2018/9/13-15 ガンガラシバナ右方ルンゼ
【9/13】
ポツ、ポツと切ない音。
夜明け前、目覚めると雨が降っていた。
一年前もこんな天気が始まりだった。
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2017/9/9
正面にドシリと重靭な岩峰。
幾重にも積み重なった岩層。
広角に広がる岩壁。
そして一筋の水線。
遠く、流音が響く。
-ガンガラシバナ-
この地を知ったのはいつのころだったか。
「ハナ」というのは地元で「岩」の事を指すが、「ガンガラシ」の語源由来は不明。
歩けば歩くほど、その先が気になる。
でも今日はココまで。そう決めて、佇む。
孤独は深まれば深まるほど、自由だ。
爽快感があると言ってもいい。
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あれから一年。
どうにか朝方に雨は上がり、陽も差してきた。
「ようこそ、孤独と自由の世界へ」
ヘルメットの顎紐をセットする「カチッ」という音がスタ-トの合図だ。
一ノ俣沢最後の大滝
一ノ俣沢は序章。
大滝あり、ナメありで2時間半ほど。
概ね右岸に巻道がある。
上流部で支沢に入る。
左、左、右。
最後はトラロ-プ頼りに一ノ俣乗越。
踏み跡を拾ってアカバ沢を下ると40分ほどで今早出沢に出合う。
今早出沢
瀞場(今回は足がついた)
横滝(右岸小さく巻く)
ここからの今早出沢は癒し系。
瀬と渕、時々滝場。
概ねヘツリと小さな巻きで通過する。
岩峰が見えた
初日の幕場
そして、重靭な岩峰。
二俣手前右岸の草地に幕を求め、あとは自由を満喫する。
ガンガラシバナのシルエット
【9/14】登攀
深夜に雨。
予想してはいたが、朝方まで鉛色の重たい雲と靄が岩峰を覆う。
「新潟県下越、日中は安定。夜半から雨も。」の予報に、割岩沢は諦める。
段々晴れてきた
陽が峰々の稜線を越える頃、靄も晴れ出立。
僅かで二俣、左俣に魚返りの大滝、右俣には右方ルンゼ。
写真では伝わらないであろう迫力は、何時も言葉にならない。
右方ルンゼ
「今日はココまで」
そう決めたあの時を越えて、一歩進む。
乾いた岩のフリクションは抜群。
ガバも多いが、時に細かい。
確実性だけに留意しながら行く。
二段目を見上げる
広いテラスから振り返る
最下段、二段目は水流左。ヌメっていてちょっと怖い。
そのまま一段上がって、広いテラス。
四段目のあたりから
水流を渡ってそこからは右を行く。
水流右ル-トの場合、上部のトイ状滝辺りが核心かと思う。
緊張で喉が渇く。
水流に近づくと岩は磨かれ、ホ-ルドスタンスも少ないので注意。
技術的に困難ではないが、容易でもない。
確保がないことで心理的にタフな登りとなる。
僅かな過ちが許されない。
雑念なく、次の一手だけに集中できる瞬間。
この時が一番いい。
上部トイ状の手前
「なんで登るの?」と、友人や同僚によく聞かれる。
言葉にはならないけど、たぶんこういう瞬間があるからではないか、とも思う。
最上段から覗き込む
最上部からの景観に青空が映える。
天然水が極めて旨い。
右股上部(ヤジロ尾根を望む)
下降は右岸側の小尾根へトラバ-ス。
しばらく薮を頼りに下降。
小尾根が岩壁に吸収されると、薮が途切れる。
ここから懸垂下降でわずかな灌木をつないでいく。
このあたりのル-トファインディングはなかなか面白い。
右方ルンゼを振り返る
滝下で大休止。
登る前よりチョットだけカッコよく見える右方ルンゼに別れを告げる。
アカバ沢の幕場
あとは天候リスクを考慮して、アカバ沢の幕場まで下山する。
焚火をやりたい気持ちはあったけど、薪も少なく蚊も不快だったのでお預けとした。
【9/15】下山
朝から雨。
しかも本降り。
今早出は本降り
昨日ここまで降りてきてよかったと、心底思う。
今早出沢は増水してはいなかったが、今頃上流部や割岩にいたら物凄いプレッシャ-だろう。
午後には回復の予報だったけど、下山を開始。
乗越への登りで喘いだ後、ドロドロで滑りやすい踏み跡を下る。
少し水量の多い一ノ俣沢を下降。
最後、右岸踏み跡への目印を見落とし一ノ又沢橋まで沢通しで下降。
どうりで見覚えのない滝場があったような。
一ノ又沢橋が見えた
林道に上がると、目前に我が愛車。
久しぶりの再会になんだかホっとする。
やっぱり「愛と平和」だわ。
sak