その国に行ってあちこち歩いてみると、路地の奥からも草むらからも、不思議な声が聞こえてきます。
ポシャホシャというその声は、訪れた人を嘲り笑うかのようです。
大きな足音をたててみると、はたぱたと飛び立つのは、おどろくほどたくさんの、人をばかにしたようなあの姿を見せるカマキリたちです。
空港の土産物売り場で、数を唱えた客のマージャン式和製語に、わざわざ真似をしながら鼻で笑ったのを見て、帰る人が飛び立つ間際に、もう来るまいと思わせて気分がよいのかと、最終悪印象を植え付けられたことがあります。
あの国の人がだいじにするという面子という言葉は、自分だけのためのもので、お互いのためのものではなくなっているということを、はっきり知らされました。
嘲笑の国では、なぜかそんなばからしいことだけが旅の記憶に残ります。