1.腓腹筋外側頭部が痛む患者
腰殿部に症状はないのに、正座時に腓腹筋外側頭部が痛むという患者の治療を何例か経験した。正座しても膝関節痛はないのだが、この部が痛むという。この部は腓腹筋外側頭のトリガーポイントであろう。
.
2.腓腹筋外側頭部が痛む患者の針灸治療
膝窩部の痛みに対しては、伏臥位にて委中附近の症状部に刺針するのが一般的だろうが、この方法では改善できない。膝を90度屈曲位にして出現する痛む局部の硬結に刺針すると、比較的簡単に膝窩痛がとれる。このことは本ブログで報告済である。
※膝窩部の痛みで、そこに筋緊張が確認できる場合、これを「膝窩筋腱炎」という名称をネットで与えることを知った。
腓腹筋外側頭部痛の場合も同様に、膝屈曲位で腓腹筋外側頭部の症状部に、寸6#2程度で軽い手技針を施すと、治療直後から改善することが多い。
3.小殿筋トリガーポイントの放散痛部位ではないのか?
最近、59歳女性の患者を治療する機会があった。多愁訴だが、その一つに「膝の裏にモノがはさまっているようだ」との訴えがあった。膝窩を診察すると、ベーカー嚢腫はなく、圧痛点も少ないので膝窩筋腱炎ではなく、坐骨神経痛にも該当しなかった。委中周りのシコリに刺針しても治療無効だった。そこで腓腹筋外側頭部の筋痛として捉え、尻と下腿の間にマクラを挟んだ状態で正座させ、腓腹筋外側頭の圧痛点に刺針し、症状軽減した。なお、通常の正座位ではなく、膝裏にマクラを挟んだのは、正座をしても膝痛となるのではなく、腓腹筋への刺針をしやすくするための工夫である。
ただ、来院する度にこのような治療をしているわけで、症状をもたらしている根本があるのではないか、と思った。本患者は外臀部のコリも強く訴えていることから、小殿筋トリガーの放散痛として腓腹筋外側頭部の異物感が生じているのではいだろうか? 本患者にしても小殿筋に強度の筋硬結をみたので、横座り位で居髎に深刺を併用している。
小殿筋と中殿筋への刺針は、私オリジナルの横座り位からの居髎深刺を行うことで、治療の手応えを感じた。(側臥位で居髎深刺ではシコリに当たらなかった)。小殿筋のコリと腓腹筋のコリの間には相関性があるのかもしれない。なお中殿筋TPと小殿筋TPは、いずれも臀下肢部に出現するが、中殿筋の放散痛は膝関節より上に出現し、小殿筋の放散痛は、膝関節を越えて下肢に出現するという区別がある。ただし実際の治療にあたっては、横座り位で、3寸#10番くらいの針で、居髎から直刺して深部にある筋硬結に当てることが重要であり、中殿筋と小殿筋の鑑別はたいして重要な要素とはならないだろう。
居髎の取穴:上前腸骨棘と大転子を結んだ線を3等分し、上前腸骨棘側から1/3の処。
大腿外側痛の病態把握と針灸治療 2019.6.8 ブロク
小殿筋刺針の技法
https://blog.goo.ne.jp/ango-shinkyu/e/03c8b1fc1f9c88bc3814afbb3daad2a8
5.腓骨頭直下の痛みは膝窩筋の放散痛由来か?
右足の最近腓骨頭直下で、陽陵泉の下方1寸あたりが、膝の曲げ伸ばしの際に痛むという患者が、立て続けに2名来院した。トレーニングやりすぎが原因だという。
局所を触診しても圧痛硬結がなく、試しに刺針して足関節の自動運動をやらせてみたが、やはりこの部痛みは改善しなかった。
そこで、小殿筋放散痛、梨状筋の放散痛を考え、居髎と坐骨神経ブロック点に刺針し、症状部に響かせてみた。そして膝の自動運動をやらせてみると、やや有効だった。
しかしもっとスパッと治療できるのではないかと考え、正座位で上述の腓腹筋外側頭の圧痛をみると非常に痛がった。そこで正座位で尻と下腿の間にマクラを挟んだ状態で、腓腹筋外側頭を触診すると明確な圧痛点を発見し、手技針してみると、先ほどよりも膝の曲げ伸ばしが楽にできるようだった。そこでさらに、立膝位で、委中あたりの圧痛を探ると強い圧痛があったので、そこにも刺針した。
以上の経過から、患者の訴える腓骨筋外側頭の痛みは、実は膝窩筋の放散痛だったのではないかと理解した。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます