本と映像の森 233 菅原千恵子さん著『宮沢賢治の青春』角川文庫、角川書店、1997年(平成9年)11月25日初版~2010年(平成22年)11月15日3版、文庫版(A6版)、305ページ、定価本体552円+消費税
「銀河鉄道の夜」の主人公ジョバンニが宮沢賢治その人であることに異論はないようです。では「カンパネルラ」は誰か?
これまで賢治さんの妹トシさん説が多かったのですが、菅原千恵子さんは、新たに発見された、盛岡高等農林での親友・保坂さんと賢治さんの手紙を元に、賢治さんの創作が、保坂さんとの交友と別れの体験を経て書かれていることをつきとめたのです。
この本で「気圏」や「修羅」、「電信柱」の謎も解くことができます。
菅原さんは「銀河鉄道の夜」で、ジョバンニが「どこでもいける切符」を持っているのは、つまりジョバンニ賢治が、行き先=目的が不明なので、他人のために死んで天国へ行くカンパネルラとは違って、「どこでも行ける」「どこへ行くか分からない」切符を持っているのだと推測しています。
良質の推理小説ですね。
ぼくは、この本を読んで、「カンパネルラ」が保坂さんであることが真実であると確信しました。それにしても、1990年代に出た本なのに、いまだに、このあいだのテレビでは、賢治さんとトシさんのことしか放映されていません。