今日、英字版読売新聞(DAILY YOMIURI:現在JAPAN NEWS)が
慰安婦についての英語記述で、1992年~2013年まで20年以上の間、
『慰安婦=日本軍によって売春を強要された女性たち』等と定義し、
85回にわたり「SEX SLAVE」と表現してきたことを
謝罪したという記事を見た。
時事通信 11月28日(金)8時59分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141128-00000021-jij-soci
皆さん、まさか、いくら何でもお忘れではないでしょう。
読売新聞が産経新聞とともに、ついこの間まで、
「日本軍が女性を性奴隷として扱ってきたかのごとく書き続けた朝日新聞の非国民性」
などと、最先頭に立って朝日新聞バッシングの旗振りをしていたことを。
英字版読売新聞(DAILY YOMIURI)は非常に多くの外国人に読まれてきた。
読売新聞社は自分も同様な内容を英語で記事にしながら、
国内向けに日本語で記事にした朝日新聞に対しては、
(ここまでやるか!)というほど声高に攻撃していた。
これ、日本人が英語読めないと思って、バカにしてるんちゃう?
しかし、国内向けと外国向けに慰安婦問題についての主張が異なることは、
何も読売に限らない。
当の安倍晋三首相がそうなのだ。具体例を挙げると……。
〈その1〉
2007年4月アメリカを訪問する前、
電話でブッシュ大統領に「十分慰安婦問題の謝罪」をしたというAFP通信の記事がある。
http://www.afpbb.com/articles/-/2206510?pid=1485757
―――――――――AFPBB NEWSここから引用
「従軍慰安婦問題の謝罪」、ブッシュ大統領が安倍首相を評価 - 米国」
(2007年04月04日 09:03 発信地:米国)
【ワシントンD.C./米国 4日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領は3日、旧日本軍によるいわゆる従軍慰安婦問題で、安倍晋三首相が謝罪したことについて評価した。
国家安全保障会議(NSC)のゴードン・ジョンドロー(Gordon Johndroe)報道官によると、2人はこの日、電話で会談した。ブッシュ大統領は、安倍首相が「旧日本軍が強制的に連行した証拠はない」との認識を示した自身の発言に対し前月の参議院予算委員会で謝罪したことについて、満足感を示し、「今の日本は第2次大戦時の日本ではない」とコメントしたという。
〈その2〉
共同通信によると、2007年4月、安倍首相はアメリカのニューズウィーク誌のインタビューに
次のように応じた。http://www.47news.jp/CN/200704/CN2007042101000289.html
――――――――――共同通信 ここから引用
「責任感じる」と謝罪表明 首相、慰安婦問題で
安倍晋三首相は21日までに米ニューズウィーク誌のインタビューに応じ、
第2次世界大戦中の従軍慰安婦問題について
「日本の首相として大変申し訳ないと思っている。
彼女らが非常に苦しい思いをしたことに対し責任を感じている」
と述べ、同問題では初めて「責任」に直接言及して強く謝罪の意を表明した。
慰安婦をめぐっては、米下院が日本政府への謝罪要求決議案を審議しているほか、
米紙ワシントン・ポストが社説で安倍首相を「責任を軽減しようとしている」と批判。
このため首相は26日からの初訪米を前に、
米国世論の沈静化を狙って発言したとみられる。
首相は「20世紀は世界各地で人権が侵害されたが、
日本にも責任があり、例外ではない」と強調。
同時に「われわれは常に自らの歴史に謙虚になり、
私たち自身の責任に思いを致さなければならない」とした上で、
旧日本軍の関与を認め謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話を
継承する考えを重ねて示した。
2007/04/21 04:05 【共同通信】
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―――――――――記事引用ここまで
このことから、安倍晋三首相が、外国向けと日本国内向け用に、二枚の舌を使っている、
即ち、嘘をついているということが分かる。
こんな不誠実な人間を私たち日本人は、国家のリーダーに奉っているのである。
どれほど国民が馬鹿にされているか、そろそろ気がつかないのだろうか。
慰安婦問題は、日本にとって恥ずべき、重苦しい問題だ。
(日本がそんなことをしなかったら良かったのに)と誰しも思う。
だからと言って(日本はそんなことをしなかった)とすり替えることは許されない。
歴史の真実というものがあるのだ。
最後に、長くなるが、日本の歴史学の専門家集団である歴史学研究会が、
「政府首脳と一部マスメディアによる日本軍「慰安婦」問題についての
不当な見解を批判する」声明を発表しているので参考に挙げさせていただく。
http://rekiken.jp/appeals/appeal20141015.html
声明 「政府首脳と一部マスメディアによる日本軍「慰安婦」問題についての不当な見解を批判する」
2014年8月5日・6日、『朝日新聞』は「慰安婦問題を考える」という検証記事を掲載し、吉田清治氏の証言にもとづく日本軍「慰安婦」の強制連行関 連の記事を取り消した。
