新・本と映像の森 219 山本おさむ『赤狩り 1』小学館、2017年12月
ビッグコミックス、218ページ、定価本体552円
マンガ家山本おさむさんの最新作、いま3巻まで発売中。
アメリカ社会に吹き荒れた共産主義者狩り「赤狩り」を描いた作品。まだ始まりなので、どこまで行くのかわからないけど、とにかく読むべき作品です。
主人公たちは映画界の監督さんや脚本家さんや俳優さんら多数。いまのところ脚本家ドルトン・トランボと監督ウィリアム・ワイラーにスポットを当てている。でも、それだけでなくてFBI長官エドガー・フーバーや政治家や映画人もいっぱい出てくる。
もちろん歴史書やノンフィクションではない。作者は記録にない部分をかなり「作って」描いているのには注意。
作者は最初に3つの映画を提示している。「猿の惑星」(1968年)・「エデンの東」(1954年)・「ローマの休日」(1853年)だから、物語は少なくとも60年台野968年まではいくということだと思う。
物語は映画作りの最初、脚本書きの部分と実際の撮影場面でまず進行していく。それにかぶさって「非米活動委員会」の審問の場が重なっていく。
本作の注目すべき点は、以上の2層に重なって原水爆開発というドラマが重なってくることだと思う。
第1巻は「第1章 「ローマの休日」と赤狩りの始まり」。1947年10月に開かれたアメリカ議会聴聞会と1952年の「ローマの休日」のローマロケのシーンが主です。
なぜ1947年と1952年、5年も違う場面が同時に描かれるんでしょうか?ボクは、これは明らかなことだと思います。
Vol.1 蠢く者達
Vol.2 19人の標的
Vol.3 ミス・ワイマンの崩壊
Vol.4 FBIファイル
Vol.5 開戦前夜
Vol.6 オードリーの靴
Vol.7 聴聞会
Vol.8 ワイラーの孤立
1つだけボクの前からの疑問。なぜアメリカ共産党が総攻撃をかけられているのに、アメリカ共産党やアメリカ共産党中央委員会の反撃や指導の影もないのですか?無反撃?
誰かわかる人、ぜひご一報ください。
映画撮影のテクニックやほんとうのソ連スパイの話は、あとの巻のときに触れます。