この9月から南昌市郊外の大学で日本語を教えている。
1年・2年は「日本語会話」、3年「日本文学」「日本語作文」、4年「商務日語」、と幅広い内容だ。個人的には3年生の授業を一番楽しんでいる。「日本文学」と「作文」のどちらも、大好きだから。
「日本文学」は芥川龍之介の「鼻」からスタートした。作者の文構成のわかりやすさに感謝しながら読み進んだ。今日は、中国の学生達が書いた「禅智内供への手紙」を何通か紹介しよう。
その1〈劉○婷〉 内供さん、初めて「鼻」を読んだときは、内供さんの心が分からなかった。思ったのはただ、顔を洗うときどうするの?寝るとき鼻はどこにおいてるの?ネズミのいばりは、どうやって収集するの?…ことごとく浅薄な考えだ。内供さんのつらさは全然分からなかった。
しかし、何回も読んだあと、私は少しずつ内供さんの苦しみが見えてきた。内供さんのこの鼻は、実はこの暗闇社会への皮肉だと思う。内供さんは鼻のためにどんなに頑張っているのか、世の中の人は、みんな無視して、ただ笑って笑って、本当に冷たいんだなあ。この社会は病んでいる。
でも、内供さん、しっかりしなさい。もう大丈夫だ。現代に生きている私たちはあなたを笑わない。みんな内供さんのことに同情している。現代は医学も高いレベルに達してきた。だから内供さん、早く私の夢の中に入っていらっしゃい。私が医者に連れて行ってあげる。
その2〈肖△梅〉 一筆申し上げます。山々もすっかり秋の装いになり、紅葉の色が燃えるようです。いよいよご健勝のこととお慶び申し上げます。おかげさまで、こちらはみんな元気です。
私は○大日本語学科の学生です。私は芥川龍之介の小説から、あなたのことを知り、心であなたにいろいろな言葉を伝えたいんです。
人生は二度ない。自分の楽しみのために生きていいです。他人の観点を気にしすぎる必要はないです。人間の心には互いに矛盾した二つの感情がある---一つは他人の不幸に同情する心、もう一つは利己主義です。それを全部消すのは不可能だと思います。だから、あなたは他人の態度をいつまでも気にすれば、憂鬱は永遠で、楽しいときはないかも知れなせん。人間は誰でも完璧ではありません。自信を持って頑張って生活しましょう。今日はここまでにします。ご多幸を心からお祈りします。
その3〈王□林〉 禅智さん、こんにちは。あなたの悩みは良く理解できます。私は自分の髪型が良くないということをいつも悩んでいます。(後ろの人は、私の髪を笑っている)という心の声はよくあります。でも、本当は私は気にしすぎでしょう。世の中、完璧な人間はいないと思います。
だから、自分の欠点を悩むことは必要ではないと思います。自分をやればいいんじゃないでしょうか。
この世の中はそれぞれ、きれいな人もみにくい人もいる。でも絶対的にきれいな人と絶対的にみにくい人はいません。きれいな人というのは、彼(女)の容貌を皆が認めるということです。もし、人間の見る目が変化したら、きれいな人はみにくい人になるかも知れません。だから,自分の顔は自分らしいということを表しているだけです。人の目を気にするのは必要ではないです。もし、人の目を満足させるために、自分に嫌なことをするとしたら、それは自分を見失うということではないか。
世の中の人間は大抵利己的です。他人の欠点を笑うということを、楽しむ人もいます。これは他人より自分がえらいという自己満足的な心理を充足させているだけです。自分は何もしないくせに、このような人はばかばかしい。
自分の欠点を知る。これは必要だと思います。でも同時に、自分の利点も見つけなければなりません。自分の利点と欠点を知る。そして、生活を楽しむ。これが一番重要だと思います。
まだまだ紹介したい文がたくさんありますが、今日はこれくらいにします。これを読まれたみなさんはどうお感じになるでしょうか。日本語を学び始めて2年ちょっとの若者達の文を毎日読んでいて、私はいつも嬉しくなります。真っ直ぐな心を表現するために、言葉はそんなにたくさんなくてもいい。率直にすぱっと言えば、心にこんなに響くじゃないか!なんて思うのは我田引水かしら?
