本と映像の森 266 佐藤優さん著『甦るロシア帝国』<文春文庫>、2012年(原著2009年)、460ページ、定価本体771円+消費税5%
前に2冊を紹介しましたが、3冊目のこの本は「思想的自叙伝の形で、、ソ連崩壊について考察」した本です。私は、この本を読んで、リアルにソ連政府の高官や若者たちのリアルな行動と実際の思想を読み取ることができました。それは、日本人にとってもきわめて貴重なドキュメントだと思います。
主な内容は3つです。1つはソ連で知識人や政府高官たちはどう考え、どう生きていたか、という人間ドキュメント。
もう1つは、ソ連という大国がいかなるプロセスで崩壊したかというドキュメント。
最後の1つは、ひごろ、日本のマスコミでも学界でもほとんど話題にされない、地政学やユーラシア主義などの問題と、ロシア正教・カトリックなどのキリスト教神学などの問題です。
目次を以下に掲げます。
1 モスクワ大学哲学部
2 アフガニスタン帰還兵アルベルト
3 閉鎖秘密都市出身の女子学生
4 ソ連科学アカデミー民族学研究所
5 エトノクラチヤ
6 バクー事件
7 主権宣言
8 境界線上の人間
9 もう一度マルクスへ
あとがき
プーチン論 甦った帝国主義者の本性
書名リスト
人名索引
8章、9章が1991年8月の「クーデター」に至るプロセスとその「失敗」のプロセスをリアルに描いています。
さて、佐藤優さんが真に心配するのは、当然のことですが、「チェルノブイリ爆発」後に「瓦解したソ連帝国」のことではありません。
佐藤優さんが心配するのは「福島爆発」後に、いまだ瓦解の危機を自覚していない「日本国」のことだと思います。
戦後自民党政治の「右翼的徹底」で事態を打開しようとしている安部首相は、ソ連共産党の「守旧派」に等しいのでしょうか?