一部の政治家やマスメディアの間では、この『朝日新聞』の記事取り消しによって、あたかも日本軍「慰安婦」の強制連行の事実が根拠 を失い、場合によっては、日本軍「慰安婦」に対する暴力の事実全般が否定されたかのような言動が相次いでいる。
とりわけ、安倍晋三首相をはじめとする政府 の首脳からそうした主張がなされていることは、憂慮に堪えない。
歴史学研究会は、昨年12月15日に、日本史研究会との合同シンポジウム「「慰安婦」問題を/から考える――軍事性暴力の世界史と日常世界」を開催す るなど、日本軍「慰安婦」問題について、歴史研究者の立場から検討を重ねてきた。
そうした立場から、この間の「慰安婦」問題に関する不当な見解に対し、以 下の5つの問題を指摘したい。
第一に、『朝日新聞』の「誤報」によって、「日本のイメージは大きく傷ついた。日本が国ぐるみで「性奴隷」にしたと、いわれなき中傷が世界で行われて いるのも事実だ」(10月3日の衆議院予算委員会)とする安倍首相の認識は、「慰安婦」の強制連行について、日本軍の関与を認めた河野談話を継承するとい う政策方針と矛盾している。
また、すでに首相自身も認めているように、河野談話は吉田証言を根拠にして作成されたものでないことは明らかであり、今回の 『朝日新聞』の記事取り消しによって、河野談話の根拠が崩れたことにはならない。
河野談話をかかげつつ、その実質を骨抜きにしようとする行為は、国内外の 人々を愚弄するものであり、加害の事実に真摯に向き合うことを求める東アジア諸国との緊張を、さらに高めるものと言わなければならない。
第二に、吉田証言の真偽にかかわらず、日本軍の関与のもとに強制連行された「慰安婦」が存在したことは明らかである。
吉田証言の内容については、 1990 年代の段階ですでに歴史研究者の間で矛盾が指摘されており、日本軍が関与した「慰安婦」の強制連行の事例については、同証言以外の史料に基づく研究が幅広 く進められてきた。
ここでいう強制連行は、安倍首相の言う「家に乗り込んでいって強引に連れて行った」(2006年10月6日、衆議院予算委員会)ケース (①)に限定されるべきものではない。
甘言や詐欺、脅迫、人身売買をともなう、本人の意思に反した連行(②)も含めて、強制連行と見なすべきである。
①に ついては、インドネシアのスマランや中国の山西省における事例などがすでに明らかになっており、朝鮮半島でも被害者の証言が多数存在する。
②については、 朝鮮半島をはじめ、広域にわたって行われたことが明らかになっており、その暴力性について疑問をはさむ余地はない。
これらの研究成果に照らすなら、吉田証 言の内容の真偽にかかわらず、日本軍が「慰安婦」の強制連行に深く関与し、実行したことは、揺るぎない事実である。
第三に、日本軍「慰安婦」問題で忘れてはならないのは、強制連行の事実だけではなく、「慰安婦」とされた女性たちが性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴 力を受けたことである。
近年の歴史研究では、動員過程の強制性のみならず、動員された後、居住・外出・廃業のいずれの自由も与えられず、性の相手を拒否す る自由も与えられていない、まさしく性奴隷の状態に置かれていたことが明らかにされている。
「慰安婦」の動員過程の強制性が問題であることはもちろんであ るが、性奴隷として人権を蹂躙された事実が問題であることが、重ねて強調されなければならない。
強制連行に関わる一証言の信憑性の否定によって、問題全体 が否定されるようなことは断じてあってはならない。
第四に、近年の歴史研究で明らかになってきたのは、そうした日本軍「慰安婦」に対する直接的な暴力だけではなく、「慰安婦」制度と日常的な植民地支 配、差別構造との連関性である。
性売買の契約に「合意」する場合があったとしても、その「合意」の背後にある不平等で不公正な構造の問題こそが問われなけ ればならない。
日常的に階級差別や民族差別、ジェンダー不平等を再生産する政治的・社会的背景を抜きにして、直接的な暴力の有無のみに焦点を絞ることは、 問題の全体像から目を背けることに他ならない。
第五に、一部のマスメディアによる『朝日新聞』記事の報じ方とその悪影響も看過できない。
すなわち、「誤報」という点のみをことさらに強調した報道に よって、『朝日新聞』などへのバッシングが煽られ、一層拡大することとなった。
そうした中で、「慰安婦」問題と関わる大学教員にも不当な攻撃が及んでい る。
北星学園大学や帝塚山学院大学の事例に見られるように、個人への誹謗中傷はもとより、所属機関を脅迫して解雇させようとする暴挙が発生している。こ
れ は明らかに学問の自由の侵害であり、断固として対抗すべきであることを強調したい。
以上のように、日本軍「慰安婦」問題に関しての政府首脳や一部マスメディアの問題性は多岐にわたる。
安倍首相は、「客観的な事実に基づく正しい歴史認 識が形成され、日本の取り組みが国際社会から正当な評価を受けることを求めていく」(2014年10月3日、衆議院予算委員会)としている。ここでいう 「客観的な事実」や「正しい歴史認識」を首相の見解のとおりに理解するならば、真相究明から目をそらしつづける日本政府の無責任な姿勢を、国際的に発信す る愚を犯すことになるであろう。
また、何よりもこうした姿勢が、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙するものであることに注 意する必要がある。
安倍政権に対し、過去の加害の事実と真摯に向き合い、被害者に対する誠実な対応をとることを求めるものである。
2014年10月15日
歴史学研究会委員会