そして、全ての学生の文に共通して感じ取れるのは、温かくて真っ直ぐな心をもっていること、人生を真面目に、正面から見つめようとしていることだとおもうんだけど。
自分の若かった頃とエライ違いやなあ…、とおもわず未熟だった昔がフラッシュバックしました。
1年・2年は「日本語会話」、3年「日本文学」「日本語作文」、4年「商務日語」、と幅広い内容だ。個人的には3年生の授業を一番楽しんでいる。「日本文学」と「作文」のどちらも、大好きだから。
「日本文学」は芥川龍之介の「鼻」からスタートした。作者の文構成のわかりやすさに感謝しながら読み進んだ。今日は、中国の学生達が書いた「禅智内供への手紙」を何通か紹介しよう。
その1〈劉○婷〉 内供さん、初めて「鼻」を読んだときは、内供さんの心が分からなかった。思ったのはただ、顔を洗うときどうするの?寝るとき鼻はどこにおいてるの?ネズミのいばりは、どうやって収集するの?…ことごとく浅薄な考えだ。内供さんのつらさは全然分からなかった。
しかし、何回も読んだあと、私は少しずつ内供さんの苦しみが見えてきた。内供さんのこの鼻は、実はこの暗闇社会への皮肉だと思う。内供さんは鼻のためにどんなに頑張っているのか、世の中の人は、みんな無視して、ただ笑って笑って、本当に冷たいんだなあ。この社会は病んでいる。
でも、内供さん、しっかりしなさい。もう大丈夫だ。現代に生きている私たちはあなたを笑わない。みんな内供さんのことに同情している。現代は医学も高いレベルに達してきた。だから内供さん、早く私の夢の中に入っていらっしゃい。私が医者に連れて行ってあげる。
その2〈肖△梅〉 一筆申し上げます。山々もすっかり秋の装いになり、紅葉の色が燃えるようです。いよいよご健勝のこととお慶び申し上げます。おかげさまで、こちらはみんな元気です。
私は○大日本語学科の学生です。私は芥川龍之介の小説から、あなたのことを知り、心であなたにいろいろな言葉を伝えたいんです。
人生は二度ない。自分の楽しみのために生きていいです。他人の観点を気にしすぎる必要はないです。人間の心には互いに矛盾した二つの感情がある---一つは他人の不幸に同情する心、もう一つは利己主義です。それを全部消すのは不可能だと思います。だから、あなたは他人の態度をいつまでも気にすれば、憂鬱は永遠で、楽しいときはないかも知れなせん。人間は誰でも完璧ではありません。自信を持って頑張って生活しましょう。今日はここまでにします。ご多幸を心からお祈りします。
その3〈王□林〉 禅智さん、こんにちは。あなたの悩みは良く理解できます。私は自分の髪型が良くないということをいつも悩んでいます。(後ろの人は、私の髪を笑っている)という心の声はよくあります。でも、本当は私は気にしすぎでしょう。世の中、完璧な人間はいないと思います。
だから、自分の欠点を悩むことは必要ではないと思います。自分をやればいいんじゃないでしょうか。
この世の中はそれぞれ、きれいな人もみにくい人もいる。でも絶対的にきれいな人と絶対的にみにくい人はいません。きれいな人というのは、彼(女)の容貌を皆が認めるということです。もし、人間の見る目が変化したら、きれいな人はみにくい人になるかも知れません。だから,自分の顔は自分らしいということを表しているだけです。人の目を気にするのは必要ではないです。もし、人の目を満足させるために、自分に嫌なことをするとしたら、それは自分を見失うということではないか。
世の中の人間は大抵利己的です。他人の欠点を笑うということを、楽しむ人もいます。これは他人より自分がえらいという自己満足的な心理を充足させているだけです。自分は何もしないくせに、このような人はばかばかしい。
自分の欠点を知る。これは必要だと思います。でも同時に、自分の利点も見つけなければなりません。自分の利点と欠点を知る。そして、生活を楽しむ。これが一番重要だと思います。
まだまだ紹介したい文がたくさんありますが、今日はこれくらいにします。これを読まれたみなさんはどうお感じになるでしょうか。日本語を学び始めて2年ちょっとの若者達の文を毎日読んでいて、私はいつも嬉しくなります。真っ直ぐな心を表現するために、言葉はそんなにたくさんなくてもいい。率直にすぱっと言えば、心にこんなに響くじゃないか!なんて思うのは我田引水かしら?
そして、全ての学生の文に共通して感じ取れるのは、温かくて真っ直ぐな心をもっていること、人生を真面目に、正面から見つめようとしていることだとおもうんだけど。
自分の若かった頃とエライ違いやなあ…、とおもわず未熟だった昔がフラッシュバックしました。