2年生14人、3年生8人は清明節の3連休もスピーチ練習に明け暮れる。
私も2日間それに付き合う。
目標:参加者全員のスピーチ技能の底上げ。
(これがプライベートタイムを最も大切にしているはずの人間のすることか)
という葛藤は小学校教師時代から常につきまとっていた。
しかし、教師を生業にしている(していた)人はわかると思うが、
教育を「9時~5時」内で、というのは無理である。
タイミングというものがあるのだ。
また、内田樹曰く「教育とはおせっかいである」と。
ここでの私は、かなりおせっかい者に徹している。
私のおせっかいを一生懸命キャッチしてくれる学生たちがいるからだ。
2年生の吴(ご)はいきさんもその一人。今夜も寮で練習に励んでいることだろう。
彼女は、多くのクラスメートと違い、自ら第一希望で日本語学科に入学してきた。
こんな子もいるんだ、と日本の皆さんに知ってもらいたい。
「父の背中」
私はもうすぐ3年生になります。
過去を振り返ってみると、いろいろな思い出が頭に浮かんできます。
先生にほめられた時の喜び、文章を暗誦できなかったときの落ち込み、
難しい文法を勉強する時の悩み・・・、懐かしいなあ。
クラスの中には日本語学科に選ばれた人もたくさんいますが、私は自分で選んできました。
とはいっても、入学するまでは本当に大変でした。
家族、特に父が猛反対して、私は「もうあきらめようかなあ」と思った時もあるのです。
皆さんご存知のように、大学に入学する前に、専門を選択しなければなりませんよね。
両親と相談の結果、専門は外国語に決まりました。
その後、大学からの採用通知がきました。「日本語学科」と書いてありました。それを見た母は
「ドイツ語でもなく、フランス語でもなく、何で日本語を選んだの?」
と聞きました。
「別にいいじゃん、日本語も外国語でしょう。」
テレビを見ながら私はこう答えました。
すると、ずっと黙っていた父は急に「ビッ」とテレビを消して、大声で言い出しました。
「お前、そんなに日本が好きなのか!自分が中国人だと言うことも忘れたのか!」
それを聞いた私は不服な口調で言い返しました。
「日本語を勉強したら中国人じゃないんですか?
日本に侵略されたのは当時の中国が弱かったからじゃないですか。
お父さんこそ、日本についてのこと全然わからないくせに、何を言ってるの?」
そうすると、父は一言も言わずに、外へ出て行ってしまいました。
親に口答えしてはいけないと知っていたのに、父と喧嘩してしまいました。
本当は「ごめんなさい」と言いたかったのですが、
すごい剣幕(けんまく)で怒っている父に対しては言えませんでした。
確かに、日本は中国を侵略しました。私も、この事実はちゃんと覚えています。
でも、日本語を勉強したからといって、「愛国者じゃない」とは言えないでしょう。
中国には、日本に対して偏見を持つ人がたくさんいます。
「日本人はみんな凶悪だ!」
「日本の製品を使うのは売国奴だ!」
「日本語が話せるやつはスパイだ!」
などと思っている人も少なくありません。
もしかして、日本も裏返しの同じ状況かも知れません。
なぜ私たちは相手のいいところが見えないのでしょうか。
他人の間違いを指摘してばかり、自分のよくないところを無視するのは正しい態度と言えますか?
