水の門

体内をながれるもの。ことば。音楽。飲みもの。スピリット。

歌集『カインの祈り』

澤本佳歩歌集『カインの祈り』
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アドヴェント2012(1)希望…『すみれ島』

2012年12月02日 05時31分17秒 | クリスマスに寄せて
 今年もアドヴェント(待降節)の季節がやってきました。アドヴェントは、イエス様の到来を待ち望んで過ごす四週間です。教会では、4本のアドヴェント・クランツ(ろうそく)に毎日曜日、一本ずつ点火していきます。ろうそくにはそれぞれ、「希望」「平和」「愛」「喜び」という意味が込められていて、礼拝では点火の際に それにちなんだ短い聖句が朗唱されます。今年のアドヴェントは、このろうそくに込められた意味を思い巡らす時にしたいと思います。このたび絵本の読み聞かせに長く携わっているAさんのご協力を得て、たくさんの絵本を教えていただきましたので、その中から クランツの意味を考えるのにふさわしいものを選んで ご紹介いたします。

★ 希望「希望はわたしたちを欺くことがありません。」(ローマの信徒への手紙5章5節)
          *     *     *
 第一週目の今日のクランツは、「希望」のろうそく。ご紹介する本は、今西祐行・文、松永禎郎・絵による『すみれ島』です。
 時は昭和20年の春、九州の海辺の学校の子供達が 近くの航空隊に、手紙と皆で摘んだすみれの花束を届けました。数日後、学校には兵士の一人からお礼の手紙が。そこには、特攻隊の出撃前夜に すみれの花ですもう遊びをして楽しんだと綴られていました。手紙を読んでくれた先生は、この兵士が南の島で戦死したことを涙ながらに語りました。その日から子供達は野原にすみれが無くなるまで、花束を作って航空隊に贈り続けました。戦争が終わって幾年かのち、南洋の小さな無人島の一つに、一面のすみれが咲くようになっということです。子供達が兵士らに贈った花の種が混じっていたのかもしれません。

 何時間か後、確実に死が待ち受けている兵士達にとって、すみれの花と戯れる遊びは、いくらか心の慰めになったことでしょう。
 ホセア書2章16~17節にこう書いてあります。「それゆえ、わたしは彼女(注・イスラエルの人々)をいざなって/荒れ野に導き、その心に語りかけよう。/そのところで、わたしはぶどう園を与え/アコル(苦悩)の谷を希望の門として与える。そこで、彼女はわたしにこたえる。おとめであったとき/エジプトの地から上ってきた日のように」。
 若者達が洋上に散っていったことは悲しい事実です。しかし、子供達から平和の象徴のような すみれの花を受け取って旅立ち、南の島にその種を残してくれました。その重みを今更ながらに噛み締めます。
 戦後、「特攻華(とっこうはな)の会」という会が発足し、特攻花の種を増やして配布し合い、兵士達を忍び、平和を考える取り組みをしているそうです。
 続くホセア書2章20節には、「その日には、わたしは彼らのために/野の獣、空の鳥、土を這うものと契約を結ぶ。弓も剣も戦いもこの地から絶ち/彼らを安らかに憩わせる」とあります。
 若い命の犠牲と共に蒔かれた花が、人々の間に希望の種を植え付け続けてくれることを願ってやみません。

 今日ご紹介するクリスマス・アルバムは、チェーザレ・ピッコの『Christmas Tunes』。リリカルな軽いジャズのピアノソロです。すみれの花のように心の襞に沁みわたる音楽です。
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