<筑波山の風景・11>
V字谷
「筑波で沢登」というのを聞いたのは、そう遠い昔ではない。
えっ、筑波で沢登なんてトコがあるの?
というのが、正直な感想だった。
確かに沢はいくつもあるし、それを登れば沢登りなんだろう。
しかし、そこに価値は見出せない。
さてはて、真価は如何に。
V字谷は筑波の沢にあって他になく切れ込んだ谷を形成する。
残念ながら、岩くずに埋もれ、倒木も多く決してスッキリしてはいない。
しかし、スラブや巨石の積み重なりは一見の価値はある。
登攀というには大げさだが、巨石をひとつふたつと越えていく楽しさ、
道読みの楽しさがある。
また、山中の自然の造形や山の成立ちに触れるのはこの上なく楽しい。
普段は敬遠しがちな夏の筑波なら、この登路は避暑ともなることだろう。
とはいえ、安易に取り付くものではないが。
長い歴史の中で沢は登路として活用されてきた。
筑波にあっても、登山道が整備される以前はそうであったに違いない。
「筑波の困難なル-ト」という風評よりは、山としての痕跡に重きを置きたい。
sak