◆ツヅラフジのかご
◆写真 2
◆写真 1
◆写真 3
◆写真 4
◆写真 6
◆写真 7
2007年4月10日発行のART&CRAFT FORUM 44号に掲載した記事を改めて下記します。
編む植物図鑑 ③ 『アケビ科・ツヅラフジ科』 高宮紀子
◆アケビ:
2007年4月10日発行のART&CRAFT FORUM 44号に掲載した記事を改めて下記します。
編む植物図鑑 ③ 『アケビ科・ツヅラフジ科』 高宮紀子
◆アケビ:
写真1は私の庭の現在のミツバアケビです。去年、家の電話線が入っているポールに登り始め、今年はどこまで登ろうか、といったところです。もう植えて永いのですが、その間、何度も隣りの木に登っては切られていました。金属のポールに最初はあまり興味が無かったようでしたが、ついに登り始めました。もう芽が出ていますが、まだ寒いようです。ミツバアケビは落葉するので、この写真では葉がありませんが、名前の通り三枚の葉があります。
写真2がミツバアケビです。造形作家のHさんに連れていってもらったアケビを栽培している農家で写しました。ここではいけ花の花材としてツルの先端の所を出荷しています。畑では骨組を建てて何本も紐を縦方向に張り、その紐にツルの先端を巻きつかせて、くるくるとなった先を作るのです。ツルの先は上へ上へと螺旋状に探りながら、何かに掴って登っていくので、チャンス!とばかりに紐をよじ登ります。これがぐるぐる巻いた形になります。
このアケビは半分栽培しているようなものなので太さもそろっていますが、山のアケビは太さがいろいろあります。手では曲がらない太さのものや細いランナーまで、いろいろです。
この農家では、ツルの先は売れるけれども、下のツルが売れない。なんとかしてかごを編めないだろうか、ということでかごに使えるか試してみることになりました。農家のツルはよじ登ったものもあるので、ずいぶんと長い時間水につけて柔らかくする必要がありました。編めないことはなく慣れれば大丈夫ですが、商品となると難しいか、という結果でした。
かごを編むアケビはミツバアケビ、ゴヨウアケビです。写真3のツルは売っているもの。小田原のYさんが見つけてくれました。アケビの種類はわかりませんが、細くて使いやすそうなものです。かご用のツルを採るのは、日当たりの好い斜面とか水分の多そうな日影などを探します。地面に這っていて根を所々で出しているランナーと呼ばれるツル、あるいはそこから分岐している細いツルを採ります。採る時期は地域によって違いますが、一般にはツルが太った晩秋や冬と言われます。9月ごろ葉がついている間に採るという地域もあります。一般には寒い所のアケビは赤みがあって綺麗だと言われますが、入手がむつかしい。ツルは外皮が付いたまま編むか、皮をとって編む所もあります。野沢温泉のアケビの鳩車が有名ですが、その他にも皮をむいてかごを編む所があります。ツルは採ってきたら、よほどの汚れがない限り洗わず、そのまま輪にして乾燥します。何週間かしたら、水分が抜けているのがわかるようになるのでそのまま保存します。
アケビ科の仲間には、アケビ、ミツバアケビ、ゴヨウアケビそして、ムベというものがあります。ムベはツルでかごを編むのはむつかしい。あまり柔軟性はありません。家の近くによく散歩する里山があります。里山といっても農家はなく近くまで宅地がせまっているような小さな山ですが、そこにゴヨウアケビの小さなのが少し生えています。ゴヨウアケビはアケビとミツバアケビとの雑種だそうですが、小さな手の平のような5枚の葉が出ています。編む前にアケビは水に一晩浸けて柔らかくしますが、他のツルに比べて細くて硬く弾力に富んでいます。だからいろいろな編み方ができるようです。写真4は青森のループ状に編んだかごの部分です。青森、秋田、岩手、宮城などの東北や福島では今でもアケビ細工がさかんに行われている所があるようです。アケビが伝統的なかごの材料になったのは、その丈夫さだろうと思います。特にカビに関して比較的強いと思います。
◆ツヅラフジ:
かごを編むツルの中でも一番長いのはツヅラフジじゃないかと思っています。実際にはもっと長いものがありそうですが、採った時にたどっていくのに苦労したから、そう思っています。ツヅラフジ科の植物で、かごを編むのに使われてきました。ツヅラフジという植物は昔から薬草として使われたようです。他のかごを編むツルも薬草の部類に入っているものが多いです。私は感じなかったのですが、編んでいて手がすべすべする、と言う人もいます。私がかごの素材として使ったことがあるのはオオツヅラフジ、アオツヅラフジ。
オオツヅラフジとアオツヅラフジをどう見分けたらいいか、と考えたことがあります。とにかく太さ、葉の形が違いますのですぐわかりますが、友人にアオツヅラフジにもものすごく太いのがある、という人がいて判別がむつかしい場合もあるのではと思いました。二つのツルとも、真っ青な緑色をしています。アオツヅラフジは太くなると褐色が多くなりますが、オオツヅラフジは割りと太い所でも同じ色をしています。
写真5はツヅラフジのかごです。宮崎県のもの。ツヅラフジは太いのですが、柔らかくて編みやすいツルです。乾燥すると黒っぽい色に変わるのが特徴。このかごは名人が編んだので美しく真ん中が膨らんだ形ですが、この形に編むのはむつかしそうです。腰につける紐がついていました。
アオツヅラフジはオオツヅラフジに比べたらとても細いのですが、柔軟性もあるので作品に使ったりしています。もちろん伝統的なかごを編む材料でもあります。写真6は青い実がなっているところです。とても日当たりのいい所に生えていました。晩秋だったので、葉が黄色くなっていてハートの形が際立っていました。
このツルとよく間違えるのはヤマイモです。ヤマイモの葉も同じような形だし、茎も青いので間違えます。アオツヅラフジを採ったことが無かった時、これだ!と思って採ったのがヤマイモ。その時は満足した気分で帰ったのですが、しばらく乾燥させると、ずいぶんと痩せてしまい、間違えたことがようやくわかりました。今となってはいい思い出ですが、悔しくてヤマイモのツルで作品を作りました。アオツヅラフジは細いツルが使えるのでいいのですが、あまり先端は丈夫ではありません。細いところばかりで作品を作って、何年かしたらぼきぼき折れてきてしまった、ということもありました。
◆オカメヅタ:
以前日比谷公園でかご作りのワークショップを行うことになってオカメヅタを使ったことがあります。このツタは庭木でもありますが、ウコギ科の仲間で日陰に生育することから公園の大樹の下などに植えられていました。これをかごの素材にしてみたのですが、柔らかく編みやすかったです。公園のあちこちに生えているのでいくらでも採ることができたのも便利でした。もちろん、伝統的なかごの素材ではありませんが、公園で見るツタを使うなんて楽しそう、ということでOKになりました。かごの素材として使えるか使えないかは、乾燥した後にかかっています。乾燥しても萎れなく、水につければまた柔軟になる、そういうツルが伝統的なかごを作る材料になったわけです。その一方で、半乾きにして、そのまま編むクズ、フジの例があります。オカメヅタは生のまま使うことになりました。細い先の方は乾燥すると萎れて頼りなくなるからです。生のまま束にして使ってもらうことで乾燥してもなんとか編み目を保つことができるのではと考えました。写真6はそのオカメヅタです。付いている葉は逆むけにしごいて全部落として編みました。