2016/4/1 八ヶ岳・ショルダ-リッジ左
「いよいよだな」と彼は言った。
それは、いよいよ登っていない八ヶ岳のバリエ-ションがなくなってきた、ということだ。
「安心してください」とsakは言う。
それは、まだ1本残っているではないですか、ということだ。
まだ1本ある。
まだ終わっちゃいないのだ。
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昨日の心地いい疲労感は残しつつ、天気も上々。気分も上々。
パ-トナ-のsztさんのモチベ-ションは高い。
「行け。振り返るな」
文三郎尾根をボトボト歩く。
最初の急登が一段落したあたり、主稜取付きの一段下から赤岳沢に下降、トラバ-ス。
アタリをつけておいた尾根に乗る。
下部は急な雪斜面をノ-ザイルで。
最後、木登りを交えた小岩の登りはチョット緊張。
初心者がある場合はロ-プを出した方がいいかもしれない。
大岩壁下でロ-プを出す。
隣に主稜パ-ティ-が見える。
1P sak
大岩壁は左右どちらも登られている。
ここは岩壁基部を右へ。ミックス帯を行く。
雪もうっすらで脆いので慎重に。
小リッジを乗り越え、ルンゼ状を詰める。
脆い。そして中間支点は見当たらない。
心理的にタフなピッチ。
ルンゼ状を詰めあがった所にある残置ハ-ケンでピッチ切り。
2P szt
露岩~ハイマツ~雪壁
リッジに乗る。
3P sak
切れたリッジだが、傾斜はない。
スタンス、ホ-ルドは豊富。
リッジが立ってくるが、その基部にハ-ケンがありそこで区切る。
4P szt
立ったリッジ。
スタンス、ホ-ルドは豊富。
一ケ所、スラブっぽいところに支点がある。
スタンスが少ないが、リスにアイゼンの前爪をひっかけて立ち込んだ。
リッジを抜けるところまで。
6P sak
草付、ハイマツ、露岩のミックスをザクザク登る。
7P szt
緩傾斜の雪壁をザクザク登る。
登れば登るほど傾斜は増す。
8P sak
続けて雪壁をザクザク登る。
左右に岩尾根が見える。
登りやすそうな右に見える尾根に乗ってひと登りで登山道に出た。
下山は赤岳を越えて、文三郎尾根。
ショルダ-リッジ左は八ヶ岳にあってル-トファインディングを楽しめる貴重な一本。
マイナ-なだけに、集中して向き合えて手頃なグレ-ド。
手頃、とはいえ支点の少なさはリスクも少なくない、ということ。
そういう登攀がここにはある。
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目の前の壁を乗り越える。
そう想えたのは、幻ではない。
まだ終わっちゃいないのだ。
「行っちまったのかい」
「安心してください」
それは夢に終わりはない、ということだ。
「次の一本、付き合いますから」
遠く、西の空に語りかける。
sak