停滞
中山尾根は、2020年末にisiさんと南伊豆に行ったとき候補に挙がった。
sak自身は2005年にトレ-スした事があったが、無名峰南稜と併せて一泊というのも大アリだ。
まずはここに標を定め、禍中を凌ぐことにした。
とはいえ、文明社会の生活は居心地がいい。
休暇に部屋で映画や読書、山道具選びに耽るのもそれはそれで充実はする。
こうした生活習慣に浸ってしまうと、その標すら見失いかねない。
そうして山道具に散財したのも事実なのだが、消費も社会の役に立っているものと自分を納得させる。
だからこそ新しい道具たちの力を借りて、自分の背中を押すのだ。
2021/3/26 八ヶ岳西面・中山尾根
美濃戸口から歩いて、美濃戸。
南沢に入って、山の神で一休み。
久々の山行に加えて、密対策でそれぞれに幕を担ぎ、ガチャも含め重荷が身に堪える。
行者小屋で幕。
ようやく重荷から解放されたら、今度はガチャを身に着け中山尾根の取付きへ急登を行く。
トレ-スがあり、大変助かる。
取付きでロ-プを結ぶ。予報通り風が強い。
しかし、稜線に雪煙は見えないから何とかなるはずだ。
isiさんから登攀開始。
中山尾根の核心はこの1ピッチ目だと、私は思っている。
まだ体が登攀に馴染んでいない上に、傾斜は立ち良きホ-ルドが少ない。
isiさんは着実に高度を稼ぐ。
2ピッチ目の凹角は「アイゼンのツァケをここにおいてね」と言わんばかりのスタンスがある。
今日は氷雪がないけど、このピッチで乗雪やベルグラがあれば難易度がワンランク上がるだろう。
その上は雪稜。
折からの強風もありスタカットで行く。
上部岩壁の凹角から凹角ハング。
いわゆる核心だが、15年前の記憶がまるでない。
支点も豊富で慌てず探せばホ-ルドスタンスも多い。
isiさんはバックステップを使わず、被った岩をそのまま乗越てきた。
さすがだ。
しばらく雪稜。
最後の小ハングが意外と手こずった。
その大きな理由は、乗越すところに支点がないから。
ちょっとの勇気と思い切りが必要。
そして、異様にロ-プが重くなってしまった。
トサカ状岩峰を目前にリッジを跨ぎ、バンドをトラバ-ス。
登山道はすぐそこだ。
風を避けて一休み。
岩に雪なく快適な登攀となった。
支点が埋もれることがない上、ホ-ルド探索に手間暇かからないのは助かる。
登山道を赤岳方面へ。
まずは1本。
地蔵菩薩に再会を誓い、尾根を下れば今宵の幕が待っている。
sak