまくり!

そんな美しい紅葉を眺めながら新道登山口に下り立ち、

14時30分、駐車地。

 

 それから片付けを済ませて車を走らせたが、

いつもよりずいぶん遅い19時近くからの「サイゼリヤ」となった。

そこには達成感で満たされたHiromiがいた。

だけど変なこと言うんだよねえ。

もう帰り際、ドリンクバーで最後の飲み物を取りに行くHiromiが言った言葉、

「最後にもう一杯汲んでくるかな」

おいっ、うんこ汲みじゃねえんだからっ!

 

 

 

 

 

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