2021/3/27 八ヶ岳西面・無名峰南稜
行者の幕場を6時発。
中山尾根を終え、それぞれのテントに引きこもる前に共有しておく。
ヘッデンを灯して取付きまで、とも考えた。
しかし北沢右俣の各ル-トは視界が無いと取付きを取り違えやすい。
過去の経験を踏まえて、明るくなってからの出発とした。
行者小屋から中山乗越を越えて九十九折を下り、右手の沢筋に入る。
僅かにトレ-スがあり、遡上にラッセルの苦労はなかった。
右岸二本目の沢に入る。これが三叉峰ルンゼ。
雪は締まっており、トレ-スの痕跡もあって苦労はない。
しばらくして左にルンゼを分ける開けた場所。
おそらくここが無名峰南稜「新ル-ト」への取付きだろう。
しかし、尾根まで雪が繋がっていないことに加えて、尾根に乗る直前が脆く悪そう。
現在地に確信を得ることも含めて三叉峰ルンゼ大滝が視認できるところまで行くことにした。
三叉峰ルンゼ大滝(奥)
旧ル-トの取りつきコル
大滝手前まで来ると左にコル。
ここが旧ル-トの取付きだろう。
雪もつながっており容易に上がれそうなので、旧ル-トから取付くことにした。
コルでロ-プを出し、isiさんから登攀開始。
1ピッチ目の露岩
1P
コルから脆い露岩を越えハイマツ帯。
小尾根を辿ると露岩に突き当たる。
先が読めないので、ここでピッチを切る。
支点は灌木のみ。(露岩でカムが使える)
2P
脆い露岩を直上、ホ-ルド・スタンス選定は慎重に。
小尾根に上がってその先に緩傾斜の脆いスラブ。
ロ-プはまだあるので急な草付(左上)に入る。
灌木が豊富で、草付&木登りピッチ。
時に被った草付を強引に登る。
支点はないので、灌木で取る
途中、ロ-プが足りなくなって立木でビレイ。
3P
草付を直上。
sakは左トラバ-スが良いのでは?と思ったがisiさんは直上していく。
これが、大正解。
岩壁にハンガ-ボルトが二カ所あり、新ル-トとの合流点であることが分かった。
左下方は脆い岩のトラバ-ス。
新ル-トの核心ともいえる岩壁基部のトラバ-スは見るからに悪い。
先ほど草付を左トラバ-スしていたら、この脆い岩の只中に出たと思われ安堵した。
新ルートのトラバ-ス(左下)
4ピッチ目の凹状
雪稜に出る
4P
正面岩壁凹状を行く。
岩壁には支点がないが、スタンスは得られるので慎重に。
上部灌木で支点を得て一安心。
草付をひと登りで開けた尾根に出る。
中間岩場の手前
5~7P
雪稜から岩塔へ
岩塔は左を回り込むようにして通過。
コンテでも良いだろう
8P
中間の岩場。
どっしりとした岩塔の基部から正面岩ルンゼを直上。
途中からバンドを左へ伝って草付~リッジへ。
支点はないので貧弱な灌木かカムで取る。
草付ではアイスバイルが心強い。
上部岩峰が見えた
9~10P
雪稜~ミックスを2ピッチ、最後の上部岩峰が見えてくる
11P
小岩峰を左から巻いて上部岩峰へ。
岩峰下部のチムニ-はホ-ルドも豊富で楽しい。
岩峰中間部のテラスまで
核心部のチムニ-(と、チョックストン)
12P
岩峰上部のチムニ-が無名峰南稜の核心。
被り気味のチムニ-にチョックストン。
支点と残置スリングがあって、A0通過。
チョックストン辺りは脆い部分もあるので注意。
isiさんはこのチョックストンに足をかけた時グラついたらしい。
いつも冷静な彼がかなり興奮気味だったのが事の次第を物語っていた。
核心を越え、ひと登りでハンガ-ボルトが二カ所。終了点だ。
目の高さの稜線に登山者を見る。
ここでロ-プを解き、歩いて登山道へ。
プアな残置や脆い岩場などアルパインらしさは中山尾根を遥かに凌ぐル-トだ。
八ヶ岳にあって無風状態、そしてこの陽気。
厳冬の壁だったら、今日のようにはいかないだろう。
13:45
ヘッデン間際の下山を予感しつつ、標を一つ重ねられた安堵。
まずは、お地蔵様との再会を果たさねばなるまい。
sak
↑私的備忘録(トポ)※PDFが開けます