皆さんも、「売国奴」とか「スパイ」なんて言われたら、悲しくなっちゃうでしょう。
私は日本のいいところを見つけたいんです。
そして、父のような日本嫌いの中国人にその日本の良さを理解させ、納得させるために、
日本語を選んで学んできました。
今まで、大学から家に電話をかけるたびに、電話に出るのは母です。
父から電話をもらうことはありません。
「お父さんはこの日本語を勉強している娘を忘れてしまったの?」という気さえします。
でも、私は絶対にあきらめていません。
実は、父の理解と応援はもちろんもらいたいですが、
その無理解はかえって私の頑張る力になっています。
日本語の勉強で疲れた時、父が家を出ていった時のあの背中を思い出すと、
また「頑張るしかない!」という気になります。
私たちの努力を通じて、中日両国の国民はいつか心を開いて、
相手を受け入れることができるということを、私は信じています。
そして、父に認めてもらうために、
これからも、ただひたすら頑張っていきます。
吴佩
私も2日間それに付き合う。
目標:参加者全員のスピーチ技能の底上げ。
(これがプライベートタイムを最も大切にしているはずの人間のすることか)
という葛藤は小学校教師時代から常につきまとっていた。
しかし、教師を生業にしている(していた)人はわかると思うが、
教育を「9時~5時」内で、というのは無理である。
タイミングというものがあるのだ。
また、内田樹曰く「教育とはおせっかいである」と。
ここでの私は、かなりおせっかい者に徹している。
私のおせっかいを一生懸命キャッチしてくれる学生たちがいるからだ。
2年生の吴(ご)はいきさんもその一人。今夜も寮で練習に励んでいることだろう。
彼女は、多くのクラスメートと違い、自ら第一希望で日本語学科に入学してきた。
こんな子もいるんだ、と日本の皆さんに知ってもらいたい。
「父の背中」
私はもうすぐ3年生になります。
過去を振り返ってみると、いろいろな思い出が頭に浮かんできます。
先生にほめられた時の喜び、文章を暗誦できなかったときの落ち込み、
難しい文法を勉強する時の悩み・・・、懐かしいなあ。
クラスの中には日本語学科に選ばれた人もたくさんいますが、私は自分で選んできました。
とはいっても、入学するまでは本当に大変でした。
家族、特に父が猛反対して、私は「もうあきらめようかなあ」と思った時もあるのです。
皆さんご存知のように、大学に入学する前に、専門を選択しなければなりませんよね。
両親と相談の結果、専門は外国語に決まりました。
その後、大学からの採用通知がきました。「日本語学科」と書いてありました。それを見た母は
「ドイツ語でもなく、フランス語でもなく、何で日本語を選んだの?」
と聞きました。
「別にいいじゃん、日本語も外国語でしょう。」
テレビを見ながら私はこう答えました。
すると、ずっと黙っていた父は急に「ビッ」とテレビを消して、大声で言い出しました。
「お前、そんなに日本が好きなのか!自分が中国人だと言うことも忘れたのか!」
それを聞いた私は不服な口調で言い返しました。
「日本語を勉強したら中国人じゃないんですか?
日本に侵略されたのは当時の中国が弱かったからじゃないですか。
お父さんこそ、日本についてのこと全然わからないくせに、何を言ってるの?」
そうすると、父は一言も言わずに、外へ出て行ってしまいました。
親に口答えしてはいけないと知っていたのに、父と喧嘩してしまいました。
本当は「ごめんなさい」と言いたかったのですが、
すごい剣幕(けんまく)で怒っている父に対しては言えませんでした。
確かに、日本は中国を侵略しました。私も、この事実はちゃんと覚えています。
でも、日本語を勉強したからといって、「愛国者じゃない」とは言えないでしょう。
中国には、日本に対して偏見を持つ人がたくさんいます。
「日本人はみんな凶悪だ!」
「日本の製品を使うのは売国奴だ!」
「日本語が話せるやつはスパイだ!」
などと思っている人も少なくありません。
もしかして、日本も裏返しの同じ状況かも知れません。
なぜ私たちは相手のいいところが見えないのでしょうか。
他人の間違いを指摘してばかり、自分のよくないところを無視するのは正しい態度と言えますか?
皆さんも、「売国奴」とか「スパイ」なんて言われたら、悲しくなっちゃうでしょう。
私は日本のいいところを見つけたいんです。
そして、父のような日本嫌いの中国人にその日本の良さを理解させ、納得させるために、
日本語を選んで学んできました。
今まで、大学から家に電話をかけるたびに、電話に出るのは母です。
父から電話をもらうことはありません。
「お父さんはこの日本語を勉強している娘を忘れてしまったの?」という気さえします。
でも、私は絶対にあきらめていません。
実は、父の理解と応援はもちろんもらいたいですが、
その無理解はかえって私の頑張る力になっています。
日本語の勉強で疲れた時、父が家を出ていった時のあの背中を思い出すと、
また「頑張るしかない!」という気になります。
私たちの努力を通じて、中日両国の国民はいつか心を開いて、
相手を受け入れることができるということを、私は信じています。
そして、父に認めてもらうために、
これからも、ただひたすら頑張っていきます。
吴佩