<筑波山の風景・31>
名菓
日本全国、銘菓は数限りない。
由緒正しき歴史深いものから、新たな銘菓として世に出るものまで、数に暇ない。
銘菓とは、特別な名前を持つ上等な菓子。
一方、何気ない素朴なものでも、その由来や意味、信頼に根付いてその地の名物となり得る。
銘菓というよりは、名菓というべきか。
桜井菓子店のアンド-ナツ。
特別なものでも、何でもない。
感動的な味? そういうものでもない。
一つ一つ手作り。
カタチは不揃い。
それでも人を惹きつけるには理由がある。
一面の田圃の中、筑波山への真っ直ぐ伸びるつくば道を歩きながら頬張ってみる。
夕陽を背に畦道を歩いていたあの頃の光景を思い出す、とても懐かしい味。
素朴なお菓子ひとつでタイムマシンに乗ったかのような錯覚。
抒情に浸るのも悪くない。
sak