水の門

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歌集『カインの祈り』

澤本佳歩歌集『カインの祈り』
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作業所(Ⅱ)・十首

2010年10月30日 19時05分31秒 | 投稿歌
丸一日続いていた豪雨がやっと上がったので、昨日まとめておいた歌稿を先ほど投函してきました。
今回は二年ぶりに、「作業所」のテーマで歌を選びました。普段の私が一番色濃く出る題目です。9月の山梨県障害者文化展に出展した歌も二首 含めました。
かれこれ一年ほど「樹海」の支部には参加していないのですが、私がどういう立場にあるかというのは支部の方達にあまり理解されていません。今回の一連を提出したことで、私の日常が多少は伝わるのではないかと考えています。


作業所で若きの訛りに耳慣れて喉まで出かかる移住八年

作業所でジュースの瓶にシール貼り手先の冷える十月の末

ジャム瓶のシールの誤植に気付いても作業所にては黙し貼るのみ

スプーンの検品をして悴(かじか)んだ手が編み物の毛糸を慕う

マフラーの出来に売値を万と言う友の賛辞に眼の潤む

若き日に軛(くびき)負う幸説く「哀歌」 仲間に分かてず二年が過ぎた

作業所より足の遠のく子の歌が載った『みぎわ』に皆して見入る

作業所の主(ぬし)になることないと言う母の言葉に立つ瀬があらず

百円の工賃の重み噛み締める 仕事を終えてジュース買うとき

作業所は卒業しゆく場と語る師に諾(うべな)いつつ浮かぶ面々


(2010年11月10日締め切り分、『樹海』2011年1月号掲載予定)
コメント (4)
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